今日は登校日だ
今日は登校日。
夏休み中で一日だけ、学園へ行く日である。まだまだ休みは残っているけど、気持ちがゆるみすぎないように一度学園へと来て、学生の本分をしっかり思い出そうというわけ。
・・・正直、面倒である。せっかく学園のことを忘れ、休みを満喫しているのに現実へと一気に気持ちが引き戻される感じが、なんともムズムズする。
でも、いいこともある。それは、ひさしぶりに友だちに会えること。アリスやイングリッドたちとは、この前、海に行ってから会っていないので、そこそこ、ご無沙汰ってことになる
というわけで、億劫な気持ちとうれしい気持ち、その両方を持って投稿してきたわけだけど・・・
実は、ちょっと警戒しなくちゃいけないことがある。
それは・・・なにを隠そう私の主人様オルガの言動である。
まあ、注意しなくていい時の方が少ないんだけど、今日は特に要警戒。なぜかと言うと、この夏の登校日に、オルガの毒舌からはじまる確定イベントがあるからだ。
簡単に説明すると、こういう流れになる。
まずオルガが、別荘を持っていないアリスのことをバカにする。
そんで見かねた、この時点で好感度の高い男性キャラが、アリスを自分の別荘へと来ないかって誘う。
アリスは、男の子とお泊りデートすることに・・・!
というドキドキワクワクのイベントなわけであるけど・・・オルガ視点だと、たんにアリスからの好感度が急降下するだけのイベントとなる。
それをなんとか私が食いとめようってわけ。
「おはようございます」
私が、対処法を頭をひねって考えているうちに、アリスが教室へ入って来た。
オルガは鋭い目でアリスの姿を捉えると、ゆっくりと近づいて行って、
「毎度毎度、よくもまあ、そんなふぬけた顔ができるわね」
髪をかきあげて、まずはジャブ程度の先制攻撃を加える。息を吐くように毒を吐く。これすなわち、悪役令嬢の流儀・・・なのかな?知らんけど。
「分かります?」
アリスは、なんだかテンション低めだ。『ふぬけた顔とはなんですか!バカにしないでください!』とか反論してもおかしくないのに、なんか元気ない感じ。
机に頭をのせて、ぐで~としている。
「へ、へえ・・・すんなり認めるなんて・・・す、素直ね」
オルガは、アリスの予想外の反応に面食らっていた。出鼻をくじかれている。
「せっかくの夏休みなんですけど宿題が大変で。みなさんと海へ行った後、全然遊べてないんです」
は~とアリスの口からため息がこぼれる。
なるほど、宿題で忙しかったわけか。
「ふん・・・そんなものまだやっているの?私なんて、休みに入ってすぐに終わらせたわ」
どうだっ!て感じで、オルガは胸を張った。マウントがとれて、とてもご満悦な様子。
ちなみに私の宿題は、まだ手つかずのまま、きれいに真っ白である。アリスとオルガの会話を聞いて、ちょっと怖くなってきた。どれくらい量があるか一切確認してないので、家へ帰ったらすぐチェックしよう。でないと、月末に地獄を見る。
「だいぶ終わらせましたけど、そのストレスと疲れがどっとやって来て、なんだかダルいんですよね・・・」
ふたたびアリスの口からはあ~と大きなため息が吐かれる。なかなかお疲れのようだ。
「それなら別荘にでも行って、気分転換すればいいじゃないの」
と、オルガは『パンがなければケーキを食べればいいじゃない』的なことを言っている。
「私・・・別荘ないんですけど」
ほっぺを膨らませて、アリスは不機嫌そうに返事をした。そのすねた顔がかわいい。
「あら?これは失礼。私は、とても涼しいところに別荘があって夏でも快適なの。今度行く予定なんだけど・・・まず、景色が最高で、勉強で疲れた時なんか、外を眺めるだけで気持ちが癒されるわ。あとは、なんと言っても静かだから、のんびりとした気分でいられるし・・・」
ここぞとばかりに、オルガが別荘の自慢をはじめた。どれだけ自分の別荘が素晴らしいのかを延々と語っていく。
アリスは聞きながら、どんどん顔つきが険しくなってきた。イライラしているみたい。
「とまあ、そんなこところね。こんなに素晴らしいのに、その別荘がないだなんて・・・平民は哀れね」
とどめの一言が発せられると、ついに、しびれを切らしたアリスは椅子から立ちあがって、キッとオルガを睨む。
「哀れってどういうことですか!?」
「どうもこうも・・・そのままの意味だけど?暑さで体力だけじゃなくて脳みそまで退化したのかしら?」
ひさしぶりにアリスに会えて盛りあがっているのか、毒舌の火力がいつもよりも強い気がする。
だんだんと険悪なムードが漂いはじめ、このまま放っておくと、よろしくないことになりそう。
というわけで、満を持して私の出番が来たようだな!
「ほんとですね。アリス様はおかわいそうです」
二人の会話にそっと割り込む。
「エリーゼさんまで!?」
アリスは、信じられないみたいな顔をして私を見た。アリスの好感度は低くないから、ひどいことを言うオルガに、私が同意しているのがビックリしたんだろうな。
「ええ、そうです。勉強に追われて、疲れているのが哀れだとそうおっしゃってます」
「「へ?」」
アリスとオルガが同時に、なんとも間の抜けた声を出した。
「そして、オルガ様が、別荘のよさをアピールしたのはほかでもありません・・・」
私はもったいぶって、アリスの様子をうかがう。
「な、なんですか・・・?どういうことです?」
アリスがゴクリとつばを飲み込んで、私の次の言葉を待った。
「アリス様たちを、素晴らしい別荘へと招待するためなのです!」
大きな声で言い切った。
なんか私の言っている言葉の意味が理解できないみたいで、アリスもオルガも、ぽか~んとしながら固まっている。
しばらく沈黙が流れた。
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「「ええ~~~~~~~!!??」」
二人は、タイミングを合わせたみたいに絶叫した。教室中にその声は響き渡った。こんなに息が合うなんて、もしかして、実はアリスとオルガは、相性がいいのではないかな?と、そう思いたくなる今日この頃である。




