貴族のおデートは、会話少なめ、沈黙多めでお送りしております
白いアーチ型の入り口から、公園の園内へと入ってみると、花いっぱいの開けた空間が目に飛び込んできた。巨大な噴水が中央にあって、そばには大きなオレンジ色の花が植えられている。その噴水を囲むようにして、点々と小さな花壇がたくさん並んでいる。赤、黄色、青、紫などなど、カラフルだ。
あと、きっちり左右対称に刈り揃えられている生け垣がある。整備が行き届いているのだろう、とてもスッキリとしている。
なんかコンセプトとかあるんだろうなあ。自然と人間の調和的な・・・深遠なテーマが隠されているのかもしれない。
造園に詳しくないから、それを汲みとって『なるほど、その方向から来ましたか。やりますねえ』みたいな、気の利いたコメントはできないのだけど。
ゆっくり散歩すると癒されそうな、雰囲気のいい公園だ。休みの日だから人が多いんだけど、それでも、広いからゴミゴミした感じがしない。
さて、公園を眺めるのはこれくらいにして、私たちの少し前を歩いているオルガとエドワードの様子を、アリスと観察しよう。
二人のデートはどんな感じかな?なんか小粋な会話でもしてるのかしら?
「あ、花が・・・咲いているな」
エドワードが、そこら辺の花を指して、すごくつまらなそうに言った。
「ええ、そうね。咲いているわね」
オルガは、淡々と返事をしている。
「・・・・・」
「・・・・・」
あれ?・・・もう会話が終わった。早くない?もう少し頑張ってほしいんだけど・・・。
「二人とも、静かに見てますね・・・」
アリスは気を遣った言い回しをしてくれてるけど・・・私流に翻訳すると、要するに『会話が少ねえぞ。デートならもっと軽快に、いい感じの会話をせんかい!』と、そういうことだ。
「ええ、静かすぎるくらいですね。デートってこういうものなんですかね~?」
私は、前の二人に聞こえるように、大きめの声で言う。
「・・・!あ、あそこにベンチがあるぞ。座るか」
エドワードはなんとな~く気まずい雰囲気を打開すべく、次なる一手をしかける。ベンチでのんびりして、落ち着いて会話をしていくようだ。
「別にいいけれど・・・」
と、二人は花が見やすい位置に配置された大きめのベンチに腰かけた。私とアリスはちょっと離れた場所で花を眺めながら、時々様子を見ることにする。
「エリーゼ様・・・お二人ってやっぱり仲よくないんですか?」
アリスが、ちらっとエドワードとオルガの方に視線を向けて尋ねた。
「いえ、たぶん馬は合うと思いますよ」
「じゃあ、どうしてギクシャクしているんですか?」
「同族嫌悪ってやつかもしれません」
私の言葉に、アリスは大きくうなずく。
「あ、たしかに。なんとなく似ている気がします」
「素直になれないでツンケンしているところなんか、もう同一人物かってくらい似てますよね。さっさと仲良くしやがれって感じですよね」
「エリーゼ様って、時々口が悪くなりますよね」
と、アリスはちょっと楽しそうに言った。彼女的には、私の口の悪さは許容範囲らしい。
「やはりペットは飼い主に似るって言いますでしょう?」
「あの~ご自分をペットって・・・それは、なんとも謙虚というか、卑下しすぎというか・・・」
「ペットって・・・なんだか、ロマンのある響きですよね」
なんとも背徳的で、グッとくるものがあるよね。
「え・・・・?」
アリスが、すごい顔をしている。苦虫を噛み潰したようなって表現があるけれど、まさにそんな感じ。眉間に深いしわが寄ってるぞ。
まあ俗に言うドン引き状態である。
仲良くなるどころか、私への好感度が下がった気がするけど、そこんところはあまり考えないようにしていこう。ポジティブって大切!
「それでは気を取り直して、オルガ様たちのデートからいろいろと学んでいきましょう」
「そ、そうですねっ!そうしましょう」
アリスはパッと元の明るい表情に戻って、ふたたび、オルガたちに視線を向ける。
ポツポツと会話が聞こえてきた。
「あの花、なかなかきれいだな」
「そうかしら?別に普通じゃない・・・?」
「そうか・・・」
「ええ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ぜんっぜん盛りあがってない!さっきから今まで、交わされたのは『花がある』ってことと『きれいだ』と全部で二~三往復くらいしか会話してない。
・・・会話なのか?これ。
こちとら、アリスに私の癖をカミングアウトして、速攻でドン引かれるという超濃厚なコミュニケーションをしていたのに・・・・・・そっちはちっとも仲良くなってないじゃないか!私の赤裸々さを見習ってほしい。
ほら、なんか『この花言葉はね』とかそういうおしゃれなウンチクとか、こじゃれた話とか、ないのかしら?
「そういえば、この花はな・・・」
エドワードが口を開いた。おっ!いよいよ飛び出すか、なんか知的な話が・・・
「うちの庭にそっくりのものがあった」
うん・・・まあ・・・悪くはないぞ。
「へえ・・・うちの庭にも、たしかあったわ」
いいよ、話が続いてるよ。そのままいこう。
「そうか・・・」
「ええ、そう」
「・・・・・」
「・・・・・」
ぐわ~!話が続きそうだったのに、またしてもすぐ終わったぁ!
ほら!なんとでもなるでしょ。
『どんな庭なの?』『こういう風で~』『今度行ってみたいな』『ぜひいらっしゃい』みたいな、そんな、ほのぼのした感じのやりとりが聞きたい。
会話が途切れ、無言で噴水を眺めている二人を、アリスはジ~ッと見つめていた。腰に手を当てて、なにやら真剣なまなざしである。
「どうしました?」
私は、アリスに尋ねてみた。
すると、
「う~~~~。もう、我慢できません!」
アリスは、二人の前に飛び出すと、
「私が、デートとはなにかを教えてあげます!!」
胸をドンっと叩いて、鼻息荒く宣言した。
私は、予想外の出来事にワクワクしたんだけど、忘れちゃいけないのは、アリスもデートに関してはド素人だってことだ。
どうなるか。果たして、みんなの運命やいかに・・・。




