メイド談義、はじまる
かくかくしかじか・・・・。
私は、みんなに昨日の出来事について詳しく話しをした。
マルゲリータさんという人がいること、そして、すごい過酷なトレーニングをしたこと。
・・・・・・三途の川を何度か見たことは、心配をかけそうなので黙っておく。
「へえ~特訓?すごいじゃん。漫画みたい。やっぱ必殺技とかあんの!?」
イングリッドは、早速食いついてくる。こういう内容の話は、大好物らしい。
「必殺技は・・・私の知る限りないですね」
そう答えると、
「え~そうなの?つまんない」
残念そうにしている。どうやらイングリッドは必殺技とかそういう話が大好きらしい。
でも、マルゲリータさんだったら、必殺技の一つや二つあってもおかしくない。私が知らないだけで、もしかしたら、すでに持っているかもしれん。
「へ~そんなメイドさんがいるんだね。すごいなあ」
ギュスターヴも感心している様子だ。珍しくちょっと驚いている。
「へ?ギュスターヴって、そういうメイドさん雇ってないの?王子様なんでしょ」
イングリッドが言った。
私も勝手なイメージだけど、ギュスターヴの家は屈強なメイドとか、マッチョな執事とかゴロゴロいそうだなって思ってた。
「いや~ぼくの家にそんなすごいメイドさんはいないな・・・。もちろん護衛してくれる人はいるけどね」
サラッと護衛がいることを教えてくれた。それはそれですごい気はする。でも、王子様であるギュスターヴから見ても、マルゲリータさんは、かなりレアなタイプのメイドらしい。
まあ、一般的なメイド像からはかけ離れすぎているので、珍しい存在ではあるんだろう。
アルジェリー家ってもしかして、すごい家?この国の王子様でも雇えない(雇わない?)ような、変わった人がメイド長やってるんだもんな。誇っていいかもしれない。
「なんか変わってんな、お前らの家」
と、アルベルトは薄い反応。あんまり興味なさそうな感じかな?
同じガタイがいい人同士、気が合うかな~とか思ったりしたけど・・・・・なんか意外だ。
「アルベルト様は、マルゲリータ様にお会いになりたくはありませんか?」
話を振ってみる。
「そうそう!私もそう思った。なんか話聞いてると似たタイプじゃないの?」
イングリッドも私と同じことを考えていたみたいだ。
「いや・・・てか、普通に怖えだろ。そんなやつ」
あ、なるほど。私の経験したハードなトレーニング内容を聞いて、マルゲリータさんのヤバさに引いているらしい。
考えてみれば、そのリアクションが自然なのかもしれない。
いきなり『特訓だ!』て言って、大岩と追いかけっこさせるメイドとか、恐怖以外の何物でもないもんな、普通に考えて。
・・・そういえば、私ってよく生きてるなあ。まあ、何度か死ぬギリギリのとこまで行ったけどね。そして現在、そのせいで筋肉痛で歩くだけで全身が痛いのである。
「同感だな。珍しく貴様と意見があった」
エドワードもアルベルトと同じ感想らしい。二人でうなずき合っている。
「あの~ちょっといいですか。メイドさんがいるのって、普通のことなんですか?」
私たちがのんびりと会話していると、アリスがその根本的なところに疑問を投げかけた。平民出の彼女だからこそ出てきた、素朴な疑問である。
貴族としてはメイドは、いて当たり前の存在。そんなの聞くまでもないことって感じ。でも、みんながみんなそうじゃないのである。
「あ、そうか!アリスの家にはいないもんね!あちゃ~ごめんごめん」
イングリッドはすぐに、アリスの言葉の意味を察した。他のみんなは、なにを言っているのか理解するのに時間がかかっていて、頭にクエスチョンマークを浮かべているけど、さすがアリスの親友である。すぐに気がついた。
昔からずっと貴族の家というわけじゃなくて、比較的新興の貴族なので、そこらへんはやっぱりアリスと感覚が近いんだろうな。
「そうか・・・君は平民の出身だったね。それなら馴染みがないかもしれない・・・申し訳ない。ぼくたちだけで話を進めてしまって」
ギュスターヴは、申し訳なさそうに謝る。
「うわ!マジか。すまねえ、突っ走って話しちまった」
とアルベルトも軽く頭を下げた。すぐ謝れるとは、なかなか偉いなあ。
私のみんなへの評価があがった。
「それくらい常識よ!知らないのが悪いわ」
え~こんな感じで、我がご主人は通常運転であります。やっぱり謝りません。
「ふん、勉強が足りないな。まだまだだぞ」
もう一人、素直に謝れない人がいた。それはだれか・・・もちろんオルガの婚約者、エドワードである!
この二人のブレなさには、逆に尊敬の念が生まれてきそう。
「え~オルガ様が言いたいのは、メイドがいない家がいるのは常識だ!それを知らなかった私が悪いと、自分を責めているのです」
ここは、一応フォローを入れておこう。
そうしないと、『あ~あ、やっぱりオルガは謝れない、器の小さな人なんだな~』と、そういうイメージが広まってしまう危険がある。
「全然、そんな風に聞こえなかったけど!?」
イングリッドは、オルガを冷たい目で見ながら、ツッコむ。
「そこが、オルガ様の奥ゆかしさです。あえて、謝ってない感じで謝るという、むしろ超高度な謝罪なのです」
私はなるべく冷静に堂々と言い切る。こういうのは自信なさそうに言わないのが大事である。
「・・・謝ってない感じで謝る・・・?それって謝ってる・・・のか・・・?ん?」
とまどっているようだ。
どうだ!これこそ、意味の分からない理屈で相手を煙に巻く作戦なのである。
「あ、えっと・・・謝らなくても大丈夫ですよ。私があんまり貴族の生活に詳しくなくて・・・。よかったらこの機会に、みなさんのお家にいるメイドさんについて、教えてください」
ちっとも悪くないアリスが気を使ってくれている。こういうところに、人柄のよさが出ているように感じるな。
どこかのだれかさん二人に、反省を促したいところではある。
「たしかに、あんまりそういうこと話したことないね。おもしろそうだ」
ギュスターヴは、身を乗り出して言った。乗り気である。
たしかにおもしろそう。お互いのことを知るきっかけになるかもしれないし、他の家のメイド事情とか、非常に気になる。
こうして私たちは、アリスの提案で、それぞれの家にいるメイドさんがどんな人なのか話をすることになった。




