甘いもの・・・・・・それは、よいもの
パンケーキ・・・・甘くておいしいもの。上にフルーツとか、ナッツとか、生クリームとか、いろんなものが乗っている。
見てきれいで、しかも、食べておいしい!
ふっくらしたものから薄めのものまで、いろんなヴァリエーションがあって、お店によって様々楽しめる。
それが、パンケーキである!
そんな素敵なパンケーキをみんなで食べながら、親睦を深めるという一石二鳥的作戦。
それが、私の思いついたことだ。
ゆっくりと話もできるし、オルガとみんなとの交流の場として、悪くないと思う。
しか~し、パンケーキ屋さんに行きたい理由は、実はもう一つある。
このゲーム、プレイを進めていると、街の中心部にあるパンケーキ屋さんに行くデートイベントが発生する。
そこで、食べるパンケーキが、めちゃくちゃおいしそうだったのだ!わざわざアップの絵が表示されて、フルーツの瑞々しさやシロップのツヤまで、異常に細かく描いてあり、作画の気合の入り方がハンパじゃなかった。
なので、そんなおいしそうなもの、食べたいに決まっているじゃないかということで、この機会に、みんな一緒に行こうというわけ。
ちなみに、私には個別グラフィックは用意されていないので、たぶん、このゲーム的には、パンケーキの方が私よりも重要キャラと言っていい。
パンケーキ>私、なのだ!
そう思うと、なんだかちょっと切なくなってきたな・・・・。
と、なぜか最後に悲しみが襲ってきたけれど、気を取り直して、みんなをぜひお誘いしよう。
「パンケーキですか!?」
アリスの明るい声が、沈黙を破った。キラッキラの瞳で、前のめりになっている。もう、誘う前から分かる。ものすごい乗り気。
「アリス様は・・・・・」
と、私が聞こうとすると、
「い、行きますっ!」
と食い気味にきた。よし、その前向きな姿勢、とてもいい!なんだか、がっちりと握手したくなる。
さっそく一人確保だ。
「私は、甘いもの嫌いだから、行かないわ」
声をかける前に、オルガがつまらなそうに言った。好きじゃなくても我慢して付き合うという選択肢は、この人にはないみたい。
しかし、私はめげないぞ。オルガがこないと、意味がないのだ。
「ご安心を。おかずのパンケーキもあります。食後のデザートとしてではなく、食事としていただけるものです」
「え?そうなの?」
驚いている。どうやら、そういうものがあることを知らなかったらしい。
「オルガ様のような博識なお方が、知らないはずありませんよね。もちろん食べたこともおありですよね」
「と、とと当然よ!そんなの余裕で知っているし、食べているわ」
明らかにあわてて、知っているふりをしている。
よしよし、いい感じで話が転がっているな。このまま一緒に行く方向へと持っていこう。
「私は、まだ食べたことないので、いろいろと教えてほしいのですが・・・」
へりくだって、頼んでみる。
「あ、ああ・・・そうね。貴族の私は当然、もうとっくに食べているけれども、メイドのあなたは食べていなくてもしかたないわ。まあ、教えてあげてもよくってよ」
ちょっとうれしそう。
「では、ご一緒してくださいますか?」
「え、ええ、仕方ないわねえ。特別に付き合ってあげるわ」
澄ました顔をしていたけど、小さくガッツポーズをしたのを、私は見逃さなかった。
く~!かわいい。
アリスみたいに、キラキラ喜びをストレートに表現してくれるのも、とてもいいのだが、オルガみたいに、よろこびが思わずこぼれちゃう感じも、すごく愛おしい。
よし、残りは二人だ。
ギュスターヴに声をかけよう。彼は、つきあいのいい人なので、多少強引でも大丈夫なはず。
「ギュスターヴ様はもう行くことが決定しているので、あとは・・・」
「あれ?ぼくは強制参加?」
「もちろんです。おごってもらわないといけないので」
「あ、あはは・・・・そういえば、そんなこと言ってたね」
ほぼ初対面の人に、いきなり、おごれと言われている状況なので、とまどっているらしい。しかし、私にはパンケーキを食べるという使命があるので、遠慮してられない。
「この催しのそもそもの目的は、私の名前を覚えていなかったことへの、謝罪の代わりですので・・・」
「う・・・そうだよね・・・分かった。君には失礼なことしちゃったし、行くよ」
ギュスターヴは、少し申し訳なさそうにしたけど、すぐに明るい顔になった。
これで、目標はほぼ達成したも同然だ。
しかし、もう一人誘わないといけない。
・・・・・・気絶中のエドワードである。
オルガと似ていて素直じゃないので、『興味ないな』とか言いそうだけど、逆に正面から真っすぐに誘われるのには、弱いと見た。
私だと生来のあおり気質で、つい相手をいじってしまうので、ここは、まっとうないい人であるギュスターヴにお任せしてみよう。
「エドワード様を誘っていただけませんか。私が言っても、断られそうな気がするので」
「ぼくがかい?」
「ええ、ギュスターヴ様に頼まれれば、イチコロです」
「あはは、君は人を乗せるのが上手いね。分かったよ、誘ってみる」
快く承諾してくれた。オルガやエドワードと比べると、話が早くて助かる。人から頼られるのは嫌いじゃないようで、うれしそうにしている。さすが王子だ、とても頼もしく感じる。
こうして、保健室へとエドワードを運んでいる道すがら、みんなでお出かけする計画は、着々と進んでいったのだった。
一人はまだ『うん』とは言ってないけど、こちらには、王国の第3王子のギュスターヴがついている。さすがに断れまい。クックック・・・。
ん?なんか、今の私、悪役っぽい気がする!
さては、オルガから影響を受けて、私も悪役令嬢のなんたるかが身についてきたのかもしれない。
私も、この世界になじんできたということだな。
ちょっと、うれしい。




