夏休み中でも、メイドは忙しい
22時に投降後、文章を少し手直ししました。
さて、この前、海でいい感じの時をすごして、私としては大いにご機嫌なのであるが・・・しかし、常に遊んでいるわけにもいかない。
私はメイドなので、日々いろいろとやることがある。
いつもは学園生活を優先させてもらっていて、お屋敷での家事や料理、掃除などの家事全般は、そんなにしなくていいってことになっているのだけど、今は夏休みなので学園がない。学園がないということは、家事をサボる理由がなくなる。
つまり、私は暇人(実際、時間はあるんだけど)とみなされて、メイドとしての仕事に駆り出されてしまうのだ。
これが面倒なこと、このうえなし!
広い広~いお屋敷の窓を拭いたりとか、大きな置物に積もったほこりを落としたりとか、どこまでも続いていく廊下をひたすら雑巾がけするとか、料理を作る手伝いをしたりとか・・・・とにかく、いっぱいの仕事がある。
でもまあ、仕方がない。私がやらないと、ほかのだれか(例えばマルゲリータさんとか)に負担がかかってしまうし、このお屋敷が汚れちゃうしね。
「お~しっかりやってけ~~」
後ろから、マルゲリータさんの声が聞こえてきた。
ただ今、私は長い廊下を雑巾がけの真っ最中である。
端っこまで行くのに、ずいぶん時間がかかるので、一往復するだけでけっこういい運動になる。この屋敷にいれば、外へ出ずに十分、運動不足を解消できそう。
ゲームをプレイしていた時や、この世界に来てすぐは、大きくて立派で素敵な屋敷だなあと思っていたんだけど、そう思っていた自分に、今はちょっとムカついている。
もっと小さい家であれば、こんなに掃除に苦労しないですむのに・・・まったく、貴族ってやつは!バカデカい屋敷なぞ建ておってと、そんな考えがよぎる。
「よっこらしょ~~~~~~」
ドタドタと走って、床をきれいに拭いていく。こういう時は、気合が大事だ。というか、もはやちょっとヤケクソ気味である。
「ほらほら、まだまだやることあるから、頑張っていけ!」
マルゲリータさんの応援はうれしいけど・・・・
「ほら、今度は窓拭きだ。スクワットしながらやんぞ。トレーニングになるからな」
と、途中からマルゲリータさんの提案により、トレーニングしながら掃除していくことになってしまった。
ただ掃除するだけでも疲れるのに、鍛えながらなんて、だいぶキツい。
しかも、この窓はやっかいなことに、花とかをモチーフにしたおしゃれな装飾がついている。見ている分にはきれいでいいんだけど・・・お掃除という観点からすると、話は変わってくる。
すごく繊細できめ細かい飾りなので、小さな隙間にほこりがめちゃくちゃ溜まるのだ!
これが、すごい大変。
爪を使ったりとか、雑巾を小さく折りたたんだりして、なんとか工夫しつつ悪戦苦闘しつつ、拭きとっていく。
「丁寧にな。壊すなよ~」
スクワットしながらテキパキこなしていくマルゲリータさん。その筋肉は、こうした日々の小さな努力のたまものなのかもしれない。
私は時々マルゲリータさんがメイドであることを忘れそうになるけど、そのメイドとしての実力を、目の前でまざまざ見せつけられている感じがする。
さすがだ!ちょっと見とれてしまうぞ。
よ~し、私も頑張ろう・・・と最初は順調に進めていたんだけど、だんだんと足腰が悲鳴をあげてきた。
このままだとマズいかも・・・。
というわけで、
「ちょっとお手洗いに行ってきます」
私はトイレに行く振りをして、こっそりと休憩に行く。スクワットしすぎて足が痛くなってきたので、こうやってインターバルでも挟まないと、体力が持たないからね。仕方ない仕方ない。
キッチンへと向かい、こっそり隠しておいたお菓子を食べながら、せっかくだからとお茶も入れて、本格的なおやつの時間を楽しむ。
「うま~~~」
ふふふ、こうして隠れて食べるお菓子は、いつもより何倍もおいしく感じるのなぜだろうか。
やっぱりサボっていという背徳感のためだろうな。
しばらく一人で椅子に座りながらおやつを食べて、充実した時間を過ごしていると・・・
「ほうほう、おいしいか?掃除中に食う菓子は」
マルゲリータさんが、気がつかないうちに後ろに立っていた。
「はへはふ?」
こういう時は落ち着いて、食べ物で懐柔しよう。
「口に含んだまましゃべるな。行儀が悪いぞ」
注意されたので、私はお茶で流し込んでから言った。
「食べます?なかなかいけますよ」
「てめえなあ・・・」
マルゲリータさんは呆れながらもクッキーを手にとる。
「ん・・・イケるな、これ」
モグモグ食べてくれた。意外と付き合いがいい。
「そうでしょう?」
「これがうまいのは認めるが、サボるのは感心しねえな。てめえがいつまで経っても帰って来ねえから、その間、掃除が大変だったわけだが・・・」
腕を組んで、不気味な笑みを浮かべている。
「ん?」
なんだか、嫌な予感がするぞ。
「ご褒美に、楽しい場所に連れてってやる」
私は首根っこをつかまれて、そのまま連れ去られた。
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
外へ出て、離れの小屋の前まで移動した。正確には移動したと言うよりも、首をつかまれたまま、運ばれて来たのである。
「え~と・・・ここは?」
来たことのない場所だった。
「物置小屋だ」
「ほう・・・・」
物置小屋。文字通り物が置いてある小屋なんだけど、小屋というには、そのスケールが大きい。普通に人が不自由なく暮らせそうなくらいのデカさがある。
そんなデカい小屋(?)の中には、どれくらい物が詰め込まれているんだろうか?あんまり想像したくないけど、整理とかするの大変そうだなあ。
「さて、じゃあ・・・ほれ」
マルゲリータさんが、箒を渡してきた。
「サボってた罰ってやつだ。ここの掃除を命ずる」
ポンと肩を叩かれた。
「・・・・・・」
しばし沈黙する・・・いや、言葉が出てこない。
ここをきれいに?日が暮れるのでは?
「完璧にやれとは言わねえ。ま、できるだけやってみろ」
そう言うとマルゲリータさんは、のんびりした足どり立ち去った。去り際に一度振り返ると、ニヤッと謎の笑みを浮かべて、こう言った。
「ま、ごゆっくり。仲良くな」
「?」
よく意味が分からない。どういうことだろう。考えてもよく分からないので、とにかく中に入って状況を確認しようと、扉の前に立った。
一瞬、こっそり逃げちゃおうかなとも思ったけど、さすがにそれはマルゲリータさんに怒られそうなので、やめておく。
行くしかないか・・・。
私は目をつぶって深呼吸する。そして、大きなドアノブをつかんでドアを開き、一歩足を踏み入れた。
「きゃあ!!!」
入った瞬間に、なんだかかわいい悲鳴が聞こえた。
私の目の前に飛び込んできたのは・・・・・・
わが主人様であるオルガの姿であった。




