夏だ!海だ!海水浴だ!
天気がよくて、なにより。さすが夏休みの海水浴シーズン真っただ中の海。すごい人の数。人と人の間に水があるって感じだ。
オルガ、私、アリスとイングリッドは、人でいっぱいの浜辺で、この前選んだ水着を着ながらギュスターヴたちを待っていた。
私が夏休み前にギュスターヴ、アルベルト、エドワードの三人も誘っておいたのである。ギュスターヴたちもとても乗り気(エドワードだけは、しぶしぶ)で、すぐ一緒に行くことに決まったのだった。
ふふふ、水着姿の私たちを見て度肝を抜かすに違いない。どんな反応をするのか楽しみである。
やっぱり夏休みというチャンス、交流を深めない手はないから、なるべくたくさん遊んだりしたい。
学園内のイベントや行事だけでなく、積極的に同じ時間をすごすことで、ただのクラスメイトから友だちへとランクアップを目指していく。
そして、ゆくゆくは楽しい学園生活をすごし、バッドエンドのない未来へと向かっていく・・・そんな計画である。
「やあ、みんな・・・待たせたかな?」
ギュスターヴが、エドワードとアルベルトを連れて爽やかに登場した。人混みの中から私たちをすぐ見つけ出すと、真っすぐやって来た。
ワンポイントに波模様の入った水色のパンツを履いているギュスターヴは、とても爽やかな印象だ。生地が滑らかで質がよさそうなので、おそらくお高い水着なんじゃないかと予想。
続いてアルベルトはどうかというと、ベースは黒で、赤い炎みたい絵がすごくでっかく全体に描かれている。ド派手で、硬くて丈夫そうなしっかりした作りだ。なんとも、おおざっぱでアルベルトっぽい。
そして、残ったエドワード。緑色で模様のないシンプルな水着だ。でも、微妙に色がグラデーションになっている。さりげないけど、ちょっとおしゃれな雰囲気が漂っている。これもなかなか、よい。
・・・ファッションについては全然自信ないので、正直よく分かんないけど。
ともかく、これで全員集合だ。すごく混雑してたからもっと合流するのに時間がかかるかと思ってたけど、ギュスターヴたちが、すぐに私たちを発見してくれたので、よかった。
なんですんなり見つけられたんだろう?
アリスの主人公パワーで私たちが光ってたりするのかしら?それとも、オルガの悪役令嬢としての存在感で黒いベールに包まれていたり、イングリッドから元気いっぱいのオーラが放出してるのかもしれない。
・・・それとも、まさかの私から、なにかすごい怪電波でも出ているとか?
「お前、すごい目立ってるな」
アルベルトは私をジーと興味深そうに見ながら言った。
ん?なんだ?急にジロジロ眺めてくるなんて。やっと私のよさが分かってきたのかな?
「いくら私がかわいいからって、そんなにジロジロ見るなんて、もしや変態・・・?」
「なんでだよ!お前が人目引くんだよ!」
「そうだね。見るなっていう方がなかなか難しいかも」
なんだなんだギュスターヴまで、メロメロになっちゃってるの?私っていつの間に、こんなにモテるようになったんだろ。いや~困ったな~。
「ついに私の魅力に気づきましたか、みなさん」
ズイッと一歩踏み出す。
「あ、いや~まあ・・・魅力っつうか・・個性っつうか?」
アルベルトは後ずさりする。あらあら、照れちゃって。
「う~ん・・・ユーモラスと言うか?」
二人は顔を見合わせて苦笑している。
「おい!はっきり言ってやった方がいい。貴様のその水着、変だぞ」
エドワードが遅れてやって来て言った。
「いきなりなんですか?エドワード様。こんなおしゃれの塊みたいなメイドに失礼ですよ」
「おしゃれなやつは、そんな黒ずくめの怪物みたいな格好はせんっ!」
この前買った海藻みたいな水着けっこう気に入ってるのに、怪物だなんて。
「でも見慣れると、けっこうかわいいですよ」
と、アリスが擁護してくれた。『見慣れると』と条件がついているのが気になる。見慣れてないと、どうなんだろうか。
「変てこりんだけど、どんな人込みでもすぐ見つけられるから便利だよ!」
イングリッドからフォローが入った。かわいいとか、カッコいいとかじゃなくて、見つかりやすくて便利というのも、水着の褒め言葉として、よく考えればおかしいんだけど、でも立派な長所ではある。
「着ぐるみ的なかわいさもあり、目立つので、待ち合わせ場所としての機能も備えている素晴らしい水着ですよ」
私は胸を張った。
「聞いたことねえ・・・待ち合わせ機能のある服!?」
「そう、これこそ流行の最先端なのです」
「うおお!なんかそう聞くとすげえ気がしてきた・・・!」
アルベルトは私の話を聞いて評価を改めてくれたらしい。素直で助かる。
「俺は、貴様が詐欺にあわないか心配になってきたぞ」
アルベルトは、素直すぎて本気でエドワードに心配されていた。
「あわねえよ!」
まあ、あんまりアルベルトを騙したりする人はいないだろうな。見た目がイカついというか、今、水着姿だからより分かるけど、鍛えられた体の存在感がすごい。腹筋とか割れてるし、胸板も厚いぞ。
というかエドワードもギュスターヴも、みんな体つきがたくましい。ヒョロヒョロでもなく、ぽっちゃりでもなく引き締まっている。しっかりとトレーニングしてるんだろうな。
「なんだ?ジロジロ見て」
私からの視線を感じたのか、エドワードが不審そうな顔をした。
「いやあ、なかなかいい筋肉ですねえ」
「な、なんだ気色悪い!」
「ちょっとお腹とか触っていいですか?」
腹筋とかどうなっているのか、実に気になる。鍛えられている人の体って触ったことないんだよね。
「ち、近づくな!!」
「なぜ、そんなに嫌がるんです?・・・ハッ、まさか・・・俺に触れていいのは、婚約者であるオルガ様だけだと!そういうことですね!」
「は!?ち、違っ・・・」
エドワードの顔が真っ赤になる。
「いいえ隠さなくてもいいのです。オルガ様~そういうことらしいですよ~」
「こ、こら!変なことを言うな!」
「お~い二人とも、なにしてんの~!泳ごうよ~!」
私がエドワードに追いかけられていると、遠くでイングリッドが手を振っているのが見えた。私とエドワード以外のみんなは、もうすでに海に入って遊びはじめていた。
「は~い。エドワード様・・・いくら私と話すのが楽しいからって、みなさんを待たせてはいけませんよ。まったく仕方ない人ですね」
「貴様のせいだろうが!」
ブツブツと文句を言うエドワードと並んで、私はみんなの元へ向かって歩き出した。




