はじめましてのみなさんにご紹介
ペチペチほっぺを叩いたり、マルゲリータさんと二人がかりで砂の城から引っこ抜いてあげたりしながら、せっせと気絶しているみんなを起こしていく。
みんなは、しばらくボンヤリとしていたけど休んでいるうちに意識がはっきりしてきた。
まず、目の前にいるシャチにビックリしていた。そりゃそうだ。インパクト抜群である。でも、シャチのことを話すにはマルゲリータさんについて説明しなきゃいけないので、とりあえずシャチのことは後回しで、私はマルゲリータさんを、みんなに紹介する。
「ここにいるドでかいやつについては、後で言います」
みんな、首をかしげながらも承諾してくれた。
「え~というわけで、気を取り直して・・・この方が、噂のマルゲリータさんです」
「へ~!すげえなあ、筋肉だ筋肉!」
アルベルトはどうやら興奮している様子。スポーツマンだけあって、マルゲリータさんの立派な筋肉を興味津々って感じで眺めている。
でも、初対面の人を指差しながらいきなり『筋肉だ!』と言うのは、ちょっと失礼な気がするけど・・・、
「なんだ、このクソガキは?」
と、それに対して、マルゲリータさんの方も失礼で返しているので、おあいこだった。
「ガキぃ!?」
いきなり言われて面食らった。初対面の人から『クソガキ』呼ばわりは、貴族のアルベルトからして、新鮮だろうな。
「さすがだ・・・・・すげえ」
なぜか尊敬のまなざしを向けている。そのふてぶてしさが逆によかったようだ。
「なかなか鍛えてるな」
「おっ分かるか?そうなんだよ、実は最近いい感じのトレーニングをはじめたんだよ!まずはやっぱり腕のやり方なんだけどさ・・・」
と、筋肉について熱く語りはじめた。なんだか長くなりそうな雰囲気を感じたので
「そこまでにしましょうか。みなさんの紹介がまだですから」
「う・・・そうだよな。すまん」
素直に引き下がってくれるとは、珍しい。
「珍しく素直ですね」
私が突っついてみると
「だってよぉ、見てみろよ・・・これ」
アルベルトが隣にいるアリスとイングリッドを指差すと、二人からは早くしろってオーラがバリバリに出ていた。マルゲリータさんに興味津々のようだ。
よし、それなら早速、紹介しよう。
「こちら、アリス様。学園では唯一の平民の方で、とても頑張り屋さんなんですよ」
「あわわわ、よよ、よろしくお願いします」
アリスはマルゲリータさんの威圧感にビビっているけど、きちんと姿勢を正してお辞儀する。
「それは、素晴らしい。噂には聞いているぞ、よろしく頼む」
マルゲリータさんは、きちっと頭を下げて礼をする。行儀のいい人には丁寧な対応だ。
「そして、こちらがイングリッド様です」
「わあ、すごいですね~!カッコいい!」
イングリッドはいろんな方向から観察している。やっぱり最初はその圧倒的な筋肉に目がいくらしい。
「ふん、当然だ」
褒められて気分がいいのか、そのオレンジの髪をかきあげて勝ち誇ったみたいな顔をした。
「え~続きまして、わが国の王子であるギュスターヴ様です」
「ちょっとその紹介のされ方は照れるなあ・・・。はじめまして、ギュスターヴと言います。一応、この国の第三王子ってことになってますけど、あんまりお気になさらず」
ギュスターヴはマルゲリータさんと握手する。
「そうか?じゃあ、よろしくなギュスターヴ」
「よろしく、か・・・。なんだか新鮮だなぁ・・・初対面だと、ぼくが王子だって聞いてかしこまっちゃう人が多いんだけど、マルゲリータさんは違うんですね」
「ん?だって、気にしなくていいんだろ?」
軽い調子でマルゲリータさんは返事する。
ギュスターヴは、ニコリと笑った。王子としてではなくて、普通に接してもらえるのがうれしいんだろうな。
「で、こいつ・・・じゃなくてこの方が、時々お話しするオルガ様の婚約者であるエドワード様です」
「お前!今、はっきり『こいつ』って言ったな!はっきりと!」
エドワードが、ワーワーと騒ぐ。
「ほう・・・お見かけすることはあったが、ごあいさつは初めてだったな」
マルゲリータさんは、大きくズイッと一歩近づいた。
「な、なんだ・・・?」
ただならぬ雰囲気を感じとってエドワードは後ずさりする。
「別に怖がることはない・・・。特別な方への特別なあいさつだ」
と言うや、みぞおちに拳を叩き込んだ。
「ぐわあっ!!!」
「いつもオルガ様に冷たく接してくださっているようで、その礼だ。これからも、仲良くしような」
「よ、よろ・・しく」
死にそうな声でエドワードはあいさつした。ぶん殴られてもあいさつをしっかり返すのは偉い。
最近のエドワードは、私が遊びに誘っていることもあって、そんなにオルガへの対応はひどくないんだけど、それまでの行いが悪かったからか、キツイお仕置きが飛んできた。
えっと、お腹を抑えてうずくまっているエドワードは、そのまま休ませておくことにして・・・と
「そして、こちらがアルジェリー家のオルガ様です」
私は紹介を続ける。
「なんで私を紹介してるのよ!?うちのメイドじゃないの!」
「いえ、忘れている可能性もありますので、一応」
「はあ?私が忘れるわけないでしょ!」
オルガの言葉を聞いて、マルゲリータさんがちょっとうれしそうだ。
「いえ、オルガ様が忘れていないのは分かってます。マルゲリータさんの方がうっかりしているかもしれません」
「主人を忘れるメイドってなんなのよ!?」
「どうも、よろしくお願いします」
マルゲリータさんは、わざとらしいくらいに行儀よく一礼する。
「マルゲリータ!!あなたも悪乗りするんじゃないのっ!」
オルガはプンスカしている。
「アハハハ!相変わらず、短気なご主人様だ」
豪快にマルゲリータさんは笑った。
「知ってます」
私とマルゲリータさんは、顔を見合わせてニヤニヤした。
「う、うるさいわねっ!」
オルガは真っ赤になってる。でも、声がなんとなく柔らかい感じだから、本気では怒ってない。たぶん、照れてるんだろうな。
「でもお話で聞くのと、実際にお会いするのとは全然違いますね。イメージではもっと怖い方かと思ってましたけど、そんなことなくて安心しました」
アリスは緊張が解けて、いつもの調子をとり戻した。
「そうだろう。実物の方が、何倍もイケてるだろ?」
ふふんと、自信に満ち溢れているマルゲリータさん。こういうところは、ご主人であるオルガに似ている気がする。やはり、マルゲリータさんの主人は、オルガじゃなくっちゃね。
・・・でも、このままシナリオ通りに進んでいったら、分かり合えないまま二人は別れてしまうんだ・・・。
みんな(エドワードを除く)とすぐに打ち解けて楽しそうに話をしている光景を見て、私は、彼女をクビにさせまいと、もう一度心に誓った。




