頑張れ!ギュスターヴ!
目が覚めたので、1人でテントの外へと出てみた。昨日は枕投げで、非常に充実した夜だったので、ぐっすり眠れたぞ。
朝の山って気持ちいいなあ。ヤッホーとか言いたくなる。近くの泉で顔も洗ったし、すっきり爽快だ。
でも、ちょっと寒いな。たき火は、もう燃え尽きて灰になっちゃってる。
みんなも起きだしてきたので、そこら辺に落ちている木の枝を拾って、火を起こして朝ごはんを作る。
作るといっても、ウィンナーとかをそのまま焼いてしまう。たき火であぶると、おいしさが倍増するような気がする。
そして、昨日作ったカレーもあたためて食べる。残しちゃうと持って帰るのが面倒だから、ここで食べきってしまおう。
意外と量があって、みんな満腹になり、大満足だ。そして、食後に残っていたマシュマロをあぶって食べる。
目玉焼きとか欲しいかったけど、いくらなんでも卵はだれも持って来てなかった。
割れたら大惨事だもんな。
遅めの朝食をのんびりと食べ終えて、みんなで帰り道を歩いていく。たった1泊だけど、なんだか名残惜しい気がする。
それは、このキャンプがすごく楽しかったからだろうな。たぶん、どうでもいい相手とだったら、つまんなくて、すぐ帰りたくなったに違いない。
道は、夜の間に雨が降ったらしくて、ぬかるんでいた。滑りやすそうなので、気をつけないと。
「オルガ様、足元お気をつけて」
メイドらしく、しっかりとご主人に声をかける。今、私ってすごくメイドっぽいことしている気がする。ご主人の安全を守るために、言葉をかけながら歩く・・・なんか、有能っぽさがある。
「そんなこと分かっているわよ・・・・って、きゃっ!」
早速バランスを崩した。なんてフラグ回収が早い人なんだ。
「おっとっと・・・ほら注意しませんと」
ガシッとつかんでオルガを支える。
「わ、わかってるわよ」
恥ずかしそうにオルガは姿勢を正して、今度はしっかりと地面を確認しながら歩いていく。
よしよし。慎重になってくれたみたい。
山は、普段の舗装された道とは違って、でこぼこしてるし、油断すると危ないかもしれないな。
「わ、わわ~~~~~~~!」
と、そんなことを思っていると、盛大に滑っている人を発見。
・・・・・アリスである。
滑ると言うか・・・すごい勢いで滑り落ちていっている。
これって危ないのでは?みんなも突然のことにビックリして、その場に立ち尽くしている。
・・・・・・あ!思い出した!
これは、アリスと相手候補との好感度上昇イベント!
足を踏み外して、アリスは崖から落ちそうになるんだけど、そこで登場するのが、その時点で好感度の一番高いキャラクター。
颯爽とアリスを助けて、二人は前より少し親密になるのである!
そして、今ここにいる相手候補といえば・・・・・・、
・・・・・・もちろん、ギュスターヴ!
エドワードはオルガの婚約者なので、攻略対象ではないぞ。
よし、ぜひこのイベントは成功させていきたい。というか、失敗したら確かケガしてしまうので、それはかわいそうだ。
「ギュスターヴ様」
どうすればいいかと困った様子でいるギュスターヴの肩に手を置いた。
「それでは!張り切ってどうぞ~!」
私は、彼の背中をドンッと押した。
いってらっしゃい。
「え!?ちょ、うわわあ~~~~~~~~!」
ギュスターヴは、すごいスピードで足を動かして、転ばないように踏ん張りつつ、急な下り坂を駆け下りて行った。
いやあ、さすが王子様だ。こんな斜面を躊躇しないで走って下りていくなんて、とても勇気がある。
「ふぁいと~~」
私は、手を振って応援する。
「なんて力の抜けた応援なんだあ~~~~!」
叫びながら、勢いよくアリスを追いかけていく。正直、めちゃ変な走り方だけど、この際、形はどうでもいい。頑張れ~!
「ア、ア、ア、ア、ア、アリス~~~!待ってて~~~!」
「ええっ!?ギュスターヴ様ぁ!?」
アリスはビックリしていた。
ドタドタと不格好に足を動かしながら、アリスの真横までギュスターヴはなんとかたどり着いた。
手を伸ばして、アリスの身体をひょいと抱えると、
「ふぬぬぬぬぬ!」
ギュスターヴは、ゆっくりゆっくり登ってくる。けっこう急な斜面だけど、一歩一歩踏みしめ踏みしめ、ものすごい形相をしながら、気合と根性で私たちのところまで戻ってきた。
アリスを地面にそっと下すと、
「はあ・・・はあ・・・よかっ・・た・・・」
倒れこんだ。
みんなは、思わず拍手。お~よかったよかった。すごい!
「大変でしたね」
私は、二人にねぎらいの言葉をかける。ギュスターヴは、なかなかすごかった。アリスを運んでいる時の顔は、なんか夢に出てきそうなくらい怖かったけど。
「は、はい。死ぬかと思いましたあ~」
アリスは、その場にへたり込んだ。
「ぼくも死ぬかと・・・というか、いきなり押すなんてひどくないかい?」
ギュスターヴは、不満げな顔で私に言った。
「いえいえ。ギュスターヴ様の活躍の機会を、軽やかに演出したまでです」
「結果的ね!?それ、結果的だからね!?」
温厚なギュスターヴがプリプリしているの、なんか新鮮~。
「あ、あの・・・」
アリスが遠慮がちに口を開いた。
「ありがとうございましたっ!」
ぺこりと丁寧に頭を下げる。
「いえ、当たり前のことをしたまでです。お礼はいりませんよ。ええ、いりませんとも」
私が、にこやかに答えた。
「ちょちょ、助けたの、ぼくなんだけど!?」
「すみません、つい性癖で・・・」
「どんな性癖!?」
私とギュスターヴのやりとりを、アリスは『あはは・・・』と苦笑しながら見ている。もしかして、ちょっと呆れてる?
そんなアリスの様子に気づいたギュスターヴは慌てて姿勢を正すと、アリスの方を向いて言った。
「と、とにかく、無事でよかったよ」
「本当にありがとうございます」
アリスが丁寧にお礼を言って、また頭を下げた。律儀な子だ。
お礼を言われて、顔をポリポリ掻いて、ギュスターヴは照れた。
なんだか、二人ともいい雰囲気かも。
これならイベントは、上手くいったと言えそうだ。ケガもなかったみたいだし、よかったよかった。
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
二人が落ち着いたところで、少しみんなで休憩をとって、今度はしっかり足元に注意しつつ、帰り道を歩いて行った。
最後の最後で、ちょっと危ないことも起こったけれど、みんな無事だったのが、なによりだ。
このキャンプは、大成功と言っていいのではなかろうか。
みんなで、一緒に寝るの、楽しかったなあ。また、やれないかな?
私は、みんなでお泊り会とか開けないかな~と、考えを巡らせるのであった。




