仲良くなるための作戦
教室に入ると、遠くの方の席に座っているアリスがこっちをチラッと見た。
まだ照れてるのかな?
一方、オルガの方も、どこか居心地悪そう。こっちはこっちで、変に意識しちゃってるみたい。
ほとんど顔には出てないけど、私にはわかるぞ。
オルガとアリスの二人は、大人しく行儀よく授業を受けていた。
時々お互いに目が合って、慌ててそらしてたりしていたけど、特にトラブルもなく進んでいった。
さすがにオルガも、授業中に嫌みを言うのは、先生とか他の生徒にも迷惑がかかるし、控えているらしい。どうやら最低限のTPOはわきまえているようだ。
まあ、嫌みを言っていいTPOは、たぶんないだろうけど。
そうこうしているうちに、休み時間になった。
アリスが立ち上がって、こっちにやって来る。
「オルガ様!先ほどの言葉は、なんのつもりなのです?」
「さっき?あ、え~あれは、エリーゼが勝手に言ったことよ!そう、私の本心じゃないの!」
オルガは平然としたふりをしているけど、返事がたどたどしい。
なので、ここは私が代わりに説明しておこう。
オルガに仕えるメイドだもの。ちゃんとご主人の言いたいことは、伝えてあげないとね。
「分かっております、オルガ様。本心より、もっと深い言葉なのですよね。言ってみれば、そう・・・心の叫びです」
「ち、ちが、違います!」
オルガは、あたふたすると、
「とにかく、私はあなたのことを、どうとも思っていませんから!」
ピシャリと言うと、席を立って逃げるようにどこかへ行ってしまった。
あ、逃げた。
ちょっとやりすぎちゃったかな?
・・・・・・そして、アリスと二人きりになる。
まあ、彼女とも距離を縮めたかったし、二人きりになれたのはチャンスかもしれない。
私からしっかり、オルガの発言の真意(私が勝手に考えたやつ)を補足しておこう。
「これから交流していきたいと、オルガ様は、そう言っております」
「ほんとですか?なんか、全然そんな感じじゃなかった気がしますけど」
「そこが、オルガ様の遠慮深いところなのです」
「は、はぁ」
半信半疑の顔をしているけど、アリスは私に対しては、当たりが強くない気がする。
私はゲームでは存在感がほぼゼロなので、いじめに加担はもちろんしてない。いや、それどころかアリスと言葉を交わしたかどうかすら怪しい。
だから、たぶん、ただのクラスメイトの一人って認識なんだろうな。
オルガとアリスには仲良くなってほしいけど、私もせっかくだから仲良くなりたい。
みんなが仲良くなるためにも、やっぱり交流が必要だ。
そこで私は、アリスに一つ提案をしてみる。
「今度オルガ様とお出かけしましょう」
「へ?」
「で、時間ですが・・・」
「勝手に話を進めないでくださいっ!何の話です?」
ちっ、強引に押し切ろうとしたけどダメか。
でも私、めげない。頑張る!
「なにか問題でも?」
「問題もなにも・・・・・・私、オルガ様とは友だちじゃありませんけど」
「冷たい人ですね。さては、友だち少ないでしょう?」
「余計なお世話です!」
「では、今から友だちになればいいのです。というわけで、お出かけしましょう。今週末などいかがでしょう」
「そんな、いきなり友だちになれって言われても・・・」
「頭が固いですね。そんなんだと、モテないですよ」
「む~~~~!!」
あ、頬っぺたプクっとして怒っている。これ天然でやるなんて、さすが主人公!かわいい!
「ということで、待ち合わせ場所ですが・・・」
「待ってください。どうして、そんなに私を誘いたいんですか?」
アリスが、真面目な様子で、もっともな疑問をぶつけてきた。
・・・・・・まあ、気になるよね、そりゃ。
『ここはゲームの世界で、このままだとバッドエンドになるからです』とは言えない。てか、言っても『なに言ってんだ、こいつ』で終わる。
もっと真っすぐと、気持ちを伝えよう。
アリスは、曲がったことが嫌いな性格だから、こういうのははっきり言ったほうがいいな。
権力とか家柄とか関係なく付き合える、オルガの本当の友だちになってほしいんだ、と。
私は、口を開いた。
「アリス様なら、オルガ様と対等な友人になっていただけると思ったのです」
アリスは平民出身で差別や偏見に耐えてきたので、身分や肩書きで人を判断することを嫌う。そこが、彼女のいいところで、私がアリスを好きな理由の一つ。
「友人なら、たくさんいらっしゃるじゃないですか」
アリスは不審そうな様子で言った。
私は大きくため息をついて答える。
「みんな、オルガ様の家柄目当てで近づいてくる者ばかりなのです。それは、本当の友だちと言えるでしょうか?」
「そうなんですか・・・」
神妙そうな顔で聞いているアリス。
「そんなやつらばかりだったので、オルガ様は、ひねくれて性格がクソ悪くなったのです」
「さりげなく、ご主人の悪口言ってません?」
「愛ですよ。愛ゆえの暴言です」
「自分で暴言って言ってるじゃないですか!」
「それはそれとして、どうです?一緒におでかけに行きたくなったでしょう?」
アリスはあきれたようにため息をついた。
「わかりました、わかりましたよ!理由も聞かせてもらいましたし、そこまで熱心に誘ってくれるなら行きます。ただし嫌なことを言ってきたりしたら、すぐに帰りますからねっ!」
「もちろんです。では、オルガ様と偶然を装って、お店で会うというのはどうです?」
「え?内緒にするってことですか?」
「ええ。照れ屋のオルガ様には、その方がいいのです。真正面から誘っても、恥ずかしがるにきまってますので」
「そうなんですか?まあ、一度うんと言ったので、段取りはお任せしますけど・・・」
「では、お顔を近くに。作戦会議といきましょう」
こうして私たちは、お出かけのための作戦を話しあったのだった。
・・・・・・・・・・
しばらくして、オルガが帰ってくる。
私とアリスは、オルガには気づかれないようにさりげなく別れた。
「なにも変わりはなかったかしら?」
よし、なにも気づいてないな。
「はい。ある計画が急速に動き始めております」
「なに?計画って」
「いずれ、わかります」
「変なこと企んでないわよね?」
「ご安心あれ」
首をかしげるオルガ。そして、こっちをジーと見てくる。たぶん、怪しまれている。
私はそんな視線を華麗にスルーしつつ、きたる週末に思いをはせる。
さ~て、これをきっかけに、距離が縮まればいいなあ。
フハハ、今から楽しみだ!




