祝
「大和愛人よ、そこに倒れている女を保護して夜間緊急センターまで運んでやってくれ。無事に安全に送るんだぞ」と早乙女華恋刑事は無線で命令をした。
「わかりました」と大和愛人は言うとパトカーから降りて後部席のドアを開けると素早く星川まなみを優しく抱き上げて運んだ。運転席に戻った大和愛人は早乙女華恋刑事に敬礼をした。
パトカーはサイレンを鳴らしながら走り去っていった。
黙って頷きながらパトカーを見送った早乙女華恋刑事は引き続き、意識なく気絶している変態男を必殺技『近くにいて四』を出したまま爆走し出した。
『やっぱり、走るって最高だよな。子供の頃を思い出すよ。子供時代が一番楽しかったなぁ。大人はつまらんし、くだらん。子供の頃みたい走ったり、はしゃいだりしていた日々に戻るのも悪くないよな。よーし、今からぐったりしている変質者のコイツをお供に明け方まで走ることにしようかな。へへへっ、ワクワクしてきやがる。ヘッドロックしたまま、つまり俺の必殺技『近くにいて四』を駆使しながら走り明かそう。青春は永遠に続くのさ。そうだ、途中でコンビニのトイレを借りてウンコしよう。さっき食べた、シシャモが当たったぽいんだよね。ウンコすれば、いくらか楽になるだろうし。トイレを貸してくれたお礼に何かスイーツでも買おうと思う』と早乙女華恋刑事は考えながら必殺技の『近くにいて四』をしたまま爆走していた。
早乙女華恋のスマホが鳴った。
「はい、もしもし? あっ、警察署長の山寺さん」
「早乙女くん、ご苦労さん。今から大事な話をする。たった今、宇宙戦隊警視庁から嬉しい知らせが届いたぞ。早乙女くん、君をスーパーヒーローに任命する! 警部に昇進しなくていいぞ。警視総監よりも、警察庁長官よりも、むちゃくちゃ偉いスーパーヒーローに任命する事が決定したのだ! 早乙女くん、おめでとう!!」と山寺大造は言った。
「ほ、本当にですか!! 信じられん」
「はは。何をバカな事を言っているんだ。君はうちの森川魔法陣警察署のエースなんだぞ」
「で、でも」
「でも、何だ? どうした早乙女くん?」
「お、俺はワキガですよ?」
「はは。ワキガがなんだよ! 今は夏だぞ。この季節は、皆、ワキガになるんだぞ。気にするなよな」
「で、でも……」
「どうやら、早乙女くん、気づいていないみたいだな」
「や、山寺さん? 何の事?」
「実は早乙女くんは普段、まったく脇が臭くはないのだ」
「えっ!?」
「早乙女くんが犯罪に立ち向かう時、犯人と対峙した時、犯人を逮捕した時に、何故か早乙女くんの脇が一気に猛烈に臭くなるんだ」
「えーっ!!」
「早乙女くんの脇、普段は至って無臭」
「し、知らなかったです」
「誰しも自分の体臭には気付かないし不快な思いもしないからね」
「そうだったんだ」
「それに、早乙女くんのワキガのお陰様で犯罪の検挙率が抜群に高いのもあるから、決してワキガであることが悪いことではない。早乙女くんのワキガは、きっと神様からの贈り物なんだよ」
「いやいや、イマイチ納得はいかないですけどもね」
「早乙女くん、なぜだ?」
「神様からの贈り物がワキガだなんて嫌ですよ。山寺さんだったら、神様からのギフトとしてワキガを受け入れられますか?」
「それはだな……」
「ほらね」
「早乙女くん、自信を持て。君のワキガは世界一だ。君のワキガのお陰で日本の平和は守られている」
「うーん」
「もし、今、早乙女くんにワキガの力が無くなってしまい、犯罪の検挙率が低下したら逆に受け入れられるか?」
「わからないです。ワキガを治したいのが本音ですが、ワキガが消えて仕事に支障が出るなら凄く悩みますね」
「そうだろう? 早乙女くんよ、あまり悩むな。君のワキガは世界一なんだから」
「……」
「早乙女くん、もっと自分のワキガを愛してあげなさい」
「は、はい」
「じゃあ、また後で」
つづく




