だれの隣で寝るのか・・・それが問題だ
でっかいテントの中へ突撃だ!
イングリッドと一緒になだれ込む。なんか彼女と私は、サポート的役割という共通点があるからか、同じ波長のようなものを感じる。
「ひゅ~~広い!」
イングリッドが駆け回っている。駆け回れるくらいの広さのテントなのが、そもそもびっくり。
ギュスターヴは満足した顔で見ている、自分(と執事さんたち)の用意したテントで喜んでくれているのが、うれしいみたい。
「ひ、広いですっ!すごいですっ!」
アリスはキョロキョロと中を見回しながら、興奮で鼻息荒くなっている。
「いえいえ、そんな大したものでは」
私は、おしとやかに答える。
「なんであなたが答えてるのよ・・・テントを用意したの、あなたじゃないでしょ」
オルガにツッコまれる。これこれ、このツッコミがほしかった。
「すみません、ついメイドとしての性分が・・・」
「・・・どんな性分よ・・・」
「褒め言葉はすべて、自分に向けられているものだと思いこむ性分です」
「ただのヤバいやつじゃない、それ!」
「いえいえ、それほどでも」
「今のは褒め言葉じゃないっ!」
私たちは、和やかに会話を楽しんでいた。
すると、
「貴様たち、まぬけコンビだな」
エドワードに冷ややか~な目をされる。
「なんですって?」
オルガはくるりと振り向いて、鋭い眼でエドワードをとらえた。
「な、なんだ、その眼は・・・」
迫力に押されているエドワード。意外と押しに弱いんだよな、この人。
「まぬけとは、聞き捨てならないわね」
「そうです。ラブリーコンビと呼んでください」
「それはそれでイヤ!」
え~ノリが悪いなあ。『そうよ、ラブリーよ!』くらい言ってほしい。
「まったく、貴様たちといると、ペースが乱される」
「でも、それも意外と・・・意外と悪くは・・・?」
ちょっと言葉を誘導できるか、試してみよ。
「ま、まあ悪くはない・・・ってなにを言わせる!?」
エドワードが口を滑らせた。チョロいな・・・こいつ。なんだかんだ、そこそこ楽しんでるみたい。素直じゃないな~まったく。
彼の肩をポンと叩いて、
「素直になっていいんですよ。私たちと一緒に楽しみましょう」
「な、なにをだ!?」
「ラブリーなことをです!」
私はドヤッて感じで言う。
「ラ・・・ラブリー・・・だと・・・ぐふっ!」
あっ、鼻血出した。
いきなり鼻血とは、初心なのは知ってたけど・・・・・・もしや、想像力たくましい(ちょっとムッツリ)疑惑が浮上してきた。ラブリーとしか言ってないぞ、私は。
そこんところ、これから解き明かしていこうっと。
「今日は楽しかったねえ」
ギュスターヴは、華麗に、鼻血を出しているエドワードをスルーしつつ、しみじみ言った。ほっとかれているエドワードが少し不憫。
「そうだね。なんか、オルガとかエリーゼのこと、少し知れた気がする」
イングリッドが、ポツリと言った。彼女にとって、発見が多かったみたい。しかも、プラスの方向の理解が進んだと思ってよさそう。
いいぞ~順調順調。
「んじゃ、そろそろ寝る準備する?というか寝袋ってどこ?」
イングリッドが、テントの中を探しはじめる。
・・・そうだ、寝る準備しないと。一応寝袋は持ってきたので、それを敷けばいいのかな?
「ああ、それならここに」
ギュスターヴが、奥から布団を取り出してきた。
・・・布団!キャンプで布団で寝れるんの?すげえ!
「全員分あるから、そこから出してね」
みんな、それぞれ布団を出して、敷いていく。横一列に並べた後で、ふと私は気づいた。
だれが、どこで寝るのか。
よし、ここは先手必勝。どうしようかな~とか言っているうちに、すぐに決まってしまうから、その前に勝負だ!
「まず、私とオルガ様は隣なのは決定として・・・」
あくまでも冷静に、当たり前のことのように言うのが大事。まあいいかな~みたいな空気にして、希望の場所をしれっと手に入れるのだ。
「ま、まあ・・・そうでしょうね」
オルガも同意。よし、これでグッと近づいてきたぞ。メイドという立場があるからか、他のみんなも違和感を感じにくいらしい。イケるぞ、これは。
「問題なさそうですか?」
一応、確認をとる。
・・・・・だれも文句なし。やった!オルガの隣で寝れる・・・グフフ。
でも、『私も隣で寝たい!』って言う人いないんだな・・・。もしや、オルガってあんまり人気ない?
・・・・・・よく考えたら、悪役令嬢なので、当然か。うれしいけど、ちょっと切ないぞ。
オルガ、あなた人気ないってよ・・・。
「じゃあ、私はアリスの横~」
イングリッドも、すぐに自分の好きな場所を確保。こういう時って積極的な人が強い。
「え~と、ぼくらは・・・どうする?」
ギュスターヴがエドワードに話しかける。
「まあ、どこでもかまわないが・・・」
男性陣は、余裕の構えだ。
「じゃあ、ぼくは端にしよう。エドワード君はぼくの隣でいいかな?」
「・・・いいだろう」
向こうは、すぐに決まった。二人とも、ここがいいとか、ここが嫌とかそんなにないようだ。
とりあえず、ギュスターヴが端っこで、その隣がエドワード。私とオルガは隣で、アリスとイングリッドが隣同士ってとこまで決まった。
さて、ここからが問題。
エドワードの隣にだれが行くか・・・。
案1。婚約者ということで、オルガ。でも、照れてたぶん嫌がりそう。
案2。私。オルガのメイドだから、まあ、アリか。
よし、それでいこう。
「私が、エドワード様の隣にしましょうか。もし、オルガ様が隣ですと、婚約者であるエドワード様がなにをするか分かりませんので」
「な、なにもせん!」
顔を真っ赤にして否定する。怪しい・・・・・・と思ったけど、たぶんそんな度胸ないな。ほんとはすきそうだけど、強がったツンツンしたままで、あんまりデレてくれないもんな。
「よし、じゃあ、それで決まりでいいかな?」
ギュスターヴが、みんなに確認する。
みんなは、顔を見合せて、うなずいた。異論がある人はいなかった。
意外とすんなり決まったなあ。私は、争奪戦に次ぐ争奪戦のすえ、殴り合いにまで発展する覚悟をしていたけど、平和に終わったのでよかった。
正直言うと、アリスやイングリッドと隣同士になって、おしゃべりしたかったけど、まあ、それはまたいずれ、チャンスはあるだろう。
いや、きっとチャンスを作ってみせる!すぐにでも!
私は決意を新たにする。オルガをハッピーエンドに導くだけじゃなくて、私自身も、いろいろエンジョイしていきたいもんね~。




