アリスの相手候補その二、襲来!
「なにやってんだ?ハーレムか?」
目を細めて、ジロ~と私たちを見てくる。なんか、見方に若干デリカシーがない気がする。
『ハーレムぅ?そういうゲームじゃないんだ!一人と添い遂げるのがいいんだよ!』とツッコみたくなるけど、『なに言ってんだ?』とポカーンとされるに決まってるので、やめとく。
アルベルトは、ギュスターヴの友だちで、アリスの相手候補の一人。
口調は乱暴だけど、根は優しくて運動神経抜群。憎めないんだけど、悪気なく無神経な発言をして場を凍らせることがあるので、そこは要注意だぞっ!
黒くて短い髪と、ガッチリとした体格。背は、たぶん登場キャラでもかなり高いほう。制服のボタンは空きまくってる。『あれ?ここって本当に貴族の学園だっけ?』て疑いたくなるくらい、着崩しまくってる。
勉強はめちゃくちゃ苦手である。スポーツ推薦で入学したので、体育の成績はいいんだけど、それ以外は壊滅的。
なので、アルベルトのシナリオだと、勉強とスポーツの両立をどうするかが重要なテーマになってたりする。赤点を取ったら大会に出られないのでピンチ!みたいな。
改めて思い出した。テスト前(つまり、まさに今)アリスとアルベルトは、一緒に勉強するイベントがある。もしかしたら、本来起きるはずのイベントを私の勉強会で上書きしちゃったかも。
彼を誘わないのは、マズいな。アルベルトは、アリスと勉強することで赤点を回避するんだけど、もし私たちがアリスを勉強会に連れて行ったら、アルベルトとの勉強はなくなるわけで・・・、
たぶん彼は赤点。それは非常にヤバい。このゲームに出てくるアリスの相手候補は全員が最重要キャラなので、絶対によくない。
ということで、彼も誘うぞ。いや、むしろぶん殴ってでも連れて行く!
「いえ、残念ながら、勉強会へのお誘いです」
「おえ~・・・べ、勉強だと・・・!?」
すでに、ものすごい嫌そうなオーラをバリバリに出している。嫌いなんだろうな、勉強。
なんか、言いながら吐きそうになってたし。
「君、今度のテスト自信ないって言ってたじゃない?」
ギュスターヴは、ニコニコしながらアルベルトに話しかける。
「ば、バカ!他のやつの前で言うな!」
ブンブン手を振って焦っていた。顔が真っ赤になってる。
「そうなのですね」
私が言うと、
「な、なんだテメエ!どうせ俺は勉強は得意じゃねえよ!悪いか!」
開き直りはじめた。
「いえ!その気持ち、とてもよく分かります」
ガシッと、アルベルトの手を力強く握った。
「わ、な、なんだよいきなり!」
女子に触れられるのは慣れてないので、めちゃ動揺している。
「これは、同志を見つけた喜びの握手です」
「同志?なんだよ、それは」
「実は、なにを隠そう私も、大ピンチでして・・・」
「マジか?お前もヤベえのか?」
アルベルトは顔を上げた。
「ええ、もちろん。大ヤバです」
「へ、へえ~そうかあ、そうなのかあ、なるほどな~」
仲間を見つけて、すごいうれしそうにしている。
お~い、出てるぞ笑いが。あんまり露骨にうれしそうにはしない方がいいと思う。
「で、勉強しようってわけか?」
前のめりになって、らんらんとした目をしている。
「そうです。いいアイディアだと思いません?」
「た、たしかに・・・」
「もしよければ、あなたも参加しませんか?」
「マジで!?・・・こりゃ渡りに魚・・・・・じゃねえや。なんだっけ?なんかことわざで、ほら、あんだろ!」
「『渡りに船』だよ。アルベルト」
ギュスターヴが教えてあげた。
「そんくらい知ってらい!うっかりだ!わざとだ!」
「どっちなの?」
楽しそうにギュスターヴは笑った。
「うるせえ!!いいだろ、伝わりゃ!」
ムキになっている様子は、なかなかチャーミングではある。
「なあ、その勉強会に行けば、俺も赤点回避できるか?」
「もちろん、ばっちりです」
「ほんとか?俺、けっこうヤバいんだよ。先生が、なに言ってんのか分かんねえんだ」
おうっ・・・なかなか重症なようで・・・。でも本当に分んない時って、そういうもんだよな。
「だれも拒まないのが、わがオルガ勉強会のモットーです」
「うおお、ありがてえ」
私とアルベルトは、がっちりと握手した。なんか、共鳴している感じがする。
「ほかに参加したい人はいるかな~?」
ギュスターヴが、チラッとエドワードを見る。
彼は無言で教科書を読んでいた。でも上下が逆さである。こっちの話を、本を読んでいる振りして聞き耳を立てている。
「エドワード様みたいな勉強ができて、教え上手な素晴らしい人が参加してくださると、うれしいんですけどね」
私が、ワザとらしく大声で言う。
すぐに察したアリスとギュスターヴが、息を合わせて続ける。
「そうだよね~~!でも、無理だよ~~~そんな人が来てくれるわけないよ~~~~!」
イングリッドも、ハッとした顔をした後、こちらに親指を立てて、言った。
「そうそう!いないかな~~!だれか、勉強できる人~~~~~?」
オルガは、みんなの下手クソなお芝居を、冷た~い目で見ている。
私は手で合図してオルガにも参加を促す。
「は!?なんで私が」
「オルガ様の婚約者ですので、ご協力願います。その魅力で、エドワード様をイチコロにしてください」
「そ、そう?私の魅力で?い、イチコロに?・・・・・し、仕方ないわね・・・」
しぶしぶながら、オルガは引き受けてくれた。
「あと一人くらいなら、私は参加させてあげるけれど、だれかいないのかしらね~?」
オルガは、声を張りあげる。不器用だけど、頑張ってくれている。
よし、これで仕上げだ。
最後にみんなで一斉に、
「あ~あ!だれか、いないかな~~~?」
ちょっとみんなに白い目で見られている気がしないでもないけど
・・・・・そんなのはいい!
「ご、ゴホン・・・・・・ん?なんだ?勉強会のメンバーが足りてないのか?・・・あ~、ちょうど週末は予定がないから、俺が教えてやらなくもないが・・・まあ、暇だからな、ちょうど暇だったから特別行ってやらないこともないと、そういうことであってな・・・本来ならこんなことに俺が参加することなどありえないわけであって・・・(以下略)」
なんかゴニョゴニョ言いながらエドワードがこっちに来た。要するに『勉強会に行きたい』と、そんだけだ。
「ようこそ!」
みんなで、歓迎のあいさつをする。
こうして、特に紆余曲折も困難もなく、勉強会の参加者は、無事に集まったのだった。




