布団を敷いてからが、長い夜のはじまりです
小さなランプが灯る中で、私たちは布団に入った。
そして、しばらく時間が経ち・・・
今、私の顔の上に人の腕が乗っている。隣の人のであります。ちょうど鼻の上くらいに、デンッと。
・・・重い。眠れん。うっとうしい。
ちなみに、オルガの手ではない。オルガだったら狂喜乱舞で、小躍りしちゃうもんね。
オルガと逆側で私と隣り合っているエドワードの腕である。こいつ・・・寝相悪いんだな。
ここは、ごろんと体を横にして、腕から逃れようと試みてみる。
でも、リーチが長くてダメだった。くそ~手が長いのが、こんなにうっとうしいとは。
さて、どうすべきか考える。
こうやって姿勢を変えても、またいつ手がやってくるのか分からない。
ふむ・・・・・・。
しばし、考える。
これしかないかな?やったことないけど、モノは試しだ!
すすすっと、静かにエドワードへと近づいていく。
よく寝てる。穏やかな寝顔をしおって。頬っぺたを思いきりつねってやりたくなるけど、やめておく。
私は深呼吸して、精神統一。
そして、グッとお腹に力を入れて・・・・・・
「とりゃ!」
ドスッ!!
「ぐおっ・・・」
みぞおちに思いっきり拳を叩き込む。
エドワードはうなった後、バタッと気絶した。
よ~し、これで安心。
漫画で学んだ人を気絶させる方法が、こんなところで役に立つとは。
ちょっとスッキリした。ゲームプレイ時の恨みを、少し返したぞ!
それにしても、私って、けっこう腕力あるのかしら?私、エリーゼはほとんど設定らしい設定がないので、腕力とかよく分かんないけど。
「なにゴソゴソやってるのよ、まったく・・・」
オルガが目を開けて、こっちを見ていた。まだ寝ていなかったらしい。
「すみません。今、私の拳が火を噴きました」
「どういうことなの・・・?」
私は、オルガの方に体を向ける。淡い明りに照らされて、うっすらと彼女の顔が見える。
なんか照れるな~。
「薄気味悪い笑みを浮かべないでくれる?」
私は、無意識にニタ~と笑っていたらしい。
「これは、あたたか~な笑顔です」
「すごい気持ち悪い顔しているわよ」
「ありがとうございます!」
「へ?」
お礼を言われて、オルガはきょとんとしている。
私はオルガに対する理解と愛情が限界突破している。よって、ちょっとした罵倒なら、ご褒美として受け止められるのだ!
というわけで『気持ち悪い』と言われて、『ありがとう』と答えるのは、なにもおかしくないのである。
「ところで、今日のキャンプはいかがでした?」
ちゃんとした会話もしよう。からかってばかりじゃなくて、今日のキャンプをオルガがどう思っているのか、気になる。
「え?なによ、いきなり」
「ご主人様が快適にすごせるようにしていくのが、メイドとしての役目ですので・・・」
オルガは少し考えてから、ポツリと言った。
「・・・まあまあ・・・おもしろかったわ」
おもしろいの言葉、いただきました!とりあえず及第点ではあるっぽい。果たして、すごくおもしろかったと言ってくれる日はくるのだろうか。
「それなら、よかったです」
私は微笑んだ。
「ふ、ふん」
オルガは背中を向けてしまった。なになに~照れてるのかな~?かわいいなあ。
私に背中を見せているってことは、向こう側で寝ているアリスの方に顔を向けてることになる。ということで、オルガとアリスは見つめ合う形になった。
「あっ、オルガ様、笑ってます?」
アリスが言った。まだ寝てなかったみたい。
「なっ!なに見てるのよ!この平民!」
オルガが、恥ずかしがって枕をアリスに投げつけた。『この変態!』と『この平民!』って似てるな~とちょっと思った。
投げた枕はアリスの顔に直撃。
いいコントロールだ!私はグッと親指を上げる。
「あいだっ!」
アリスがうめいた。
「なになに~?おもしろそうなことやってる~!わたしもやるぞ~!」
イングリッドが、オルガたちが遊んでいると思って、うれしそうに枕を両手で持って、投げてきた。
「ぐはっ!」
見事、オルガに命中。
「やったわねっ!」
オルガが反撃する。参加者が増えてきて、俄然、盛りあがって参りました。
「みなさま、おやめを~」
私は口ではとめながら、おもしろそうなので、当然参戦。
枕をとりあえず、隙がありそうな人に向けてほうってみる。
すると、きれいにイングリッドのお腹に命中した。
「ぐえっ!やったな!どりゃ~」
当然、やり返してきた。正確に私の頭に当たった。
そこそこ痛い。でも、平気平気!
「ん~なんだい・・・みんな、騒がしいな・・・・・・ぐはっ!」
私たちが、わいわいやっていたので、ギュスターヴが目をこすりながら体を起こした
・・・・・けど、すぐ寝た。いや、寝たと言うか、流れ弾?流れ枕?が命中して倒れた。
「痛たたた・・・」
すぐに復活。
「やってくれたねえ~」
ギュスターヴは笑顔。でも、なんか雰囲気が怖い。ゆっくり枕を持ちあげて、振りかぶった。
「えいっ!」
「ぶはっ!」
あんまり関係ないアリスが倒れた。
「くそ~!」
アリスのやる気に火がついた。つかんでは投げて、またつかんで投げる。
予備用の枕も取り出しちゃったりして、いっぱいの枕が、空中を飛び交っている。
そんな中、エドワードは一人、熟睡しているので不参加である。そりゃもう、気絶したみたいにぐっすりと眠っている。
よく寝てるなあ。こんなに楽しいのにもったいない。
「え~い」
私は足元に転がってきた、もうだれの枕か分からないのを、適当にぶん投げる。
だれかに当たり、それをまた別の人が拾ってぶつける。すでにカオスな状態だが、まだまだ戦いは、はじまったばかりだ。
こうして私たちは、だれがやろうと言ったわけでもなく、自然発生的にはじまった枕投げで、いっぱい遊んだ。
途中からチーム戦をしたり、個人戦をしたりと存分に楽しむ。
ちなみに、この枕投げバトルは、深夜遅くまで続いていくのであった・・・・・・。




