休み明けの好感度チェックだ
教室へ入ると、アリスとすれ違った。
私は丁寧にあいさつする。メイドらしさを、たまには見せていこう。
「おはようございます」
休みの日にお出かけしたお陰で、なんか話しかけやすい。
「あ、エリーゼさん。おはようございます」
ちょっと照れくさそうにしてアリスは、あいさつを返してくれた。よしよし、アリスのあいさつから、ぎこちなさが抜けてきている。
アリスは、元々そんなに私には悪い感情はなかったみたいだし、この前の買い物イベントを経て、心の距離が近くなったようだ。二人でオルガに連れまわされたことで、私たちの間には、苦労をともにした同志的な絆が生まれつつある。
あの時、どさくさに紛れて肩を組まなかったことを、今、後悔している。
同じ苦労をともにする、これこそ仲良くなる秘訣だ。
オルガと仲良くなる前に、私がアリスと仲良しになる可能性が出てきた。
しかし、少し心配なのは、オルガへの好感度がどうなっているか。悪気はなかったとはいえ、オルガが私たちの疲労の原因なので、あんま期待できない。
「この前は疲れましたね」
さっそくアリスが買い物の時のことを話しはじめた。
「なかなか、ハードな一日でした」
私は大きくうなずく。
「私なんて、途中から叫んでましたもん」
そうだった。すごい叫んでたなあ。あれで出禁にならなかったのは、奇跡なんじゃないだろうか。
アリスの主人公パワーかしら?
「疲れたとは、ずいぶんないいぐさね」
ちょっと離れたところにいたオルガが、話を聞きつけてやってきた。腰に手を当て、堂々としたポーズで登場する。
う~ん、いつ見てもカッコいい。けど、最近はかわいさの方が上回ってきている。あわあわと動揺している姿を、ここ数日でよく見かけているから、そっちの方が印象に残っている。
「アリス様と、ともに戦い抜いた記憶をかみしめていたのです」
「戦い?」
オルガは首をかしげている。どうやら意味が分からないみたいだ。フフフ、まあ無理もない。これは、体験したものだけが得られる達成感と疲労感・・・・・・いや、達成感はそんなになかった。
「ええ、そうです。私とアリス様は、戦地を駆け抜けた、いわば同志・・・・・いえ親友です!」
私は、カッと目を見開いた。
「いや、そこまでではないです・・・」
アリスが、ちょっと申し訳なさそうに言った。勢いに任せて言えば、のっかってくれるかなと思ったけど、そう甘くはなかったようだ。
「なん・・・ですと・・・」
「一度しか遊んでませんし・・・」
「ぐわぁ~」
私は大げさ倒れる。
「ええっ!ちょっとエリーゼさん!?」
あわててアリスが、私を抱き起こしてくれた。いい人だなあ。
「ご安心を。死んだふりです」
「驚かさないでください。びっくりしました」
「これも、メイドの大切なスキルです」
オルガが冷めた目で私たちを見て言った。
「あなたたち、なにを遊んでいるのよ、まったく」
私は、アリスに起こしてもらいながら口を開く。
「オルガ様もやります?死んだふりごっこ」
「やるわけないでしょ!」
チッ…ダメか。見てみたかったなあ。オルガが死んだふりするところ。
もしオルガの性格が丸くなったら、こういう悪ふざけもしてくれるのかな?
てか、アリスは私とオルガのこと、どう思っているんだ?親友はさすがに言いすぎとはいえ、友だちくらいには思ってくれているかしら。
よし、気になったら聞いてみるのが一番。
「アリス様」
「はい、なんですか?」
「アリス様って、オルガ様と私のことを、どう思ってらっしゃいます?」
こういう時、好感度を教えてくれる友人キャラがいてくれればなあって思う。
もちろん、このゲームにも、そういう友人は出てくる。でも、それはアリスに教えてくれる人なので、我々には、そんな便利な人はいない。自力で予想したり、聞くしかないのだ。ゆえに、聞く。
「どう思うって、えっと、それは・・・」
アリスは、腕を組んで考えている。
・・・・・この時間ってちょっと気まずい。
まあ、私がきてから、いきなりグイグイとアプローチされている状態だもんね。とまどうのは当然か。
「ま、まあ・・・・前ほど嫌って感じはしないです」
ほう!なるほど!十分合格点。
よかった。『嫌いです!』とか言われたらどうしようかと思った。
しかし、たぶんまだ友だち以下の状態だろうな。嫌ではない、だもんな。
たしかに、ゲームだろうがなんだろうが、一度出かけたくらいで、いきなり知り合いから友だちにランクアップするのは、さすがにチョロすぎるかもしれない。
「嫌いではない?ふん、別にあなたに好かれようなどとは、思っていませんわ」
オルガが割り込んできた。せっかく悪くない感じなので、ここで微妙な空気になるのは避けたい。
よって、ここは私の出番。
「そうです。好かれるなどという安っぽい言葉では形容できません。オルガ様は、大好きと言わせてみせると、そう思っているのです」
「ええっ!」
アリスとオルガの二人が同時に叫んだ。
「だだ、大好き!?」
オルガはあたふたしはじめる。アリスもあたふたしている。
やっぱり、かわいい!
私が、満足げに二人を眺めていると
「また、くだらんことをしているな」
壁にもたれかかって、イケてるポーズでこちらに誰かが話しかけてきた。
それは・・・・・なんと!
オルガの婚約者エドワードだった。
ん?デジャヴ?この登場の仕方、前にも見た気がする。




