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アリスの相手候補が現れた!

 バレンティア王国(今、私たちがいるとこ)の第3王子、ギュスターヴ・バレンティア!

 アリスの相手候補の一人。パッケージのすごい目立つところに描かれている人。

 私なんかより、よっぽど重要なキャラクターである。

 

 きれいな顔だ~。カッコいいではなくて、きれいって表現が合う。中性的ってやつだな。

 肌なんかめちゃめちゃ白い。透き通っている。鼻も、細くてスッとしている。肩まで細くて長い髪が伸びている。瞳もキラキラと青く輝いている。

 

 背も高いなあ~。

 ゲームだと、体の大きさとかあんまり気にしないけど、目の前にいると、その背の高さがよくわかる。


 エドワードとは、別タイプの魅力がある。見るからに優しそうな笑顔を浮かべている。そんで実際に、めちゃくちゃ優しい。ザ・紳士って感じの性格なのだ。アリスと一番最初に出会うので、初回プレイ時に選ばれがちである。


 いかにも人の好さそうなキャラって、私の心が汚いからか、つい裏があるんじゃないかな~とかプレイしながらずっと思っていた。でも、最後まで、すごくいい人のまま終わるので、拍子抜けした記憶がある。


 私は『裏切らないんだ・・・』って思わずプレイしながら、つぶやいちゃったもん。

 ギュスターヴは、なにも悪くないんだけどね。 私の経験上、ニコニコしている優しいキャラは怪しいぞと、警戒してしまっていたのである。


 ちょっとだけ、ガッカリしたのは内緒だ。優しそうな人が意外とSっぽいとか、悪いやつだったりするのは、それはそれで大好物なのである!


 というわけで、ギュスターヴは信頼できる男として、ぜひこの機会にお近づきになろう。


 「ちょうどよかったです。か弱き私とアリス様で運ぶのは、クソ面倒なので、お願いします」


 『クソ面倒』という、少しお下品な表現に驚いたのか、ギュスターヴは目を丸くした。


 「ちょっと乱暴な言い方だね。・・・分かったよ、僕に任せて」


 ギュスターヴは苦笑しながらも、エドワードを背負ってくれた。

 うむ、やはり、いい人だ。

 

 私たちは、保健室へと向う。アリスとオルガも心配だったのか、一緒についてきた。

 歩いていると、ギュスターヴが声をかけてくる。


 「そういえば、君とは、はじめて話すよね。・・・え~と・・・・・・」


 私を見てなにかを言いかけたけど、言葉が途切れた。ギュスターヴは口を開けながら空中を見て、固まっている。

 ん?なにかあったかな?


 しばし、沈黙。


 ・・・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・



 あ~分かった。

 これ、私の影が薄すぎて、名前を思い出せないやつだ。

 

 顔が固まったまま冷や汗、かきはじめてるもん、この人。


 アリスは、なにが起きたのか分からずに、私とギュスターヴをきょろきょろと交互に見て、不思議そうな顔をしている。


 少し待っても思い出す気配がないので、しかたなく私は助け舟を出してあげた。


 「エリー・・・・」


 最大限のヒントを出す。ていうか、もうほとんど答えを言っている。

 

 「・・・・・・・?」


 ギュスターヴは困ったように笑っている。

 ・・・・・ダメだ、この人。完全に忘れている。ていうか、最初から覚えていない可能性まであり。


 「エリーゼです」


 答えを教えてあげた。


 「そ、そうだった。エリーゼだったね」


 固まっていた顔が、やっと動いた。

 アハハハと笑ってるけど、絶対、名前を言われても、ピンときてないだろうな。

 

 よし、では本当に思い出したのかを、突っついてみよう。 


 「ほんとに、思い出せましたか?」


 穏やかにね。あくまで穏やかに尋ねる。


 「え?」


 「一応、確認です。ほんとに、私がエリーゼだと思い出せましたか?」


 「ええ、そりゃあ、そう・・・・・・」


 「訂正するなら、今のうちですよ」


 「え!?え~と・・・」


 「あと3秒で、発言の訂正は締め切らせていただきます。では、カウントを始めます・・・3・・・2・・・・」


 「わあ!待って!ごめんっ!本当は、名前を言われても、よく分からなかったんだ!」


 「私って影薄いですから・・・」


 そう言うと、ギュスターヴは申し訳なさそうに、シュンとした。

 さっきまでエドワードと話していたからか、その反応の素直さにちょっと感動。

 エドワードとか絶対謝らなさそうだもん。『ふん、貴様の影が薄いせいだ!』とか言ってきそう。



 「クラスメイトの名前も記憶できない人が、王子だなんて。王子って楽な仕事なのねえ」


 オルガがさっそくチクチクと、嫌みを言いはじめた。さすが、悪役令嬢だ、嫌なことを言うチャンスを逃さない。

 本来は、私はとめるべきなんだろうけど、覚えられていなかったのが、ちょっとムカつくので乗っかることにした。


 「私、悲しいです」


 泣きマネしよ。


 「かわいそうに」


 オルガは大げさに私の背中をさすって、なぐさめる。そして、二人で息を合わせて、ギュスターヴをジロ~と見る。


 「う・・・ああ、ごめんって!」


 手を合わせて謝るギュスターヴ。ちゃんと謝れるのは、えらい。


 「ギュスターヴ様も、これだけ頭を下げていることですし、勘弁してあげては」


 アリスがたまりかねたらしく、話に入ってきた。


 「ありがとう、アリス」


 ペコリと頭を下げてギュスターヴが、アリスにお礼を言った。

 

 「あ、いえ、そんなことは・・・」


 アリス、照れている。


 お?なんかちょっと二人、いい雰囲気なのでは?

 

 アリスとギュスターヴも仲良くなった方が、たぶん物語はいい方向へ進んでいくんだろうな。

 そもそものゲームの目的は、主人公のアリスが幸せになることだし。


 ということは・・・・




 よし、ちょっと思いついた。


 私は、口を開く。


 「しかたありませんね。甘いもので手を打ちましょう」


 「ん?どういうこと?」


 「ここにいるみなさんで、パンケーキを食べに行くのです。もちろん、ギュスターヴ様のおごりで」


 ・・・・・・・・ 


 「・・・・・え?」


 みんなは、いきなりの提案に顔を見合わせた。

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