運命の時・・・
運命の日と言っても、そんなに過言じゃない、そんな時がやって来た。
・・・やって来てしまった。もう、泣いても笑っても今日この瞬間に、今後どうなるのか決まる。
テストの点数順に名前が書かれた紙が、掲示板に大きく張り出されている。
え~と自分の点数を確認する・・・・・・その前に、まずは上位の人を見ていきましょう。こうやって時間を無駄につぶして、現実から全力で目をそらしていこう。
どれどれ・・・・。
おおっ!オルガはさすが、いい点数だ!テストを受けているから、そのすごさがよく分かる。さすがオルガ。こうやっていい成績をとって、他の人にマウントをとるつもりなのかな?
『ふん、そんな点しかとれないの?』な~んて悪役令嬢ムーブを見せてくれるかもしれない。
そういう行動をするたびに、ひたひたとバッドエンドの足音が近づいてくるわけなので、もし、オルガがテストの点数でアリスにマウントをとろうとしたら、なんとかいい感じにフォローせねば・・・。
続いてギュスターヴを探してみよう。
あ、あった。オルガよりは点数が下だけど、かなり好成績だ。そこは、やはり王子様だな。抜かりない。
テストが終わった時、すごく余裕しゃくしゃくって感じだったもんな~。なんでもできるのが、うらやましい。
そして、主人公であるアリスはどうかというと・・・お?・・・おおっ!こちらは、さすがにオルガとギュスターヴにはかなわないけど、いい点数だ。しっかりと上位に食い込んでいる。
アリスは、小さな頃から英才教育を受けたり、家庭教師がいるとか、貴族たちが当然のように与えられている、勉強に有利な環境がないので、その分応援したくなる。
そんな風に、自分と関係ないクラスメイトの点数や、一位の人の点数を見て、そのすごさにビックリ驚いたりしていると、
「やっぱり、見るのやだよねえ」
と、イングリッドが後ろからギュッとしがみつきながら話しかけてきた。ちょっとトキメク。
「胸のあたりがキュッてする~」
「恋ですか?・・・いったいだれに・・・ハッもしや私に!?」
「違うよ!自分の点数が気になってるってこと!」
秒でフラれた・・・。照れたりしてくれるかな~とか思ったけど、そんなことは一切なかった。
「お前らもか・・・俺もだぜ。足がガクガクだ・・・」
アルベルトが、私とイングリッドの肩にポンッと手を置いてきた。幽霊みたいに生気のない顔をしている。
私たちはお互いに身を寄せて、なんとか緊張をほぐそうとした。
正直、三人とも立つのがやっとである。
「そこ・・・離れなさい。情けないから」
ふりむくと・・・オルガが、哀れなものを見るような目で、こっちに視線を送っていた。
「いえ、私たちにとって、今、ここはマイナス一〇〇度の極寒の地も同然。離れると凍死します」
「そうだそうだ~!もう!心が寒くて大変なんだぞ、こっちは」
「お、おう!みんなで暖をとってるだけだ!だから、なにもおかしくない!」
「は・な・れ・な・さ・いっ!!」
「ぐお~~~!離れるもんか~~!」
イングリッドが、オルガに強引に引きはがされそうになるが、私にしがみついて必死に抵抗している。・・・けっこう痛い。服が伸びそうだけど、しがみつかれていると、頼られてるみたいで、なんか気分がいい。
でも、ただ体をくっつけ合っていた時より、ずっと恥ずかしいことになっていると思うのは、私だけだろうか・・・。
みんなの視線が集まっている。
「イングリッドちゃんをいじめないでくださいっ!」
と、タイミングの悪いことに、このワチャワチャをアリスに見られた。どうやらオルガがイングリッドに、いじわるしていると思われたようだ。
こっちへ走って来て、イングリッドからオルガを引き離そうとする。
まず、私にしがみついているイングリッドを、オルガがはがそうとしている。そんで、アリスが後ろからオルガの体をつかんで、イングリッドから引き離そうとしている。
なんとも奇妙な状況になっている。
「おい。貴様ら、ちゃんと点数は見たのか?」
気がつかないうちにエドワードが、近くに来ていた。冷ややかな目で、私たちを見つめながら言った。
ピタリとみんなの動きがとまった。
・・・・・そうだ!当初の目的をやっと思い出した。
「そうだよっ!点数っ!」
みんな(とは言っても私とイングリッドとアルベルトの三人)は、食い入るように掲示板を見つめた。
「下から数えたほうが早いですよね」
私が言うと、
「分かってるけど、一応上から見させてくれねえか・・・」
悲しそうにアルベルトがこぼした。
「無理無理、希望は捨てな~アルベルト~。私たちが、上から見た方が早くなるなんて、夢のまた夢だよ~」
イングリッドの無慈悲な言葉が響く。アルベルトは肩を落として、ため息をついた。
そして、みんなで下から名前を探す。順番で名前が並んでいる紙の、ある地点に赤い線が引かれていて、そこから下が赤点。それより上であれば、とりあえずクリア。
え~と、私の名前は~と・・・。
あ・・・あった!私の名前!。エリーゼとだけ書いてある。名字がないのが、なんかシュールだ。他の人にはみんなあるのに、私だけない。その分、見つけるのがすごい簡単だった。名前の欄の空白が、私だけ大きすぎる。
赤点のラインを示している赤線よりは、ずっと上。余裕のクリアであった。
心の中でガッツポーズ。
表には出さない・・・それが、メイドとしての矜持
・・・・・というわけじゃなく、赤点の回避ということでガッツポーズなんてしていいのかな~と、迷いに迷って、結局やめた。
「うおおおおおお!よっしゃあああ!よし!よし!よし!」
アルベルトは、私の横でガッツポーズしまくりながら、咆哮していた。
すごいうるさい。体が大きいから、みんなの注目の的になっている。
みんな、その勢いにちょっと引いている。
そして、残ったイングリッドはというと・・・?
「イエェェス!オウケーイ!オーライ!フー!」
急にアメリカンなノリの人になっていた。小躍りしながら、すれ違う人とハイタッチしまくっている。ハイタッチを求められている人は、わけが分からなくて、すごい困惑していた。
ひとまず、われわれの首は、なんとか繋がった。切腹は免れたぞ!よかったぁ~。
「こっち来て!」
イングリッドが、私たちを呼びよせて、私とアルベルトと円陣を組む。
そして、
「やった~~~!」
と思いっきり叫んだ。
すっきり爽快だったけど、後で先生にこっぴどく怒られた。




