第一回、試着室でファッションショーのお時間です!
「見るだけより、実際に着てみた方がいいと思いますので、試着室へ行きましょう」
ぞろぞろと、みんなで試着室へ。
そう・・・これが、今回の一番の目的と言っても過言ではない。
みんなのいろんな水着姿が見ること!
ゲーム本編でも叶わなかった夢・・・。特にオルガなんて、水着姿は一種類しかなかったもんな。一種類でも、見られただけマシではあるし、うれしい。
それはうれしいのだけど・・・ファンとしてはもっといろんな姿、見てみたいよね、やっぱ。
「珍しく、いいこと言うじゃないの。その通り。着てみなければ判断はできないわ」
おおっ!オルガに褒められたぞ。明日は雨か?
「うわ~楽しみ!ねっアリス!」
イングリッドも楽しそうに乗ってくれる。
「で、でもちょっと恥ずかしいよね・・・」
モジモジしているアリスの肩をポンと叩いて声をかける。
「大丈夫です。私が最初に着替えますので」
「エリーゼさんが?」
「ええ、そうです」
いきなり着替えるなんて、みんな緊張するだろうから、ここは私が先陣を切って場の空気を和ませよう。
「では、少々お待ちを・・・」
シャッと試着室を閉めて水着をとり出す。うお、けっこうデカいな。
「どんなの着るのかしら・・・どうも不安なのよね」
オルガは腕を組みながら、こぼした。
「分かる。絶対変なの着てくるでしょ」
奇跡的にオルガとイングリッドの意見が一致していた。珍しい。
「せっかく緊張をほぐそうとしてくれてるんだから、そんなこと言ったらダメ!」
と、アリスがイングリッドたちを叱った。優しい。
「え~ではレディースアンドジェントルメン」
私は、試着室のカーテンを閉めたまま、大きな声で呼びかける。盛りあげて、テンションあげていかないとね。
「ここにはレディースしかいないわよ」
オルガの冷めたツッコみが聞こえてきた。でも私、めげない!
「こほん、え~それではレディースアンド、レディース・・・お待たせいたしました。これより、アルジェリー家に仕えるメイド、エリーゼによる超絶怒涛、抱腹絶倒の水着お披露目会を開催したいと思います。思えば長い道のりでした、あれはそう・・・去年の冬・・・」
「余計な御託ははいいから!さっさと出て来なさい!」
しびれを切らしたオルガに、カーテンを強引に開けられた。
チェ・・・せっかく空気を温めようとしたのに。
そこでみんなが目にしたのは・・・・・・
全身をスッポリと真っ黒い布に覆われて、顔だけが出した私の姿だった。
「どうです?似合います?」
「・・・・・・」
オルガは固まっていた。私の格好に、脳みそが追いついていないらしい。
「なにそれ!?なんかこわっ!でもおもしろい!」
イングリッドの反応は正常です。こんな人が歩いていたら怖いもんね。もし海で出会った場合、私だったらそっと離れるかもしれない。
「海藻のお化け・・・?」
アリスは首をかしげながら、なんとも素朴な感想をつぶやいた。
なるほど、言い得て妙ってやつだ。私は頭から膝の上まで布に包まれた海坊主みたいな見た目である。水着ってより、お化けの仮装だって言った方が信じてもらえそう。
「・・・それって水着なの?」
ストレートな疑問をオルガにぶつけられた。こんな水着は珍しいだろうから、その疑問を持つ気持ち、よく分かる。
「そうらしいですよ。日焼けから身を守る水着なんだとか。日差しをガードする力が最強なんだそうです」
私は誇らしげに言った。なんか『最強』ってワードいいよね。
「だれがこんな変なもの作ったのよ!」
オルガは、なぜか製作者に対して怒っていた。
「でも、かわいくないです?」
自分では意外としっくりきている感じがしている。見方によってはマスコットとか、着ぐるみに見えなくもない。ゆえに、かわいい。
これを着ていけば、みんなの注目の的間違いなしだぜ。・・・まあ、笑いものになる危険も大だけど。
「どこが!変よ、変!」
バッサリと一刀両断であった。
「あ、あの・・・私は、に、似合ってると思いますよっ!ユ、ユーモラスでっ!」
アリスがフォローしてくれた。でも『ユーモラス』って言うよりチャーミングと言ってほしい。
「ね、すごいいいじゃん!しばらくそのままでいて!」
イングリッドにはすごく刺さったようだ。
「とりあえず私は着替えましたので、お次はどなたがいきます?」
ご好評につき、そのまま試着室を出る。
「それ着たままなの?それ?ま、まあいいわ。次は私が手本を見せてあげるわ」
オルガは着替えない私に少し不服そうだったけど、気持ちを切りかえた。髪をフワリとかきあげて悠然と試着室に入っていく。
「オルガ様なら、なにを着ても素敵ですよね」
私はニコニコしながら、アリスとイングリッドに話しかけた。
「まあ、スラっとしてはいるし・・・スマートなのは認めるけど・・・」
イングリッドはモゴモゴしている。感じが悪いオルガを、あまり認めたくないんだろうな。
「なんでも似合いそうな気がしますね」
私が間に入って関係は改善されてきたとはいえ、まだまだオルガにはいい印象はないはずだろうけど、アリスはけっこう素直に褒めてくれる。
これからいい面をいっぱい知ってもらって、お互い気軽に褒めあえる仲にしていきたいな。
「ほ、ほら、ででで出るわよっ!」
入っていく時はあんなに自信たっぷりだったのに、ちょっと声が上ずっていた。さては着替えているうちに、照れくさくなったな。
そういうところ、かわいくて好きです。
そろそろとカーテンが開いて、出てきたオルガの着ていたのは、
首元まで布があるハイネックってやつだ。しかもおしゃれな模様が描かれていてカッコいいデザイン。
この前、エドワードの好きな色が判明したので、きっちりその情報を生かして緑色のをチョイスしているのも、よい。
「さすがですねえ、オルガ様」
よく似合っていて素敵だったから、真っ先に褒める。まあ私はオルガのファンなので、どんなにセンスのない格好だろうと、たとえ全裸だったとしても『逆に、なにもないのがおしゃれでいいですね!』とか言っちゃいそう。
「あ、当たり前でしょ。私をだれだと思っているのよ」
とまんざらでもない様子のオルガであった。
「まあ・・・その・・・悪くはないんじゃない?」
イングリッドはブス~としている。文句を言ったやろうと思ったら、いい感じだったのでおもしろくないらしい。
「とてもいいです!」
アリスは迷いなくスパッと言ってくれた。
こういうところ、好きです。
「ふふん・・・まあね。平民にはレベルが高いかもしれないけど、せいぜい頑張ればいいわ」
『平民』の一言は余分だし、清々しいくらいの上から発言はどうかとは思うけど、まあギリギリセーフとしておこう。
「よ~し、そんじゃ今度は私がいく!みんなを、ぎゃふんと言わせてみせる!」
シュバッと元気よく挙手したのは、イングリッドであった。




