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灰になった三人・・・

 足元がおぼつかないアリス、イングリッド、エリーゼ(私)の三人。とぼとぼ夕日が沈む道を歩いている。

 少し離れて、先頭を進んでいく満足げな顔を浮かべている者、一名。


 ・・・オルガだ。私たちとはテンションが天と地ほどの差がある。


 私たち三人は肩を組みながら、ほうほうの体で歩いている。一気に年をとったみたいに背中が曲がっちゃってるし、フラフラ。


 一方のオルガは、軽い足どりで生き生きしている。まるで、みんなから生気を吸いとったみたい。オルガって吸血鬼かなにかなのか?


 私たちはあの後、オルガに無理やり引っ張られて、数時間ひたすら水着を選んだのだった。いい感じの水着は選べたけど、それと引きかえに体力が犠牲になった。


 でも、私はこの前よりだいぶマシな気がする。疲れてはいるけど、まだ体力はなんとか残っている。マルゲリータさんとの特訓がこんなところで生きてくるとは。どうやら私は、成長してるらしい。


 あと、みんなのいろんな水着姿を拝めたのも、非常によかった。これが心の癒しになって、体力の消耗を防いでくれたに違いない。オルガに感謝である。


 「しばらく服、見に行かなくていいかな・・・」


 イングリッドは力なく言った。


 「あ、うん。そうだよね・・・」


 アリスも同意見らしい。軽いトラウマになったりしてない?大丈夫かしら。


 「オルガ様も、よかれと思ってしてくれたことですし、あれだけじっくり見たのですから、いいもの選べましたよね」


 一応、フォローしとこう。オルガに悪気はないことをちゃんと伝えておかないとね。そうしないと、長時間、買い物につき合わせる身勝手なやつだと認定されかねない。


 オルガは、ついつい楽しくなって周りが見えなくなっちゃっただけなのだ。


 言ってみれば、厄介なタイプのうっかりさんである。


 「でも、結局さ・・・最初に着たやつを買ったんだよね、みんな。あんなに長々と見たのにさ」


 イングリッドは冷めた目で言った。


 いろいろ見た挙句に、私を除く全員が、一番初めに試着したやつがいい!という結論になった。


 よって、みんなの買い物袋の中にあるのは、延々と数時間かけて見たり着たりしたものじゃなくて、最初に試着した水着なのである。


 ただ一人私だけ、オルガに選んでもらったきれいなブルーの水着を買った。さすがに海藻のお化けみたいな水着だけ買うことは、オルガに許してもらえなかった。


 「あんなに長時間見る必要ってあったのかな・・・」


 イングリッドは遠い目をしている。


 「たしかに、そうですよね。もっと早く帰れたかも・・・」


 アリスも、なんだかボケーとしたまま言った。


 なんか雲行きが怪しいぞ。『オルガめ、余計なことを・・・』的な空気がうっすら漂ってきている。


 「いろいろ見たことで水着について理解を深められました。買いはしませんでしたが、オルガ様からレクチャーしてもらえましたし、勉強になったと言えなくもないのでは?」


 私が言うと、


 「まあ、それはそうかもだけど・・・」


 オルガのおかげで私たちは、ほんの少し服について知ることができたのは事実。そこはイングリッドも認めてくれるみたい。


 ・・・まあすぐ忘れそうなんだけどね。


 「たしかに私、あのお店の水着の配置、覚えちゃいました」


 どうやらアリスは、あんまり応用できないスキルを身につけたらしい。あのお店のどこに、どんな水着があるのか瞬時に分かるという。店員さん以外、いらないかも。


 「エリーゼの言う通りよ。この私が、あなたたちに教えてあげたのよ。ありがたく思うのね!」

 

 前をスタスタ歩いていたオルガは、クルリと振り返ると決め顔をして言った。


 まあ、たしかにそうなんだけど、オルガ本人から言われると、若干イラッとくる。


 「あはは・・・そ、そうだね・・・」


 アリスは苦笑いである。もはや、諦めの境地に達しつつあるようだ。アリスは大人の階段を順調にのぼっている。


 「な~んか、ちょっと腹立つんだけどな~」

 

 イングリッドはちょっとイラついていた。


 こういう時にオルガは『私も悪かったわ』とか素直に謝ったりしないので、このまま放っておくと衝突が起こる危険がある。


 なので、私のような優秀なメイドが頑張ってオルガの真意を伝える必要が出てくるわけだ。


 「オルガ様は、私たちのために時間をかけて説明してくださったのです。今後恥をかかないように」


 オルガの今日の功績(?)をアピールしていく。

 

 「そうよ、感謝してほしいくらいだわ!」


 と余計な一言をつけ加えていくのが、わがご主人である。

  

 「感謝ねえ・・・」


 イングリッドは、ジ~とオルガを見つめた後、ため息をついた。


 「それだけ熱心に選んでくれたってことは、オルガ様も楽しんだってことですか?」


 そう口を開いたのは、アリスだ。


 「え!?い・・・いや、それは・・・まあ・・・その・・・」


 相変わらず、すぐに認めようとしないのはオルガらしい。しどろもどろになってるから、バレバレなんだけどね。


 「オルガ様。すご~くつまらなかったとか、もう二度と行かない!とか、そういうわけではないですよね?」


 私が尋ねる。


 「まあ・・・そうね。つ、つまらないことはなかったかしら・・・。で、でも、すごく楽しくてテンションがあがりまくって、ついつい、いろんな水着を着せてはニンマリしていたとか、そういうことはないわ!全然、金輪際ないわよ!」


 急に自白しはじめた。やっぱり楽しかったんだな~。照れて早口になってしまうのが、私的には非常にかわいくて、よい!


 「・・・・・なんだか少し、オルガ様のこと分かった気がします」


 アリスは、ほんとにかすかにだけど微笑んだように見えた。


 「まあ一生懸命選んでくれたのは、間違いないか・・・大目に見てもいいけど、今度からもうちょっと短くしてくんない?毎回これだと、いつか死ぬんだけど」


 死因が服の見すぎとか、私も御免こうむりたい。


 「ふん、大目に見てるとか、偉そうなこと言うじゃない。そんな生意気言うなら。次からはもっと懇切丁寧に、じっくりと説明してあげるわ!ありがたく思いなさい!」


 「ええ~~~~!!」


 オルガと服屋へ行くの・・・私もしばらく控えようかな。





 ものすごく疲れたけど、なんとか平和に終わってよかった。仲も、少しは進展したかな?


 ・・・でも、今日みたいなイベントはちょっとハードなので、今度からはもう少しゆるい感じのを希望したい。


 そんなことを、帰り道を歩きながら思ったのだった。

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