どんな水着があるかしらん?
色とりどりの水着と水着。上から下まで、水着だ。カラフルなものから地味なものまで、ズラズラっと並んでいる。
ここは、この間アリスとオルガと私で行った服屋さん。(※ep5~7くらいのお話である)夏を間近に控え、水着がすごい勢いでフロアを占拠している。
このお店・・・本気だ!
「まあ、ここなら揃うんじゃないかしら?」
お店の中を、軽く流し見しながら平然と言ってのけるオルガが、なんかすごく心強い。さすがお嬢様。
「ひゃ~こりゃ広いね。どれ選んだらいいのか分かんないよ」
イングリッドは、あっちへちょこちょこ行っては戻ってきて、また行ってと、せわしなく走り回っている。
「なんだか、目がチカチカしてきます」
派手な色の水着もあるから、アリスはまばたきしながら、その品ぞろえに目を見張っていた。この間一緒に来たけれど、ずいぶんその時とは印象が違う。
夏一色って感じで花が飾られていて、カラフルできれいだ。
「じゃあ、さっそく貴族である私が、バッチリ教えてあげるわ」
オルガは上から目線感をバリバリに出しながら、得意げに説明をはじめる。この偉そうな感じを少し抑えれば、友だちできるのになあ・・・とか思ったけど、口にするのはよそう。
「まず、こっちが標準的なデザインの水着が多いわ。まあ、言ってしまえば、ここらへんのを着てれば無難ってこと。奥の方は、比較的凝ったものや、奇抜なものがおいてあるわね」
と、フロアのどのへんに、どんな水着があるかをおおざっぱに教えてくれる。
ただでさえ広いお店だから、こういうアドバイスは助かる。
「それと、あっちは超高級品ばかりだから、学生の私たちには縁のないコーナーね」
そう言って、一番奥にあるショーケースを指さした。
遠くからでも分かる。なんだか、あの一角だけオーラが違うぞ。見ている人も、なんだか風格があるというか、ゴージャスな服装をしていて、いかにもお金持ちそうだ。
「よし、まずは普通の見てこ~。ほら、アリスも行こうよ」
イングリッドが、元気よくアリスの手を引いて、走り出していく。これだけの量があると見るのは大変そうだな・・・。
勇んで向かって行った二人は、しばらくいろんな棚を眺めてみては、また移動して、いくつか出してみたりした後、トボトボ戻ってきた。
「あ~~~なんかたくさんありすぎて、目が回る~~」
イングリッドはくるくると目を回している。品数の多さに脳がパンクしたらしい。
「ちょっと、イングリッドちゃん!?」
慌てて駆け寄ったアリスが、倒れる寸前で受けとめる。
「・・・かわいい水着・・・・・着た・・・かっ・・・・た・・・ガクッ」
「しっかり~~~!」
「周りに迷惑だから、早く立ちなさい」
オルガは二人の寸劇を、冷静にぶった切っていく。
「ちぇ~~今、感動的なシーンだったのに」
「変なことしてないで、行くわよ」
言うと、パパッと素早い身のこなしで水着を持って来た。すごく手際がいい。
「ほら、まずはこれ。これが、標準的なタイプのものよ」
と、一着渡してくる。
青いさわやかな色。胸の部分が三角形の形をしている、なんともオーソドックスなビキニって感じの水着だ。これなら安心して着られそう。人を選ばないデザインが、とてもよい。
・・・・・でも、もうちょっとチャレンジングなやつも見てみたい。奥の方の奇抜な水着のがある棚をチラッと見ていると、イングリッドが小声で話しかけてきた。
「ね、やっぱあそこ・・・あの奥、興味あるよね?」
「さすがイングリッド様。そうおっしゃると思いました。今、オルガ様はアリス様の水着を選んでいますので、私たちへは注意がむいていません」
「よし、ならミッション開始!」
二人で、どんなものがあるのか見に行くことにした。
「ちょっとお手洗いに行ってきます」
私はオルガに声をかけると、イングリッドと二人で、素早く目的の棚へと向かう。
「うわっ!これ見て。すご~!アダルトって感じ!」
早速、変わった形のを見つけたようだ。イングリッドがとり出して見せたのは、赤に黒、金色なんかも入った派手な色のやつ。
しかし、一番目を引くのは色じゃない。
なんといってもそのデザイン!Vの字に胸元がデカく開いていることだ!
これは自分のプロポーションに、相当な自信がないと着られないだろう。
私には当然、着る勇気はない!
「これは、ものすごく上級者向けですね」
「すごいな~私たちじゃ太刀打ちできそうもないよ~」
のっけからインパクト抜群の水着に出会って、ぶん殴られたようなショックを受ける。
その後も二人でいくつかとり出しては眺め、またとり出しては眺めを繰り返してみる。
しかし、そのほとんどが、着たら体のラインが出まくって、『私の体を見て!』みたいな、それくらいの自信満々な人じゃなきゃ着られないものとか、あとは、なんか宝石が埋まりまくってて、泳がせる気ゼロのやつとか、もうとりあえず水着って呼んでるだけで、水に入った瞬間に重くなって死にそうな超ド派手ドレスとかばっかり。
「ねえねえ、これって、水着?それともなんかの切れ端?」
と、イングリッドがすごいものを持って来た。裸じゃありませんという言い訳のために作られたみたいな・・・水着ってより、ただのちっちゃい布である。
「いやあ、なかなか世界は広いですねえ」
「ほんとだよね~」
私たちは水着の世界の奥深さに触れて、二人でうなずき合った。なんだか、すごすぎて、引くというより、むしろ少し感動している。
「あ、でも、この中のどれかはオルガにならいいんじゃない?あの人って、自信ありありって感じでしょ?」
たしかに、オルガは謙虚さとか持ち合わせていないので、間違ってない。でも照れ屋だから、こんな派手だったり、恥ずかしそうな水着は着ないだろう。
まあ、おもしろそうだから、どれか持って行くけどさ。
「ダメ元で見せてみましょうか」
「ナイスアイデア!あ!あとこれも持ってく」
イングリッドは、何枚かおもしろそうなものを手にとった。私たちはそれぞれ、これぞというものを選んで、オルガとアリスに見てもらうことにした。
「では、オルガ様たちのところへ戻りましょう」
「よ~し、けっこういい感じの見つかったね。どんな反応するだろ。楽しみ~」
ちょっとワクワクしながら、私とイングリッドは二人の元へ向かうのだった。




