結果オーライ(?)
「あなたが?」
オルガは鋭い目で、アリスをにらんだ。見本を見せている途中でとめられたんだから、オルガからするとおもしろくない。
でも、あのままほっといたら、ずっと無言のまま時間だけが過ぎていきそうだったので、アリスが中断させてくれたのは、正直ありがたい。
「だって、全然ロマンティックじゃないんですもん!私が、教えてあげますっ!」
アリスはぷく~と、ほっぺたを膨らませて思いっきり不満そうな顔。おっ!その顔いいよ!かわいい。
「この微妙な距離感のよさが分からないなんて・・・これだから素人は!」
ド素人であるオルガが反論する。まあ、ツッコみを入れているアリスも初心者なので、どっちもどっちなんだけど・・・。
と、そんな二人の言い合いを見ている、かくいう私もまた、デートマスターにはほど遠い身分・・・。よって、ここにいるだれ一人として、発言に説得力がないのである!
そんな私の心は知らずに、アリスは熱く語る。
「いいですか。まずは!こうやって隣に座って」
エドワードのすぐそばに座る。
「ま、待て!近いぞ貴様!」
初心なエドワードは、至近距離に女性が来ると、混乱してしまうのだ。
「それで、こうやって肩を組んだりとか」
ガッと彼の肩に手をかける。カップルのイチャイチャというより、力みすぎて、なんかエドワードが、アリスに、からまれているみたいになってる。
「お・・・俺の、肩に・・・手・・・手が」
「それで、時々こうやって、もたれかかったりとか」
「ぐわあ~~~!」
エドワードは、断末魔みたいな声をあげている。いかん、このままでは刺激が強すぎて、オーバーヒートしてしまう!
「はい、いったんストップしましょう」
「えっ!?なんでですか!」
「エドワード様は奥ゆかしい方なので、グイグイ来られるとショック死します」
ものすごい真っ赤になっているので、表現としてそんなに大げさじゃないかもしれない。このまま放っておくと気絶する可能性がある。
「わあっ!大丈夫ですかっ!?」
「へ、平気だ。全く問題ないぞ・・・」
ヘロヘロになっているエドワード。全然大丈夫ではなさそう。
「ふん・・・こんなことでデレデレして!」
オルガからの評価が地味に下がっている。
「大丈夫・・・だ・・・ぐふっ!」
とうとう耐え切れなくなって鼻から出血した。私は、素早くティッシュを差し出す。メイドとして、こういう場面では、テキパキと動いていかないとね。
「う・・・すまない・・・」
ティッシュを鼻に詰めて、上を向くエドワード。
・・・・・・黙っていると、そこそこイケているんだけど、さすがに今の姿はちょっと情けなさが勝っている。
「見苦しいところを見せたな・・・」
エドワードが、ポツリと話しはじめる。
「正直に言おう。俺は、デートの上級者なんかじゃない・・・」
「ですよね」
「な、なに!?バレていた・・・だと・・?」
いやむしろ、なんで今まで隠せていると思っていたんだ・・・。
「分かりますよ。なんかすごい動揺してましたし」
「貴様・・・心でも読めるのか?」
いや、全部顔に出てましたので、当人以外は全員気づいてましたよ、ええ。
「と言うことは、オルガ様も・・・もしかして・・・?」
アリスは、どうやら感づいてしまったようだ。この場所には、はじめからデートの初心者しかいないことを。
「アリス様、すみません。オルガ様は私に頼まれて、期待に応えようとしてくださったのです」
私は丁寧に頭を下げて、謝る。
「あ!いえいえ!エリーゼ様が謝ることなんてないですよ」
と、アリスが慌てて言う。
「そうよ!謝ることはないわ。私が勝手にやったことよ」
おおっ!メイドをかばう主人の姿・・・なんか素敵!
「オルガ様、今、メイドポイントが上昇しました」
私はグッと親指を立てる。
「なによ・・・その変なポイントは」
すぐにいつものツンとした表情に戻ってしまった。でも、今日はなんだか得した気分。オルガの主人としての振る舞いを見せてもらった気がして、うれしいぞ。
「え~と・・・ということは」
アリスが、私とオルガに言った。
「今までのは、なんだったんでしょう・・・」
シーンと沈黙が流れる・・・。
こういう時、やはり、私が空気を読まずにいかなきゃな。
「オルガ様とエドワード様の健気な、おそらくはじめてのデートです!」
「え!?」
オルガは目を丸くする。
「ぶほっ!」
エドワードの鼻からティッシュが吹っ飛んだ。
「お二人、デートはしたことありますか?」
これは、ちゃんと確認しておこう。
「な、ないわよ」
「そ、そうだ・・・そんなもの、あるわけないだろう」
よし、それなら今日は意味のある日だ。
「ということは、これは記念すべきことです。今日は、お二人の初デートの日なのですから!」
私は、大きな声で言う。
「ええっ!?そうなんですか!」
アリスが、ビックリしている。
周りの人が、私の声に気づいてヒソヒソと話をしている。『なにがあったの?』『貴族の方がはじめてのデートらしい』『まあまあ、それはそれは・・・』『初々しいねえ・・・どうだい。ぼくらも久しぶりに』『素敵ねえ』
「みなさん!拍手で、お祝いしましょう!」
私は、力強く拍手する。
「お、おめでとうございます!」
アリスもつられて、拍手。
そして、でかい声で私が話していたので、そこらへんを歩いている、なんの関係もない人も拍手してくれる。
「え・・・え・・ちょっと・・・」
「なななな、なんだこの状況は!」
オルガとエドワードは、慌てふためいている。
でも、実際にめでたいのはたしかだ。
たとえデートしている振りだったとしても、時間がわずかだったとしても、二人が並んで歩いて、花を眺めて、話ししていたのは、本当だもの。
私は、ニコリと笑ってオルガにピースサインをする。
オルガは不機嫌そうに目をそらした。
でも、その横顔は、ほんの少しうれしそうに見えた。
一方エドワードはと言うと・・・
「でででで、で・・・・デート・・はじ・はじ・・・初めての・・・」
という言葉を残して、後ろにパタンと倒れた。
・・・・・・気絶した。刺激的過ぎたみたいだ。
『ええっ!ちょっと、エドワード様!?』
アリスが、エドワードに駆け寄る。
「さて、エドワード様を介抱しましょう」
私が呼びかけて、三人でベンチに彼を寝かせてあげた。背が大きいので、すんごく大変だった。そんな苦労は露知らず、なんとも穏やかな顔で目をつむっている。
「なんなの、こいつは~!」
オルガがほほをつねる。じゃれ合う感じのほほえましいやつじゃなくて、ほっぺたをもぎとらんばかりの、殺しにいく勢いのつねりである。
「うぎゃああああああああ!」
ちょっと日が傾いてきた公園に、エドワードの悲鳴が響いた。
や~今日も平和だ。




