婚約者、ふたたび
壁にもたれて、エドワードは腕を組んでいる。
やっぱり彼は絵になるなあ。このポーズが様になる人なんて、そんなにいないだろう。
カッコいいのは、カッコいいのだが、な~んかムカつく。
ちょっとお高くとまってる感がある。
あと、エドワードは基本的にオルガにはケンカ腰なので、私的にはそこらへんが大きいマイナスだ。
「どうやったか知らんが、アリスに取り入ってなにをする気だ?」
なんか、すごい悪だくみしていると勘違いされているみたいだ。いったい、エドワードからは、オルガはどう見えているんだろう。悪の組織の一員にでも見えるのだろうか。
もしそうなら『ちょっと性格が悪い普通のクラスメイトだよ』と教えてあげたい。
「取り入る?だれにむかって言っているのかしら?」
オルガとエドワードはにらみ合う。
まあ、ここでオルガがつっかかるのは仕方ない。完全にエドワードがケンカ売ってるもん。
しかし、エドワードは、オルガのことを悪いイメージで見ているなあ。ただ、一緒にお出かけして、買い物しただけなのに、『取り入る』だとか『なにをする気だ?』とか言っちゃったりしてさ。
「私は媚びを売るようなことはしないわ」
キッパリとオルガは言う。そうそう、そんなことしないよ~。
「ふん、どうだろうな。貴様は油断ならないからな」
ダメか。まあ、予想はできたけどね。
ふむ・・・このままだと、オルガがなにを言っても平行線で進んでいきそうな予感がする。
・・・・・・よし、私がフォローさせていただこう。
「そうです。前にも言った通り、オルガ様は真っすぐにアリス様と仲良くなろうとしているのです」
「ああ、聞いたな」
「なにをする気か気になっているご様子ですが、仲良くなってすること・・・・・それは!」
「やっぱり、なにか企んでいるのか!?」
エドワードは、私の迫力にビビっている。
「それは・・・・・・」
みんなが、息をのんで私の次の言葉を待っている。
私は大きな声で言った。
「あ~んなことや、こ~んなことです!」
・・・・・・・・
「・・・・・・は?」
話を聞いていたエドワード、それにオルガ、さらにはアリスも、ぽかーんとしている。
しばらく、みんな黙っていた。
しびれを切らしたように、エドワードが言った。
「なんだそれは!?それじゃ分からん!」
「分かりません?」
「そうだ、もっと具体的に言え!」
「ほんとは分かっているくせに・・・・私の口から言わせようとするなんて、この変態!」
私は照れ隠しのふりして、エドワードの背中を拳でポカっと殴った。ちょっと強めにやっちゃえ。
「ぐわあっ!」
いきなりグーで、強めにどついたので、エドワードはすっころんだ。
う~し、ゲームプレイ時のうっぷんが少し晴れたぞ。
「え、エドワード!?」
オルガがびっくりして、一瞬駆けよろうとするけど、ハッと気がついて、その場にとどまった。
おおっ、オルガがエドワードのことを心配している!これはレアだ!
「な、なにをするんだ」
背中をさすって、痛そうにしているエドワード。
「純情なメイドの照れ隠しでございます」
「純情と自分で言うやつがいるか!」
「ここにおります。自分で言うのだから、間違いありません」
「なんなんだ、貴様・・・」
なんだか、あきれているみたい。
フハハ、あきれるがいい!全然平気だぞ、こっちは!
「エドワード様が、ハレンチなのでつい・・・」
「俺のどこがハレンチだ!?」
エドワードの顔は真っ赤になっている。
「仲良くなって・・・なにをするかだなんて・・・・・・ねえ?」
「わ、私にふらないでくださいっ!」
急に話しかけられて、アリスはとまどっていた。ちょっと照れてるのがかわいい。
「仕方ありませんね。少しだけ教えてあげましょう。耳をかしてください」
「う、うむ」
私は、エドワードの耳元で言う。
「お昼ご飯を、あ~んって食べさせたりとか」
「お、お昼を!?・・・・あ~ん!?」
「一緒に海で泳いだりとか・・・」
「海・・・」
「海といえば、忘れてはいけないものがありますよね!?」
「な、なんだそれは・・・」
エドワードはゴクリと唾を飲みこむ。
私は深呼吸をして、口を開いた。
「それは・・・・・・水着です!」
「え・・・・・・」
エドワードは・・・・・・真っ赤になってしばらく固まった。・・・絶句している。
そして・・・・・・、
「み、みず、みず・・・・・・水着!?」
と言うと、空気が抜けたみたいにパタンと後ろに倒れた。彼の中のキャパシティを超えたらしい。
やはり純情だったか・・・エドワードよ。
「ええっ!?大丈夫ですか?エドワード様」
アリスは、驚いて駆けよってきた。オルガも、おろおろして様子を見ている。まあ、ドキドキしすぎて気絶しているだけなので、大丈夫だろう。
動かないのがおもしろいので、足でちょっとつついたりしてみる。ホ~レホレ。
「遊んでないで!ほ、保健室へ!」
オルガがちょっと怒った。さっきまで、にらみあっていた相手を、今は心配している。そのオルガの様子が、グッとくるなあ。隠している気持ちが出ちゃうのが、実にいい!
よし、オルガも心配していることだし、保健室にでも連れていくか。
・・・・・でも、デカいなあ、この人。女の私だと難しいな。
私は、周りにむかって、
「保健室へ運びたいのですが、だれかお手伝い願えますか」
と声をかけた。こういう時は、協力をあおぐのが一番だ。
すると、
「ぼくが手伝おうか」
と、なんだか、さわやかな男子の声が聞こえた。
ん?だれだろう。
その人は、教室の後ろの方から颯爽と現れた。
見覚えがある人だ。
それもそのはず。彼は・・・・・・
アリスの相手候補の一人、ギュスターヴ・バレンティアだった。




