夜はのんびり、まったりと
食事を終えて、アリスが持ってきてくれたシートの上に座ったり、寝転がったり、おのおのリラックスしている。
暗くなってきたので、さっきよりも涼しくなって心地がよい。お腹もいっぱいだし、幸せだ。
イングリッドの持ってきたお肉とお野菜はすごいおいしかったし、アリスは手際がよかった。
こういう時、一昔前のアニメなんかだと、壊滅的な食のセンスのキャラが登場して、ご飯を台無しにしたり、火が引火とかして大変なことになったりすることがあるけど、このゲームには、そんな輩はおらず、とても平和に、トラブルなく、食事を楽しむことができた。
夜が深まって、のんびりとしている時間は楽しいんだけど・・・・
・・・暗すぎてなんっにも見えない!
すぐそばにいるはずのオルガの顔も、ぼや~としか分からん。表情が見えないと、あんまり会話も弾まない。
明かりがないと、世界とはこんなに暗いのね。私は、世界について見識を深めたぞ。はじめはおもしろかったんだけど、ずっと暗いままだと転んだりして危ないということで、みんなで、たき火でもしようという話になる。
キャンプファイヤーってやつ。火を眺めるのとか、いいよね。癒しだよね。
料理を作るのに使った枯れ木が余っていたので、エドワードの持ってきてくれた、たき火台に火をおこして、みんなでぼんやりと見つめる。
これが、けっこう楽しい・・・。ただボケ~っと見ているだけなんだけど、パチパチとはぜる音を聞いていると、なんだか癒される。
でも、せっかくのたき火だ、あれをやらないともったいない。私はゴソゴソとカバンを探って、あるものを取り出す。
私は、みんなに、それを見せた。
「ばばーん。マシュマロです」
「なに?そんなもの出してどうするのよ」
オルガはつまらなそう。チッチッチ、分かってないなあ。これだから、いかんのだよ。こういうのが楽しいんだから。
「これを火であぶると、おいしいのです」
「ほんと?」
信じてないな、この人。私もすごい好き~ってわけではないけど、こういうのは、みんなでやるのがいいのだ。雰囲気込みのおいしさである。
「せっかくですので、やりましょう」
「やってみたいですっ!」
アリスは、さっそくマシュマロをあぶりはじめる。食べ物となると、行動が速い。
「ふん、くだらないな」
エドワードは、あきれた様子で腕を組んでいる。
そんな、興ざめすることを言うやつにはこうだっ!
軽くあぶったマシュマロを、口に投げ入れる。
「わっ!熱っ!・・・・・・う、うま・・・ごほんっ」
途中で咳払いした。『うまい』って言いかけたのを、ごまかしたな。
「ま、まあ・・・まずくはない・・・」
もぐもぐ食べながら、顔がちょっぴりほころんでいる。フフフ・・・このおいしさが分かったようだな。
「へ~ぼくもやってみよう」
「わたしも~」
ギュスターヴとイングリッドの二人は楽しそうに参加してくれる。ノリがいい人がいると助かる。
みんなでワイワイ楽しんでいると、
「ちょ・・・ちょっと・・・」
オルガが、少し離れたところでポツンと一人、私たちの輪に入り損ねていた。
ここは私が声をかけねばならないな。ご主人を孤立させるわけにいかない。
「さあ、オルガ様も食べてください」
マシュマロを放り投げた。
「あっづ~~~!」
あ、まずい。熱すぎたみたい。
「殺す気!?」
「いえ、これは事故でして・・・」
「あなたも食べるなさい!この熱さを体験しなさい!」
熱々のマシュマロを持って追いかけてきたので、走って逃げる。
「待ちなさい~!」
「遠慮しておきま~す」
私が逃げ、オルガが追う。二人でたき火台の周りを、ぐるぐるとしばらく走り回った。
・・・めちゃ楽しい。
ようやくオルガの怒りがおさまったところで、あらためてマシュマロを渡す。
「今度はちょうどいい温度です」
「ほんとでしょうね?」
警戒している。よし、ここは甘やかし作戦だ!
「はい、どうぞ。あ~ん」
「ちょ、ちょっと恥ずかしいわよ」
いきなりやったら食べてくれるかと思ったけど、照れちゃってダメだった。
「二人って仲良しなんだ」
イングリッドが、まじめな顔して言ってくる。
「そうなんです」
「べ、別に仲良しってほどじゃないわ」
照れるオルガを見て、イングリッドが、ボソッと
「なんか、ちょっとイメージ変わったかも」
どうやら、これまで持ってたオルガのイメージに変化があったみたいだ。
今までが悪すぎたので、どう変わってもたぶんプラスだ。これはいい傾向だぞ。この調子で、少しずつオルガの印象をいい感じに変えていこうっと。
しばらく、みんなでマシュマロを食べながら、夜空の星を見てすごした。辺りが暗いから、くっきりと見えて、とてもきれいだった。
さて、そろそろ寝る時間が近づいてきたぞ。このキャンプは1泊2日の予定なので、当然テントで一夜を明かすのだが・・・。
2~3個のテントで、2人くらいずつテントで寝るのが、普通のキャンプなのだけど・・・、
ギュスターヴの持ってきたテントが普通じゃなかった。めちゃくちゃ大きいのだ。さすが王子。持ってくるテントも規格外である。みんなが余裕で入れるほどのサイズ。
どうやって持ってきたのかは謎なのだけど、ず~と後ろの木の陰に、執事っぽい人が何人か隠れているのが見える。たぶん、あの人たちが持ってきたんだろうな。
くそ~権力を存分に使いおって・・・。
・・・まあ、学園が正式に許可している可能性高いな。なにせ王子様だし。
それだけ大きいのに、組み立てはすごく簡単だったらしい。私は組み立ててないけど、エドワードが言っていた。どうやら、運ぶまでが執事さんたちの仕事らしい。遠くでずっとエドワードはやってくれていた。なんだ、けっこういいやつじゃない。
このテント・・・テントと言うより、簡易的に作られた家と言ってもそんなにおおげさじゃないくらい立派である。学校の授業で習ったモンゴルの遊牧民の人たちが暮らすゲルってやつに近い。
そして、こんな快適な場所ですごすにあたって、決めなくちゃいけない大切なことがある。
このキャンプ最大のイベントと言ってもいい。
それは・・・・・・!
それぞれの寝る場所をどうするか、である!




