続行不可能!?思わぬピンチ!
お泊り会を開催するチャンスは、意外に早くやって来た。
実は・・・・・来週に入学して初めてのテストがある。
お泊り会と小テストのどこに関係があるのかと、そう思いがちだけど、これが関係大あり。
しかも非常に重大なミッションなのだ!
われらの学園、『聖バレンティア学園』は、第3王子であるギュスターヴが入学していることから分かるように、貴族でも、かなり上のクラスの子息や令嬢(アリスだけ例外で、平民)が通っている。この国でもトップレベルの、とっても優秀な学校なのである。
しかもここは、勉強だけをバリバリやっているわけではない。
適度にゆるくて自由な校風で、スポーツや文科系の部活動なんかも盛んな、文武両道のすごいとこなのである。
この前行ったキャンプみたいに、楽しいイベントも盛りだくさんなんだけど、ちゃんとするところは、ちゃんとしてるって感じ。
とまあ、『聖バレンティア学園』はとても名門で優秀なのだが・・・・・その優秀ってのがくせ者なんだよな。
私の頭脳は、元の私のまま・・・・・つまり、そこら辺にいる普通の高校生と同じ。教科書を見れば、なぜかすべての答えが見える!みたいなチート能力は当たり前だけど、ない。
・・・・だって公式ページのキャラクター説明文が『オルガに仕えるメイド。彼女と一緒に学園に通っている』の一文だけだもんね。勉強ができるとか、そんな隠し設定とかあるわきゃない。
勉強は、そこそこ人並みにはやってきたつもりだけど、この学園は、そんな今までのささやか~な努力なんて、小指の先でピーンと弾き飛ばしてしまうくらいに、大きな壁として立ちはだかってきている。
まあ、ごちゃごちゃ言ったけど要するに一言で簡潔に言えば・・・
ヤバい。
授業のレベルとか高いし、みんな当たり前のように予習復習してくる。私は、つい今までの感覚の延長で、軽くやってればいいかな~なんて思ってたら、いきなりつまずいた。
テストで赤点とか、十分あり得る。
赤点を取る・・・そうすると留年の可能性が出てくる。すると留年、留年からの退学も視野に・・・。考えたくないワードが次々浮かんでくる。
退学なんてなったら、まずオルガと一緒の学園生活はなくなる。それだけならまだしも、
『そんなメイド、私の家にはふさわしくないわ!即刻クビよ!』
『そんなぁ~!』
という展開も想像できる。てか、たぶんそうなる。
そうしたら、私は野生のメイドになって、路頭に迷って悲惨な結末に・・・・。
オルガを幸せにするどころか、オルガのバッドエンドの前に、私がバッドエンドを迎えてしまう。
対策を考えなきゃ。
自分一人で頑張る?そもそも、勉強の仕方が分からなくて困っているので、あんまりこれはよくない気がする。それに、一人だとなまけたりしちゃいそう。
やっぱり、他の人に教えてもらうのが安全だ。
ということで思いついたのが、『勉強会』。みんなでだれかの家に集まって勉強しようって寸法だ。
楽しくできそうだし、サボったりしにくくなる。もちろん、なまけ者を誘ってしまうと、みんながそっちに引っ張られて、全滅!みたいなことも起こるけど、この学園にはそんな人は希少種だと思うので、ひとまず大丈夫だろう。
そして、ここが重要。合宿にすれば、またキャンプの時みたいに、みんなで雑魚寝できる!
これは、われながら、いいアイディアなのでは?
よし、オルガに勉強会を開くことを提案しよう。
「嫌よ」
バッサリ断られた。
私は、そんな一言であきらめるような生活習慣は送ってないので、食い下がる。
「今度、テストがありますよね」
「ええ、それがどうしたの?」
なにを言ってるんだって顔をしている。
あ~なるほど。オルガは勉強できるから、テストは日常のなんてことないイベントなんだ。勉強会と言われても、ピンとこないわけだ。
「ただいま私は、赤点への道を絶賛バクシン中です」
「は?それはどういう意味?」
「要するに、ヤバいということです」
「・・・冗談でしょ?」
オルガは驚愕している。
「いえ、冗談ではありません。そんなこと言っている顔に見えますか」
私は、オルガにぐいっと顔を近づける。
・・・あ、いい匂い。
「あなたは、いつも真顔でふざけたことを言うから、普通に冗談の顔に見えるけど」
「本当です。もっと砕けた言い方で言うと、マジです」
「もしかして、勉強会はそのため?」
「そうです。開催しなければ、運がよくて留年してオルガ様の後輩、最悪の場合、野生のメイドになります」
「聞いたことないわよ!なに!?野生のメイドって!?」
「あらゆるしがらみから解放され、自由になったメイドのことです」
私は野山を駆け回るメイドの姿を想像してみた。
あれ?これはこれで、ワイルドだし、なんか気持ちよさそうだし、いいかも。
「そういう生活も悪くないかも」
遠い目をする私。
「ちょ、ちょっと!なに野生のメイドになろうとしてるのよ!」
「山を駆け回り、自然と共に暮らす・・・」
「現実に戻ってきなさい!勉強会!開くからっ!」
私の目の前でオルガは、パンパンと手を叩いた。
ハッとわれに返る。
「あ、オルガ様、お久しぶりです。元気ですか?」
無事、現実世界へと帰還。
ため息をつきつつ、オルガは、
「はいはい、元気よ。まったく。あやうく、うちの家から野生のメイドを出すところだったわ」
「なんとか、戻ってまいりました」
「それで?勉強会は、どうするつもり?」
「やはり、合宿がよいかと」
泊りじゃないと、みんなで一緒に寝れないもんね。これは外せないでしょ。
「泊りって・・・私の家で?」
「もちろんです。私、枕が変わると寝られないので」
「キャンプの時、熟睡してたじゃないの!」
「それに、勉強会を開催する側が、他の人の家に泊まらせろ!とか言うのはマズいのでは・・・?」
「う!・・・た、たしかに・・・」
オルガも納得せざるを得ないようだ。
「泊りじゃなくても別にいいんじゃなくて?面倒だし、放課後にやればいいでしょう?」
私は、チッチッチと指をオルガの顔の前で振る。
「甘いですね。私のやる気のなさを、なめないでください」
「そんなことを自信満々に言わないで欲しいわ・・・」
呆れられた。
「やはり、短期集中でやるのがいいかと、あと、一緒に寝る、これこそが大事です」
私は早口でまくし立てる。ここは、勢いでいくしかない!
「はあ・・・どうせ一度言ったら聞かないんでしょ?」
「ご理解早くて助かります」
「仕方ないわね・・・」
オルガはしぶしぶ了承してくれた。
「と言うわけで、早速、メンバー集めにいってまいります」
私は教室をきょろきょろ見まわす。だれを誘おうかなと考えていると、早速、誘うにふさわしい人が、現れた。




