みんなの家のメイド事情
「わがアルジェリー家は、今お話ししたマルゲリータさんと私・・・この常識的なエリーゼおります」
まずは、私から話をはじめる。なにせ私自身がメイドだから、要するに自己紹介をすればいいわけである。
「・・・・・・え?」
すごくみんな目を見開いたまま硬直している。
なんか変なこと言ったかしら?必要最低限で的確な説明しかしてないけど。
シーンと、静かな時間が流れる。
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「ツッコみ待ち?」
オルガが沈黙を破った。
「なにがです?」
「この間、赤点とりかけてたメイドのどこが常識的なのよ・・・」
みんな、うなずいている。
どうやら私の自己評価と他の人から見た姿の間に、ほんの少し隔たりがあるみたい。まあ、たまにはそういうこともある。
「個性的ではあるよね」
と、ギュスターヴがフォローなのか、そうじゃないのか判断が難しいワードチョイスをした。聞きようによっては褒めるところがなくて、頑張ってひねり出した言葉に思える。
「そうそう!常識的っていうか個性的って方がなんかしっくりくる」
イングリッドも同意見のようだ。
アルベルトとエドワードは黙ったまま、大きくうなずいている。アリスは微妙に苦笑しているけど、否定しないところを見ると、異論はなさそう。
なるほど・・・みんなの中で、私は個性的という位置づけらしい。普段、自称しているプリティーでラブリーなメイドというイメージは全然定着しないなあ。
やっぱり、もっとかわいさを露骨にアピールすべきなのか・・・?でも、かわいさを振りまいたことがないので、やり方がさっぱり分からん。
うーむ悩みどころだ・・・。
「ぼくのところのメイドさんは、比較的一般的だと思うな」
と、今後の方向性を迷っている私を尻目に、話は続いていく。
「嘘つけ!お前んのとこ。すげえの知ってるぞ」
アルベルトが立ち上がって、話に割り込んできた。
「まず、人数がすげえぞ!少なくともメイドだけで十人はいた!しかも、みんなで一列に出迎えるんだぜ。ズラーって!全員、背筋がピシッとしててさ!」
テンション高く、両手をいっぱいに広げながら説明してくれている。話しぶりからして実際に見たことがありそうだ。うらやましい。
しかし、メイドさんだけでそんなにいるのか。たぶん執事さんとかコックさんとか、そういう人を抜いた話だろうから、実際にはもっとたくさんの人がいるんだろう。やっぱり王子様だからお屋敷が大きいんだろうな~。そんなところで出迎えられたら、気持ちよさそうだ。
いずれ、ぜひ遊びに行って、そんで鬼ごっことかしたい。
「さすが王子様だ~」
「ほんと、すごいですね・・・」
イングリッドとアリスはすごい感心している。分かる・・・たくさんのメイドさんに出迎えられるのって、ロマンがあるよね・・・。
「いやいや、大したことないよ」
ギュスターヴは軽い感じで手をヒラヒラさせて謙遜している。なんか言われ慣れてる感が、そこはかとなく漂っている。これが褒められ慣れている者の余裕か・・・。若干その余裕が嫌味に感じなくもない。
「ぼくの家のメイドさんたちは、すごくよくできた人たちだよ。礼儀正しいし、仕事熱心だし」
さすがに、教育がきちんとされてそうだもんね。私とかマルゲリータさんなんかだと、採用されなさそうな気がする。
「いいな~そんないっぱいいて。うちなんてさ~口うるさい、おばあちゃんとおばちゃんの二人だよ。朝とか起きないとベッドから無理やり引きずりおろされるんだから!」
どうやらイングリッドの家のメイドさんは、けっこう厳しい人らしい。それはたぶん、彼女がグータラなのが原因な気がする。
「俺んちも似たようなもんだぜ。勉強しろしろうるせえんだ」
アルベルトの家では、メイドさんがお母さんの代わりをしてる印象だ。両親ともに多忙だそうで、いろいろと細かなところまで面倒を見てくれているらしい。時々勉強も教わっているそうだ。
「うちは・・・逆におっちょこちょいなやつがいる」
次に口を開いたのは、エドワードだ。さっきまで全然会話に入ってこなかったから、この話に興味ないのかなと思ってけど、その心配はいらなかったな。
「今日も、バケツをひっくり返してな。片づけるのが大変だった」
ん?片づけるのが大変ってことは、もしかして・・・
「一緒に片づけてあげたんですか?」
私は聞いた。
「そ、その方が早いからなっ!それ以上の意味はないぞ!」
ちょっと赤くなっている。こういう優しいとこあるんだよな。まあ、全然オルガに対して、そのいい感じの一面を見せてくれたことなかったけどね~。
「お優しいんですね~」
私は、照れているエドワードの背中を軽く叩いた・・・・・・つもりだったんだけど、人の背中を叩くのに、筋肉痛だと力の調整が上手くいかなかったので、つい、強い力になってしまった。
そう、これは筋肉痛のせいなのである。わざとではないぞ。
「う!ちょっと待て・・ぐおっ!」
もう、照れ屋なんだから~。
「や、やりすぎよ!」
オルガがとめに来た。真っ先にとめに来るあたり、やっぱりオルガってエドワードの婚約者なんだなあと、しみじみと感じる。
「どうもすみません。昨日の特訓のせいで力の調整が上手くいかなくて・・・」
「な、なんだそうだったの・・・」
オルガは素直に信じてくれたようだ。
「まあ、それなら仕方ないか・・・今度から気をつけろよ」
と、痛そうに背中をさすりながらエドワードは許してくれた。
よし、なんとか乗り切れたぜ。
みんなの家のメイドさんについて、ちょっとだけ分かったけど、大事な観点についての話し合いが十分、行われていない!
それは、どんなメイドさんにグッとくるのか、である。
さあ、次の議題をはじめよう!




