楽しみ方は、人それぞれ
22時に投稿した後、ほんの少しだけ、文章を追加、修正しました
「うおおお!遊ぶぜ~~!!」
「がお~~~!」
絶叫している人が二名。
アルベルトとイングリッドである。元気でうらやましいかぎり。
私からすると、海ではまったりしたいんだけど、アクティブな二人には、そんなことでは満足できなさそうだ。
「今からレースだ!ぬおおおおお~~!」
そう言ってアルベルトは、みんなを置き去りにして泳いで行っちゃった。
ほかに参加者がいないけど、どうやってレースするんだろう?自分との戦い的なことかしら。
だれも泳いでいくアルベルトを追いかけない。かわいそうなので、私は軽く手を振って見送っておいた。
「そりゃそりゃそりゃそりゃ~~~~!」
「うあ~~~~目が回る~~~!」
海の中ではイングリッドが、大きな浮き輪に座って浮いているアリスをグルグル回転させまくっている。実に仲が良さそうである。
アリスは遊んでいるというより、イングリッドに遊ばれているような気もするけど・・・そこは気にしない方向でいこう。
そんなアクティブな面々を尻目に、ギュスターヴは浜辺になぜか、どデカいテーブルと椅子を出してお茶会を開催していた。隣にはエドワードがのんきにクッキーを食べながら、ぽけ~としている。
海まで来てなにしてるんだろう、あの二人。
残されたのはオルガと私。波打ち際にポツンと立っていた。寄せては返す波が当たって、冷たくて気持ちいいような、くすぐったいような感じがする。
「・・・・・・・」
オルガは黙ったまま遠く水平線の方を見ている。向こうで、『おらら~~~!』とアルベルトがすごい勢いで叫びながら泳いでいて、周りの人をビックリさせていた。
「どうしました?」
海に入ろうとしないまま、ぼんやりとしているオルガに話しかける。
「・・・別に」
「?」
そのまま動こうとしない。どうしたんだろ?水が怖いとか、そういうことは設定になかったはずだけどな。
私は考えてみる。
・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・もしかして、今まで友だちがいなかったから、どう遊んだらいいのか分からない・・・とか?
もしそうなら
超絶的にかわいいのだがっ!?不器用な感じが、すごくいい!
「へへへっ」
私は思わず笑った。
「な、なによ!?気持ちの悪い顔して!」
「いえいえ、なんでもありません。エヘッエヘヘヘ」
「その顔腹立つわ!やめなさい!」
「私の慈愛に満ちた笑顔を気持ち悪いだなんて・・・」
「今度、鏡で見せてやりたいわ、その顔」
「オルガ様と一緒に私の笑顔を鏡で見る・・・なんかこう、滾るものがありますね」
「変な想像しないっ!」
頭をスパコーンと叩かれた。
「せっかくなので遊びましょう、オルガ様」
私がオルガのメイド、こういう時は任せとけ!
「でも、なにをすればいいのよ?」
やっぱり、どうしていいのか分からなかったんだな。
「あれ、やってもらいます?」
絶賛大回転中のアリスを指差した。
「やめとく・・・たぶん具合が悪くなりそう」
私も絶対吐く自信ある。
それにしても・・・イングリッドの回す勢いが強すぎる気がするな。テンションあがっちゃってるのかしら・
ちょっと、このへんでとめに入った方がいいかも。
「え~それでは、これから二人でイングリッド様をとめに行きましょう。あのままだとアリス様が海の中で盛大におバーストされます」
「なんですって!?あと、おバーストってなに!?」
「嘔吐する、ゲボを吐くという言い方だと露骨すぎるので、可能な限りポップな表現にしてみました」
「そんなわけの分からない配慮はいらないから!とっとと行くわよ!」
二人でアリスを救出しに行こう。
平泳ぎで向かっていると、周囲からクスクスと笑い声が聞こえてきた。『なにあの人?』とか『おもしろ~』とか言われて、私を指差している。
「いやはや、人気者すぎて困ります」
「笑い者になってるのよ!」
と、オルガに叱られつつアリスたちの元へ。
「ぎ、ぎもぢわるい~~~」
アリスはすっかり目を回している。
「あ、それ!あ、それ!」
そんな状況には全然気がつかず、ひたすら回しまくっているイングリッドとアリスの間に割り込む。
「そこまでよ!」
オルガが一発、イングリッドの頭をスパーンとはたいた。
「あ痛っ!」
イングリッドの手がとまったところで、私が浮き輪ごとアリスを救出する。
「いきなり叩くなんて、どういうつもりよ!」
「あの平民・・・目を回してるわよ」
オルガがアゴでしゃくってアリスの方を示した。ちょっと行儀が悪い。
「うあ~~~~なんか光の輪っかが見える~~~」
回りすぎでアリスは意味の分からんことを口走っている。とりあえず落ち着くまでそっとしておこう。
「あ・・・あれ?」
ようやく事態を把握した様子。
「ほんとだ~。いやいや、つい楽しくてやりすぎちゃった!」
「楽しいのはけっこうですが・・・ほどほどにしましょうね」
オルガに注意させると、容赦なく罵倒しそうなので、私がやんわりとイングリッドに言い聞かせる。
「あはは、ごめんね。今後気をつけるよ。・・・・・・そんで次はだれがやる?浮き輪であの世を見に行こうツアー」
あのグルグル回転させるやつってそんな物騒なネーミングだったのか・・・。全然懲りてないみたいだな。
ともかく、ここはアリスを休ませよう。
「アリス様はお疲れのようなので、ギュスターヴ様があちらで開いているお茶会に参加して、休憩しませんか?」
「えっ!?なにそれ」
「クッキーもあるようですよ」
「行く行く!」
イングリッドは、話を聞きおわるとすぐに、ギュスターヴたちのところへ向かって行った。
「では、われわれは二人でアリス様を運んで差しあげましょう。このままにしておくわけにはいきませんから」
「はあ・・・仕方ないわね」
ため息をつきつつ、浮き輪ごとアリスをゆっくりギュスターヴたちのところに向かって押していく。
「お~い!なにやってんだ~?」
ものすごい速さで私たちの前を横切ったのは、アルベルトだ。
「アルベルト様も、少し休憩しませんか?あちらで、お茶会が開いておりますので」
「うおっ!?ほんとだ。なにやってんだあいつら。まあでも、のどが乾いていたから、いいな。行こうぜ」
「アルベルト様、アリス様がちょっとお疲れなので、押してくださいません?」
「ん?・・・どうした?大丈夫か?」
アルベルトはそっとアリスに近づいて、心配そうに声をかける。いつもは声がデカめなんだけど、ちゃんとこういう時には声をひそめているのが、優しさを感じされて、ポイント高い。
「二人だと大変だろ?俺が押すぜ」
しかも、アリスを運ぶのを引き受けてくれた。やるじゃないか、アルベルト。もしや、いいやつか?
「はあ・・・少し落ち着いてきました」
アリスの意識がはっきりしてきたようだ。よかった。
「お!気づいたな。あっちでお茶会やってるから、行こうぜ」
明るく笑ってアルベルトが言った。
「そうですね・・・そうしましょう」
「あなた」
オルガがアリスの方をジロッと見た。
「な、なんでしょう・・・?」
アリスは少し身構えた。なにを言われるのか警戒している。
「友だちでも、やめてほしいことは、キチンと言うことね」
そう言うと、オルガはさっさと泳いで行ってしまった。
「えっと・・・アドバイス・・・ですかね?」
アリスは首をかしげながら、私に尋ねた。
「ええ、オルガ様なりの、優しさです」
「そうですか・・・」
ゆっくりとアルベルトに運ばれながら、アリスは遠ざかっていくオルガの背中を見つめていた。




