一緒に楽しく(?)服を見よう!
・・・・・バレた。でも、これで会うタイミングを見計らう手間が省けたかも。
ポジティヴに考えていこう!
オルガは怖い顔をして立っている。とりあえず事情を説明しないと。
「アリス様と偶然お会いしたので、ごあいさつを」
「ふん、放っておきなさい、そんな平民のことなど」
アリスはカチンときたらしく、すぐに言い返した。
「どういうことです?それ」
「どういうことって、そのままの意味よ」
不穏な空気が、うっすら漂ってきた。
オルガは平常通り、会ってすぐにケンカ腰だ。
このままだと、また険悪なムードになりそうなので、私はちょっと言葉をつけ足す。
「なるほど・・・・・・アリス様の買い物の邪魔をしないように、それで放っておけというのですね。さすがの心づかいです」
「え?いや、そうじゃなく・・・」
オルガが言いかけるが、隙を与えずに私はしゃべり続ける。
「オルガ様の優しさもわかるのですが、そうは言ってもお二人はご学友。由緒ある学園の生徒として、あいさつくらい、交わしてもよろしいのではないでしょうか」
「ま、まあ、そうかもね。あいさつくらいなら……」
『由緒ある学園の生徒として』っていう文句が効いたのか、ぶすっと不満そうにだけど、会釈をするオルガ。
とりあえず及第点。さっきより、ちょっとだけ嫌なムードじゃなくなった。
よし、ここから畳みかけて、いい感じの雰囲気に持っていこう。
私はこんな提案をする。
「どうでしょうか。せっかくこうして会ったのですから、アリス様の服をオルガ様が選んで差し上げては?」
「は?どうして私が?」
「オルガ様は、おしゃれですから適任かと思うのですが」
「なぜ、私がそんな面倒なことをしなくてはいけないのよ」
ちっ・・・すんなりとはいかないか。
まあ、普通に言っても、上手くいかないのは予想ずみ。
では、これならどうだ!
「はぁ、そうですか。どうやら、オルガ様には荷が重かったようです。すみません、アリス様」
「なんですって?・・・・・・荷が重い・・・ですって?」
オルガは、キッと私をにらんだ。
よし、食いついた!なんだか、釣りかなにかしている気分になってきた。
「オルガ様なら、服を選ぶくらい朝飯前かと思いましたが、私が買いかぶっていたようです。仕方ないですね。完璧なお嬢様と評判のオルガ様にも、苦手なことはありますよね」
私は大きくため息をつく。
「申し訳ありません、アリス様。せっかくの機会ですが・・・」
「待ちなさい!服を選ぶなんて、余裕よ、余裕!」
ムキになっているオルガ。やっぱりプライドが高いから、挑発したら乗ってくるんじゃないかな~と思ってやってみたけど、ここまで見事に的中するとは予想外だった。
ただチョロすぎて、逆に心配になってきた。誰かに騙されたりしないかしら、この子。なんか、お母さん的な気持ちになってしまう。
でも、とにかく乗り気になってくれたから、それでよし。
「では、おねがいします」
「やってやるわ!」
鼻息荒く、オルガはずんずんと歩いて行って棚から次々と服を取り出す。アリスを見て、それからまた服を出して、またアリスを見ることを繰り返す。
やりはじめたら、オルガが一番張り切ってる。な~んだ実は好きなんじゃない、こういうの。
頑張ってるな。やる気出してくれて、うれしい。
私は、あたたかい目で見守る。
「なに突っ立っているの!あなたたちも、手伝いなさい」
「え?」
私とアリスは、顔を見合わせた。
「両手がいっぱいで持ちきれないから!ほら、はやくしなさい!」
オルガは、たくさんの服を私たちに押しつけると、
「これに合わせるには、上着との相性も考えないと・・・待って、やっぱりこっちを」
ブツブツと、つぶやきながら歩いていってしまった。
なにかのスイッチが入ってしまったみたい。
次々に服を持ってきては、アリスに試着させる。
「じゃあ、次はこれよ」
「え?これさっきと同じやつじゃ・・・?」
アリスが、首をかしげながら言った。たしかに、直前に着たものと見た目は同じ気がするけど・・・。
「はあ!?なに言ってるの?襟の形が違うでしょう!」
怒られている。素人には、その差がわからないが、どうやら違いがあるらしい。
「これだから、平民は・・・」
「それ関係あります!?」
一瞬、フォローに入ろうか迷ったけど、そんなに深刻そうでもないのでスルー。小競り合いくらいなら、私も放っておくことにしよう。
「う~ん・・・」
二つのシャツを見比べて、オルガは眉間にしわを寄せてうなっている。
『どっちでもいいんじゃないですか?』と言いたくなるけど、やめておく。たぶん、こんなんだからおしゃれじゃないんだろうな、私って。
「ねえ、どっちがいいと思う?エリーゼ」
うわ!私にパスがきた。
……じっと見てみても、違いがさっぱりわからない。
なので、ここはスッパリとあきらめる。即断即決って大事。
「よくわかりませんね。なにか、違うんですか?」
オリガは雷に打たれたみたいに固まった。
「な、なんですって・・・」
「オルガ様、思い出してください。私が服選びにオルガ様をお誘いした理由を・・・」
「あ・・・そ、そうね。センスが壊滅的とか言ってたわね」
「ご理解がはやくて助かります」
「あなたに聞いた私がバカだったわ」
「ほんとですね」
ジロッとにらまれた。
この冷たい視線・・・ちょっとうれしい。
オルガは大きなため息をついた。そして、目を見開くと
「わかった。私が選びます!その代わり、とことん付き合ってもらうわよ!二人とも」
『え~』とか、『嫌です』と言う間もなく、私とアリスは首根っこをつかまれて、店の奥へと引っ張っられた。
なんだか、長くなりそうな予感がする……。




