まずは小手調べ
とことこと、オルガたちのところへと戻って来た。
「遅かったわね」
オルガとアリスは、私たちが奇抜な水着を見てこの世界の深淵をのぞいている間、しっかり堅実なものを選んでいたみたい。もう数着、手に持っている。
「すみません、イングリッド様が便秘でして・・・トイレに時間がかかりました」
「わあっ!違う!嘘、嘘だからね!」
イングリッドはすごい慌てている。
「軽いメイドジョークです。ほんとはすこぶる快便だったそうです」
「それフォローになってない!」
「はいはい。トイレに行ったんじゃなくて向こうの水着を見てきたんでしょう。ワイワイやっている声が聞こえたもの」
あら、バレてたみたい。イングリッドとはしゃいでいる声が、思いっきり聞かれていたようだ。
「それで?それだけ見ていたんだから、いいものを見つけてきたんでしょうね?」
「へへ~ん。当たり前でしょ。吠え面かかないでよ!」
威勢よく宣言したイングリッドは、脇に抱えた水着を広げた。
「じゃ~ん。これなんか、どうよ!」
彼女が見せたのは、スパンコールみたいな、小さな飾りがびっしりついているビキニだ。
これって・・・・・海入ってOKなのかな?泳いだら、すぐボロボロ落ちそうな気がするけど。
「これで泳げば、気軽に環境汚染ができるよ!」
なぜかイングリッドはとっても誇らしげだ。
「それで入っていいわけないでしょ。却下よ、却下。そういう水着は泳ぐためじゃなくて、着飾るためのものよ」
オルガにバッサリ切られたイングリッドとバトンタッチして、今度は私が前に出る。
「そう言うと思いました。今度は、これです」
次は、一見普通のかわいらしい白いワンピースの水着に思える・・・しかし、
「なによ、ちゃんとしたのあるじゃないの。こういうのを出しなさいよ。まったく」
しげしげと眺めているオルガだったけど、あるところで視線がとまって険しい表情になった。
「ん?なんか、これ下がちょっと・・・」
「そうです!そこがイングリッド様イチオシポイントです」
パッと見ると気づかないけど、よく見ると、すごい食い込みが深くて、足を名いっぱい見せていく、なかなか際どいデザインの水着なのである。
「そうそう!そこがいいんだよ!やっぱ足、見せてかないとね~!」
イングリッドと私は、ハイタッチした。
・・・ふふふ、完璧なプレゼンテーションだ。そう思っていると、
「な、なんてハレンチな!」
オルガの顔は真っ赤だった。アリスも顔を手で覆って、照れている。
「え~そうかなあ?エロくていいじゃん?」
軽いノリでイングリッドがすすめるけど、その言葉はオルガには届かなかった。
「はしたないと言いなさい!こんなのダメに決まってるでしょ!」
即座にダメが出た。
まあ・・・分かってはいた、イングリッドが『これ、持ってきたい!』と言ったので、ダメでもともとって感じで提案したのだ。
「ちぇ~オルガだったら、私にふさわしいわ!とか言ってノリノリで着てくれると思ったのに」
「あなたのなかで私ってどんなイメージなのよ・・・」
オルガって恥じらいのない人だと思われていたらしい。
ちょっと、かわいそうである。実際はけっこう照れ屋なので、当然こんな格好はしない。もっと落ち着いた雰囲気のをおすすめする方が、気に入ってもらえる確率は高い。
「え~と、他にはないんですか?」
アリスが尋ねてくる。
「もちろんです。今までのは軽い冗談みたいなものですので」
「本気じゃないのね。よかったわ」
ホッとオルガは胸をなでおろす。本気だと思われていたらしい。さすがにそこまでいじわるじゃないぞ。
私は、次に持って来た水着を広げた。
「これです。なかなか大人っぽくていいかと思いますが・・・」
さっき、この世の大きさを教えてくれた、布面積おそらく、このフロア最小の水着・・・と言うより、ただの布切れと紐の塊のあれである!
「は・・・・?」
「え・・・・?」
アリスとオルガの二人とも、絶句している。
「これで、浜辺の話題を独り占め、間違いなしです」
私はドンっと自分の胸を叩いた。
指でつまんで、この水着っぽい形のなにかを眺めてオルガは、おそるおそる口を開いた。
「こ、これって・・・水着・・・?」
「持って来ておいてなんですが、未だ謎です」
「こ、こんなの変態が着るやつじゃないの!!」
顔がさっきよりも真っ赤だ。
「すす、すごいんですね・・・こんなのもあるんですか?」
アリスもタジタジである。
「ね!すごいよね!」
イングリッドは、なぜかうれしそうにしている。・・・・・なんで?
「こんなの着るわけないでしょ!さっきよりもひどいじゃないの!」
やはりダメだった。まあ、『これ着るわ』って言いだしたら全力でとめるつもりだったので、むしろこれでよかった。
「ご安心ください。ちゃんと無難なものもあります」
「そうそう、ちゃんとかわいいの選んできたからさ!」
イングリッドと二人で協力してなだめにいく。
「はあ・・・今度は頼むわよ」
オルガはため息を吐いた。
「それでは、こちらはどうでしょう」
今度は、まじめなやつ。左右非対称なのが変わっているけど、控えめにフリルがついていて、かわいい。
「なんか、変なとこないでしょうね?」
もう疑心暗鬼になっている。オルガのチェックが念入りである。
「もしや、奇抜なものがよかったですか?それなら、むこうに胸元がざっくり開いている、セクシーなのがありますよ」
「持ってこよっか?」
と、イングリッドがノリノリで走りだそうとすると、
「待・ち・な・さ・い!」
オルガに首根っこを、アリスに背中をつかまれて、イングリッドは全力で制止・・・というか拘束された。
「ふざけてないで。ちゃんと選びましょう」
みんなのテンションが落ち着いたところで、オルガが口を開いた。
それぞれ持って来た水着の披露会が、本格的にはじまるのだった。




