一緒にお誘いしよう
「待ちなさいっ!だれがそんなことを!」
オルガは慌てていた。勝手に私が言い出したことなので、自然な反応ではある。
「あれだけ別荘のことをお話しされたのですから、当然招待するのかと・・・」
「ななな、なんでそうなるのよ!?」
オルガは急に私が言い出したことに混乱して、ろれつが上手く回ってない。
「やはり百聞は一見に如かずと言うではありませんか。口で説明するよりも実際に見てもらった方が一目瞭然!みなさんに、アルジェリー家の威光を見せつけてやりましょう!」
私は胸を張って言った。
「う・・・それはそうなのでしょうけど・・・でも・・・いや・・・その・・・」
オルガの語気が弱まった。私の発言に『たしかに一理あるかも・・・』と思ったようだ。
よし、ここで一気に流れを引き寄せたい。
「どうしました?元気がないようですが・・・?」
「べべべべ、別になんでもないわ」
しどろもどろである。
「そうですか?・・・ハッ・・・もしかして・・・実は、内心みんなが満足するのか自信がない・・・とか?」
「はあ!?そんなわけないでしょ!自信は大アリよ!」
オルガはすごい勢いで反論する。
「申し訳ありません。メイドでありながら、ご主人様の気持ちを汲みとれませんでした。そうですよね・・・いくらアルジェリー家の別荘とはいっても、人様を招待するのは、やはりプレッシャーですよね」
「へ?」
「貴族の別荘と聞くと、どれほど素晴らしいお屋敷なのか・・・期待と想像が膨らんでしまいますよね。その期待を裏切ってしまうのを恐れる気持ちは、よ~く分かります。いいえ、なにも言わないでください。私からアリス様におわびして、『すみません。オルガ様の別荘はほかの方を招待する自信はありません』と、きっぱりお断りします」
「まままま待ちなさい!」
私がアリスに話しかけようとすると、肩をガッとつかまれ制止される。
「どうしました?大丈夫ですよ、オルガ様。アリス様はお優しい方ですから、きっと分かってくださいます」
「こ、断らなくていいわ!・・・分かった・・・この平民を私の別荘に招待します!」
オルガは机をバンッと叩いて、大声で言った。
「え・・・いいんですか?無理しなくてもいいのですよ」
「無理などしていないわ!ふ、ふん。私の別荘を目の当たりにして、その素晴らしさをとくと味わうがいいわ!」
髪をかきあげて余裕たっぷりって雰囲気を出しているけど、なんだか視線があっちこっちいって、落ち着かない。
「だ、そうです~お控えのみなさん~」
私は後ろを向いて、遠くからこっちの様子を観察していたイングリッド、エドワード、アルベルト、ギュスターヴの四人組に声をかけた。
「みなさん・・・?」
オルガはきょとんとしている。
「はいは~い!私たちも行きま~す」
イングリッドが元気よく両手をあげて、私からの呼びかけに答えた。
「え・・・?」
オルガが『こいつらも来るの?』みたいな顔している。強引に話を進めちゃって申し訳ないけど、こうでもしないとオルガが自分からおいでとか言えないだろうし、これもバッドエンド回避のためだ。許せ、オルガよ。
「やあ、悪いねえ。ご一緒して」
ギュスターヴがニコニコしながら近づいて来た。
「い、いえ・・・べ、別に・・・来るのが一人だろうが五人だろうが変わらない・・・から・・・」
そう言いながら眉間にぎゅっとしわを寄せて、オルガは険しい顔をしている。心中は穏やかじゃなさそうだ。
「いや~悪りぃな。でも、そんだけ自慢するくらいだから、すげえとこなんだろ?楽しみだぜ!」
アルベルトがナチュラルにハードルをあげてきた。すご~く目を期待に輝かせている。
もちろん、いじわるで言っているわけじゃないことはみんな理解しているけど、悪気がない分、よりやっかいではある。
「ええ、ききき、期待してかまわないわよ!」
なんだかオルガは若干やけくそになってきている。声のボリュームもデカい。
「え~楽しみ~。まさか、オルガが私たちを誘ってくれるなんて思わなかったよ~」
そう言いながら、満面の笑みを浮かべているのはイングリッドだ。アリスと肩を組みながら実に機嫌がよさそう。
「ふん・・・私だって人を誘うくらいするわよ」
「へえ~そっかあ・・・なんか意外かも」
イングリッドがオルガをじ~と見つめる。
「なによ・・・私の顔になにかついてるの?」
ブスッとした顔でオルガは言った。
「ん~?なんでもない。じゃあアリス・・・ちょっと相談しよ!」
イングリッドはアリスと一緒に少し離れた席に座って、なにやら相談をはじめた。たぶん、なにを着ていくかとか、そういうことを話し合ってるんだろうな。
遠くへお出かけるとなると、なにしようかな~とか、どんなところだろうっていろいろ想像したり計画したりするのが楽しいんだよな。
「みなさん、楽しみにしているみたいでよかったですね」
私はオルガに声をかける。
「はあ・・・なんかよく分からないけど、疲れたわ」
今日の短い話し合いで、どっと精神を削られたらしい。
「お疲れ様です」
私はオルガに労いの言葉をかけた。
よかった~。これで、オルガの評価が下がる今日のイベントを無事阻止できたんじゃないかしら?
よしよし、なかなか順調に来ている感じがする。
しかし、油断はできない。もしも別荘に来たみんながつまらなかったな~とか思ったりしたら、自分で誘っておきながら楽しませられない、すごいダサい貴族ってことになってしまうかも。
もし、そうなればオルガのプライドはズタボロに・・・
まあマルゲリータさんもつれていくつもりだから、二人でオルガをサポートしながら、みんなを楽しませられるように頑張っていこう。
もちろん、わがご主人であるオルガにとっても、楽しい滞在になるようにしたいな。
全員が楽しむこと(私もマルゲリータさんも含めて)、それが一番大事なミッションである。




