いざ、お出かけへ!
あっという間に休日!
天気は快晴!
準備万端!
絶好のお出かけ日和である。
私はさっそく服を見に行こうと、オルガを誘う。
「どうして、あなたと出かけないといけないのよ。一人で行きなさい」
言われると思った。あいかわらず、つれない返事だ。
『そんなんだから友だちができないんですよ』というセリフをグッとこらえて
私はこう言い返す。
「いつもメイドの格好ばかりしていて、私服を着る機会が少ないので、わたくしの服のセンスは壊滅的です。それゆえ、今度、校外学習がありますが、その時、オルガ様に恥をかかせる自信があります。ええ、ありますとも」
「なんなの、その自信は!?」
あきれた顔で見てくる。
でも、実はこれは、外へ連れ出す口実が半分、半分は本当である。ファッションセンスに自信なんかないし、貴族の世界のおしゃれとかわからん。
「というわけで、オルガ様がついてくる必要があるのです。ええ、ご理解が早くて助かります」
私は早口でまくし立てて、強引に連れ出す。どさくさに紛れて手を握っちゃおっと。
「え!?ま、まだ、行くとは言ってないわ!?ちょっと待ちなさい!」
「善は急げです」
私は待たない。グイグイ引っ張っていく。こういうのは、勢いだ。
「わかったわよ!行くから、手を放しなさい」
「初めから、素直になっていいのですよ」
「はあ、なんなのこのメイド・・・」
すでに、ちょっとお疲れ気味だ。
服屋に到着。
きれいなシャンデリアがぶら下がっている。
見回してみると、ずらりと壁一面に並んでいる服の量に、びっくりする。
飾られている服は派手なものが多い。赤や黄色、オレンジとか、私が絶対着ない色をしている。
天使の羽みたいな飾りが袖にくっついているシャツがあったり、いつ着るのか見当もつかないピロピロしたすだれみたいなのが肩についているドレスがあったりと、奇抜なデザインのものも取り揃えている。
この世界では、これが普通なのか?
なんかおもしろそうなので、袖に羽がついたシャツを、こっそり買い物かごに入れておく。
衝動買いである。
ここぞという時に、着よう!
……一生そんなタイミング来ない気がするけど。
私がきょろきょろとお店を見回していると、
奥の方にアリスがいるのを確認した。
私は野球なんかで選手が使うサインみたいに、身振りで『まだ待機』のメッセージを送る。
『了解』のサインが返ってきた。
これ、楽しい。
周りの人がちらちら見てくるけど、気にせずいこう。
私たちが秘密のメッセージのやりとりを楽しんでいるのを知らずに、オルガは服を真剣に眺めている。
どうやら、ちゃんと選んでくれているみたいだ。
「これなんてどう?主張しすぎていないし、上品でいいわ」
紺色のシャツだ。緑色の葉っぱみたいな模様が全体に入っているけど、色が薄めなのでそんなに目立たない。さりげない感じ。
メイドという立場でも問題なく着られそうだ。
へえ、なんかよくわかんないけど、おしゃれっぽい、これ。
「まあまあですね」
「あなた、センスに自信がないから私に頼んだのよね?なんで上から目線なのよ!」
「それはあれです。照れ隠しです。ほら、わたくしって、すごく恥ずかしがりじゃないですか?」
「あなたのどこが恥ずかしがりなのよ・・・」
オルガにあきれられている。
一応、ご主人の一歩後ろを歩いて補佐するメイドさんを目指しているのだけど、つい楽しくて前のめりになっているせいか、すごい面の皮の厚いやつだと思われているようだ。
この状況、私にとって幸せそのものである、
メイドである私が、ご主人であるオルガに服を選んでもらっているシチュエーションが、なんだか倒錯的って感じで、非常にグッとくる。
本来は、メイドがご主人の世話をするもの。でも今は、ご主人がメイドのために動いている。
なに、このプレイ!?最高か!
「なぜ、ニヤニヤしているのよ」
「いえ、オルガ様を、わたくしの服選びに連れだしている状況が、とても愉快です」
「どういうこと?」
「オルガ様をわたくしのために働かせてると思うと、非常に快感です。日ごろのストレスが吹っ飛びます」
「あなた、性根が腐ってない?」
「オルガ様のメイドですので」
「それ、どういう意味!?」
にらまれた。
こんな感じで、楽しく(?)おしゃべりしていると、遠くの柱の陰からアリスが手招きしているのが見えた。
オルガはアリスに対して背を向けた位置にいるので、バレてはいない。
「ちょっとお手洗いに行ってきます」
私は適当な理由をつけて、アリスのところへさりげなく歩いていく。
「あの、私、いつ行けばいいんですか?タイミングが分からなくて」
「場所と時間は決めてましたけど、その後はプランがありませんでしたね」
「はぁ・・・しっかりお願いしますよ。どうしていいか分からずに、途方に暮れてました」
「では、このまま一緒にオルガ様のところへ行きましょう。私がお手洗いに行ったら、たまたま個室の中で会ったことにして」
「お手洗いの入り口で会ったことにすればいいでしょ!どうして二人で一緒に個室に入ってるんですか、私たちは!」
「それは……ねえ?」
「ねえじゃないですっ!なんでちょっと照れた顔して言うんですか!」
「いつまでお手洗いに行っているのです?エリーゼ・・・」
戻ってくるのが遅い私を探しにきたオルガは、アリスの姿を見て、ピタリと足を止めた。
「あなたたち、いったいなにをしているの?」
オルガの表情は、氷みたいに冷たかった。
そうだ、彼女は通称「氷の女王」なのだ。
忘れてた。




