02-07.サバイバル生活:六日目・追い打ち
サバイバル生活、六日目。
そろそろお家が恋しくなってきた。
しかし終わりが見えない。魔物はまだまだ潜んでいる。
本当に全滅させるまで帰れないのだろうか。このまま一体ずつ相手にしていくのでは、何ヶ月掛かるかわかったもんじゃない。その前に土壁が迫ってくるだろうけど。
「作戦を考えましょう」
「燃やす?」
「ダメに決まってるでしょ」
蒸し焼きになるわよ。
天井部分こそ空いているけど、土壁は中央に向かって傾いている。半ドームみたいな形状なのだ。そうでなくとも、こんな立地の森がそう簡単に燃やせるとも思えない。ダーリャじゃあるまいし、私たちでは火力不足だ。
「なら相打ち狙いとか?」
「そうね。けしかけられれば一気に減らせるかもしれないわね」
しかし具体的な方法が思いつかない。この世界には都合良く洗脳魔法があるわけでもない。基本は地水火風の四大元素魔術しか存在しないのだ。
「ダーちゃんを真似してみる?」
「土壁で追い込むのね」
案外上手くいくかもしれない。魔物たちも既に土壁が破れないものだと気付いているだろう。
実際の強度が足りずとも、深く気にすることなく移動してくれるかもしれない。
「けれど危険ね。集まった魔物たちが、ダーリャの土壁程じゃないと気付いて破ろうとしてくるかもしれないわ」
「そっか~……」
大勢の魔物たちに反転されれば、そのまま押し潰されるだろう。今の私たちでは、大量の魔物を纏めて相手に出来る程の技量も火力も無い。
「逆に凍らせるのはどうかしら?」
「やってみよっか」
「待って。魔力は有限よ。無作為に試すのは無しよ」
「は~い」
フララの素直なところは大好きだけど、あっさり引き下がられると不安になるのよね。今までなら。
私は知っている。フララがやる時はやる子なんだって。反対意見があるなら言ってくれる筈だ。
「逆に餌で釣るのも……あら? そもそもここの魔物たちは何故私たちを襲ってこないのかしら?」
「襲ってきてるよ?」
「そうじゃなくて。もっと死に物狂いでってことよ。私たちは極上の餌よ。手っ取り早く力を蓄える手段でもあるわ。私たちを喰らえば土壁を破って脱出出来るかもしれない。もっと大きな脅威に備えられるかもしれない。だったら我先にと襲ってきていたっておかしくないでしょ」
「ダーちゃんが怖いんじゃない?」
「そうね。それはあるでしょうね。けど」
「そもそもさ。ここの魔物たちは人間を見たことが無いんでしょ? だから人間自体をすっごい魔力を持った化物みたいに思ってるんじゃない?」
……なるほど。ダーリャを恐れるあまり、私とフララが同族だと悟って近づいてこないのね。
よく考えたら、今までに戦った魔物たちは軒並みパニックを起こしているようにも見えたわね。初めての実戦と特異過ぎる環境のせいで、そういうものかとも思っていたけれど。
本当は魔物たちだってもっと落ち着いて仕掛けてくるものなのかもしれない。
「……待っているだけでもダーリャの土壁が舞台を整えてくれるかしら」
「そうだね~。範囲が狭くなれば、魔物たちももっと積極的に争い合うんじゃないかな~」
ただしタイムリミットが範囲縮小によるものだとは限らない。日程の問題で中断なんてこともあり得ない話じゃない。王妃教育だっていつまでもサボらせてもらえないだろうし。
逆に無理やり日程に合わせるために、範囲縮小を急ぐかもしれない。そうなると、十分に魔物が減っていない状態で群れの中に突っ込まざるを得なくなるだろう。
「先にルールくらい明示してもらいたものだわ」
「死ななきゃお~け~」
それはルールと呼ばないの。
「次から脅かして追い払いましょう」
「敢えて倒さないの?」
「そうよ。魔物同士の同士討ちを狙うの。私たちは外周を回って混乱を振り撒くの」
がむしゃらに削るより多少マシになるんじゃないかしら。
「……」
「気になることがあるなら言ってみて」
「う~んとね~……良いと~……思う~……かな~……」
煮えきらないわね。
「何を心配しているの?」
「う~ん~……」
本人もわかっていない感じなのね。
「そういう勝ち方はダーリャの望むものと違うかしら?」
「う~ん。たぶんね~」
もっと泥臭く命懸けで臨めと言いそうだ。そうでなければ修行の意味が無いのだと。
「だからって無策で突っ込めば魔力が保たないわ」
いくら私たちが魔力修行を続けてきたからって、無限に持っているわけでもないんだし。
「全部吐き出させたいんじゃないかな~」
そりゃ言いそうだけども。
「どうせさ。ダーちゃんが助けてくれるのはわかりきってるんだしさ。後先考えず死に物狂いで突っ込めって思ってるんじゃないかな~」
いやわかるけども。
ゴゴゴゴゴゴ!!!
「「っ!?」」
なっ!? 土壁が動いてる!?
あんにゃろう!! 急かしてるわね!! 肯定なのね!!
「決まりだね♪」
何故フララまで楽しそうなのかしら……。
実はさっきの煮えきらない態度って、ダーリャ云々じゃなくて、フララ自身が乗り気じゃなかったってこと?
……いつの間にそんな蛮族に……聖女とは……いったい。
「行こ♪ ベティ様♪」
「様は要らないわ。ここからは一瞬の隙が命取りになるわ」
「はい♪ ベティ♪」
しゃぁ~ないわね~!! 腹括ってやろうじゃない!!!




