アルジェリー家へようこそ
「こちらです。どうぞ~」
私はバスガイドみたいに、みんなを引率して、アルジェリー家(オルガの家)へと案内する。その大きさに、アリスは『はえ~』と口をあんぐりしている。
「こちら、玄関でございまして、こちらの靴が、オルガ様のものです」
「ちょ、ちょっとそんなもの紹介しなくていいわよ」
「いえ、ここはオルガ様のセンスを見せてつけて、ビビらせましょう」
「靴でだれがビビるのよ!」
私はそのまま案内を続ける。
「まずは、オルガ様の寝室から見ていただきまして~」
「ななな、なに言ってるの!?」
「え?やはり親交を深めるには、全てさらけ出しませんと……」
「するわけないでしょ!」
「ちなみにスリーサイズは・・・」
「あなた、殺されたいの~!」
口をぎゅ~とつままれた。
「ひはひへふ」
「痛くしてるのよ!」
「え~!いいじゃん。見せてこう!私が記事にしてあげる!」
イングリッドは、オルガの肩を強くつかんだ。乗り気である。さすが情報通だ、面構えが違う。
「と、とにかく。私の寝室へは入室は許可しないわ」
「え~!?ダメなの~!?」
「いいじゃねえかよ~!」
アルベルトもブーブー言ってる。こやつも、大きく分ければイングリッドと同ジャンルの人らしい。
「お、おだまり!」
ピシャリと言った。
「そうですよ、女の子の寝室に行くなんて、いけません!」
おおっ!アリスがオルガの味方をしてくれた!
「アリス様が・・・オルガ様をかばってらっしゃる・・・」
ちょっと泣いた。
「なんで泣いてるの!?あなた!」
オルガが動揺していた。
「え、えええ!私、なんか言っちゃいましたか!?」
アリスも、おろおろとしている。
「あなた、エリーゼになんか変なことしたんじゃ・・・」
「してませんよ!」
お、私が涙したので、二人がケンカをはじめそうになってる。
「いえいえ。アリス様とオルガ様との間に、交流が生まれたことが、うれしくて・・・」
ティッシュでチーンと鼻をかみながら、私は事情を説明。
「は?なんだ、そんなことで・・・」
「なあんだ。ビックリしちゃいましたよ」
オルガもアリスも、ホッとして胸をなでおろしている様子だ。
「ご心配かけました」
「いえいえ」
アリスから、笑顔がこぼれる。あ、かわいい~。
「な~んだ、行かねえのか・・・」
あ、一人だけつまらなそうなリアクションをしたのは、アルベルトだ。
「あ、な、た、ねえ~!」
すごい形相で、腕をボキボキ鳴らしながら床を踏み鳴らして、アルベルトを威圧していく。
「そこまでそこまで!」
こういう時、抜群の危機察知能力を発揮して、二人の間に入ってくるギュスターヴ。いや~君がいてよかったよ、うん。
「アルベルト!女性の寝室を見たいだなんて、誤解されるから気をつけなよ」
「あん?なんでだ?」
アルベルトは、悪びれずに言った。
「そこから説明しないといけないのか・・・・」
ギュスターヴは頭を抱えていた。
どうやら、アルベルトは、なんで呆れられているのかを、よく分かっていないみたい。ゲーム中でも、そのデリカシーのなさは遺憾なく発揮されるわけなんだが、こんなにすぐに見せてくれるとは思わなかった。
将来有望だな!
・・・・・・まあ、皮肉なんだけどさ。
「立派なおうちですね~」
「でっかい、でっかいぞ~」
ギュスターヴが、アルベルトにじっくり腰をすえてお説教しているのを完全スルーしているのは、アリスとイングリッドの二人。
イングリッドなんて、羽みたいに両腕を広げて、この家の大きさを全身で感じながら小走りしている。
・・・・・あれ?どっかで見たことある。この光景・・・・
キャンプの時、私とイングリッドたちでやってたことじゃん。手を広げて、楽しく山を走り回っておりました、ええ。先頭を切ってたのは私だったよ。
私もやろっと。
イングリッドと一緒に走る。
「なにやってるの・・・あなたたち」
オルガに呆れられているけど、なんか楽しいので、これはやめられない。
賑やかに遊んでいる私たちをエドワードは腕を組んだまま見ていた。
「ここへ来るのも、ひさしぶりだな・・・」
なんか、つぶやいている。婚約者だから、何度か来たことはあるんだろう。これからもっと来てくれるようになれば、うれしい。
「懐かしいですか?」
話しかけてみた。
「え?ああ、まあな・・・」
ちょっと恥ずかしそうだ。でも、気まずそうにはしていないから、オルガの家に嫌な思い出はないんだろう。
「よろしければ、これから気軽においでください。オルガ様の婚約者なのですから」
「婚約者か……」
エドワードは、ふざけているイングリッドを追いかけ回すオルガを見た。無表情だったけど、なんか、ほんの少し笑ったように見えた。
「かわいいでしょう?うちのご主人様は」
「か、かわいいだと!?今、鬼みたいな顔してるぞ」
たしかに、今はすごい形相である。
「そこをかわいいと思えるかが、上級者になれるかどうかを分けるのです」
「上級者?ふん、なんだそれは。貴様、やっぱり変わっているな」
また、ちょっと笑った。
「お、笑いましたね」
「ち、違う。これは・・・え~と・・・そ、そうだ!苦笑いだ。呆れているだけだ!」
「へ~。ほ~。ふ~ん」
私はジ~とエドワードの顔を見つめる。
「な、なんだ・・・?なにか文句でも、あるのか?」
「いえ、別に。とりあえず、そういうことにしておきましょう。ほら、そろそろ行きますよ。みんな待ってますから」
「『そういうことにしておきましょう』とはなんだ。だいたい貴様は、いつも生意気なん・・・・・・あ、こら待て!置いていくな」
ブツブツと文句を言っている人はほっといて、奥の部屋に向かってサッサと歩き出す。エドワードは慌てて、後ろをついて来た。
広いリビングに到着すると、みんなは教科書やノートを早々と出して、バッチリと準備万端で待っていた。




