02-06.サバイバル生活:五日目・変化
サバイバル生活、五日目。
今日も朝から魔物狩りだ。
フィールドは当然のように狭まった。
壁が私たちだけでなく、魔物たちをも追い立てている。領域が狭まったことで、面積あたりの密度が上がり、昨日と比べても魔物たちとの遭遇率が格段に跳ね上がった。
私はフララと連携して魔物を狩り続けた。初戦のような失態はもちろん無しだ。
この世界で意識が目覚めてから七年間、ダーリャにはたくさんのことを教わってきた。
その全てを思い出しながら、実戦の中で昇華させ続けた。
「フララ!!」
「はい!!」
フララの放った石礫が熊型魔物の顔面に直撃し、大きく隙を生じさせる。
その隙を逃さず接近し、急所に向けて魔術を叩き込む。
「グォォォォ!!!」
熊が断末魔の叫びを上げて倒れ込む。
すかさずその場から駆け出して、次の獲物へと狙いを定める。
そうして何度も何度も魔物を狩り続けた。手当たり次第に魔術を放ち続けた。目につく魔物を片っ端から狩り続けていった。
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魔王を討伐するということは、即ち世界中の魔物を狩り尽くす殺戮者であると同義だ。
もちろんダーリャの行いはこの世界の基準においても倫理的な問題がある。いずれこの手で滅ぼす種族だからって、わざわざこんな悪趣味な、蠱毒じみた方法で手にかける必要なんてなかったのだ。
彼らは誰にも迷惑を掛けず、この小さな島で平和に暮らしていただけだ。魔物だというだけで、ここまでされる謂れは無い筈だ。
明らかにやりすぎで悪趣味なものではあるけれど、ダーリャがそれを決行した理由は私自身にある。
ダーリャは私の甘さを見抜いていた。
土壇場で気付いて躊躇うようなことがあれば目も当てられない。そっちの方がもっと残酷で度し難い悪にだってなり得たかもしれない。
私の認識を改めさせるには必要なことだった。誰がなんと言おうと、私だけはダーリャの行いを肯定しよう。
だからといって、初戦でいきなりこの環境を用意するのもどうかとは思う。あの子はどうしてこう、極端なのかしら。
魔王討伐という遠大すぎる目標の前で、手心を加えている余裕など無いと言われれば、その通りだとも思うけれど。
別に愚痴が言いたいわけじゃない。ダーリャの忠義には感謝している。心の底からありがたいと思っている。
ただ少し気になるだけだ。どのような生き方をすれば、ダーリャのような少女が育つのだろう。
あの子は初めて出会った九歳の頃からああだった。
実は何かとてつもない闇でも抱えているのだろうか。
今はフララと一緒に過ごして居るのに、暇さえあればダーリャのことばかり考えてしまう。
逆にダーリャといる時は、フララのことばかり考えている気がする。
私は相当な浮気者気質なのかもしれない。
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「お肉焼けたよ~♪」
「ありがとう、フララ」
今日の夕食も魔物肉だ。どうしてもこれ以外を食べる気にはなれなかった。
単純に野草やキノコの知識が乏しいからというのもあるけれど、せめて奪った命の一部でも糧としなければ、申し訳ないとも思うのだ。
甘さを捨てるために必要な修行だとはわかっていても、ほんの少しの自己満足だけは捨てられそうになかった。
「お塩欲しいね~」
うん。欲しい。
海への道を塞がれてしまったことが口惜しい。
あんまり長居してると、身体が保たないかもしれない。その前に差し入れくらいはしてくれるだろうけど。或いは修行を打ち切られるかもしれないけど。
「ほらこれ♪ カホスの実だよ♪ 酸っぱいよ♪」
フララがメイド服のポケットからカボスみたいな果実を取り出した。この島のどこかで見つけてくれていたのだろう。
「ありがとう。いただくわ」
「は~い♪ ぷしゃぁ~~♪」
豪快に果実を絞り、汁をたっぷりと振りかけてくれた。
うん。酸っぱい。けど美味しい♪
出来る従者だ。本当は聖女様なんだけどね。私こき使いすぎじゃないかしら。けどそうすると喜ぶのよね。
ダーリャは相当アレだけど、フララも結構な変わり者だ。
最初の魔力修行の直後もケロリとしてたし。むしろダーちゃんダーちゃんと、それ以前よりも懐き始めたくらいだ。
流石は未来の聖女様にして主人公。心の強さが半端じゃない。お陰で最初の魔力修行も、私の倍以上の時間を掛けて念入りに心をへし折る必要があったそうな。
それだけしてへし折られても、翌日にはより強くなって立ち上がってしまうのだから驚きだ。
「ベティ。今余所見してたでしょ」
あかん。
「逆よ、逆。記憶にあるフローラと比べても、フララは強くて優しくて良い子ね……って……ごめんなさい……」
「む~ぅ~!!!」
ポカポカポカ。結構痛い。
「比べちゃダメ! もう忘れて! ベティのフローラはフララだけなの! わかったぁ!?」
「はい。二度と思い出しません」
こ、こわい……。
「次はないからね!」
どうなっちゃうのかしら……。
「……どうなっちゃうの?」
何を聞いているのか。私は。
「うんとね~」
真剣に考え始めるフララ。
「魔力修行♪ やり直そっか♪」
「ひぃっ!? それだけは許してぇ~~~!」
「余所見しなければいいだけでしょ。簡単でしょ」
んな無茶な!? ちょこっと考えちゃうことくらいあるのよ!? しかもどんな些細な内容でも、エスパーみたいに見抜かれちゃうのよ!?
「大丈夫。ベティは出来る子だよ」
「私人間よ!? ダーリャとは違うのよ!?」
「何言ってるの? ダーちゃんも人間だよ?」
嘘だ!!
思わずそう叫びたくなるけどぐっと堪える。
「フララぁ~! もうあの部屋は嫌よぉ~!」
「~♪」
何その顔!? 何この笑顔!?
はっ!? まさかフララまで!? ダーリャと同じサディストに!?
「えへへ~♪」
「ちょっ!? なんでこっち来るのよ!?」
「今ね~♪ なんかね~♪ むずむず~って♪ う~ん? ちょっとちがう~? ぞくぞく~? そうそ~♪ そんな感じ~♪ えへへ~♪ とぉ~っても気持ちよかったの~♪ だからね~♪ 今の声ね~♪ もっとね~♪ 聞かせてほしいな~って♪ 良いよね~♪ ベティ様ぁ~♪」
なんで様付け!? さっき呼び捨ててたのに!?
いやそこじゃなくて!!
「は、話し合いましょう!」
「いいよ~♪ い~っぱい~♪ 聞かせてね~♪」
ちっが~~~~~~う!!
「ベティ様ぁ~♪ ベティ様ぁ~♪ ベティ様ぁ~♪」
「ひぃっ!?」
「あは♪」
い~~~やぁ~~~~~!
お~~そ~~わ~~れ~~る~~~~!!




