キャンプにやってきた
さあ、キャンプ当日。天気は晴れ。風がとても気持ちがいい。
私が気持ちよさそうに、木の間を吹き抜ける風を浴びていると、イングリッドが、ジーと見てきた。なんだろう?この風を受けている私に見とれているのか?
「変わった服だね~それ」
そう言って、私の着ているシャツを指さした。
たしかに、これはちょっと変わったデザインをしている服だ。なにせ、この前オルガとアリスと一緒にいる時に買った、袖に羽がついているシャツなのだから。(ep7参照)
いや~着る日なんて来ないかなと思っていたけど、まさにキャンプという自然と触れ合うイベントにはピッタリ。
羽と言えば、自然、自然と言えばキャンプである。
「やはり、自然と一体になりませんと」
私は羽のついた腕をひろげて、パタパタした。
「鳥みたい、おもしろ~」
どうやら、イングリッドには好評みたい。
「気持ちいいですよ。私は自然。自然は、私。私は風」
グルグルと木の間を小走りで走り回った。
「ちょ、ちょっと!変なことしないでちょうだい」
オルガが、顔を赤くしながら走っている私を止めた。
「どうですか?ぜひご一緒に走って、自然を感じましょう」
「い、嫌よ。恥ずかしい」
オルガには、速攻で断られた。
「え~おもしろそうじゃない!私やる!」
と、イングリッドは乗り気なので、二人で両腕を真横に広げて、走った。
わーい、なんか楽しい。
「ほら!アリスちゃんも!」
「えっ!?なんで!?」
強引にアリスもイングリッドによって参加。
「わーい」
先頭は私、エリーゼ!
「あはは、なんか、おもしろい~」
続いて、イングリッド。
「わ、わーい・・・」
最後に、小声で遠慮がちについてくるアリス。
私たち3人は、風を感じながら走った。
「おもしろそう、ぼくもいれて~」
と、ギュスターヴも最後尾に加わる。
並んで走って、私たちは仲良くテントを立てる予定の場所へと、到着した。
周りから、びっくりした目で見られたけど、そこそこ楽しかったので、よし!
「着きましたね」
なんか、もうすでに非常に満足感がある。
「ちょっと恥ずかしかったですけど」
アリスは、きょろきょろと見まわしながら言った。
「いいのいいの!おもしろければ」
イングリッドは、こういうのは平気なようだ。明るく笑っている。
「いや~いい運動になったよ」
ギュスターヴも満足した様子で、汗をぬぐっていた。なにをしても、なんとなく様になっちゃうのが、憎いとこだ。
休憩をはさんでから、私たちはキャンプの用意をはじめる。
エドワード、ギュスターヴの二人は、テントの設営。他の人は、カレーの調理だ。
「頑張りましょう」
アリスが腕まくりして、手際よく野菜を洗っていく。動きに迷いがない。包丁で、テキパキと皮をむいていく。
彼女は料理上手なのである。両親が忙しくて、毎日のように自分で作っているので、カレーなんか、たぶん余裕。
手作り弁当をデートに持っていくシーンもあるから、できるのは分かっていたけど、目の前で見ると、さすがの手さばき。
さて、イングリッドの場合、ゲームで料理をしているシーンはなかったので、その実力は未知数だけど・・・どうかな?
「うーんと、これを切ればいいの?」
包丁の持ち方がぎこちないので、ケガしないかちょっと怖い。
「そりゃ!うりゃ!」
ジャガイモを切っていく。すごい変な形に切られていく野菜たち。
まあ、煮込んでしまうから多少いびつでも大丈夫かな。その手つきからして、イングリッドは料理は得意じゃないな。
ちなみに私は、料理はそこそこ。プロ並みではないけど、家にある材料で適当におかずを作ることくらいならできるぞ。
と、みんなそれぞれ、準備を進めていっているのだけど、
ここで、ひとつ問題があった。
それは、オルガ。家事はおろか、包丁を持ったことすらないのであった。しかし、オルガの家のメイドとして、彼女に恥をかかせるわけにはいかない。
ということで、
「オルガ様、お肉を切っていただけますか?」
私から声をかける。
「え、ええ・・・」
野菜みたいに皮をむいたりしなくていいから、まだ難易度は低いはずだけど・・・。
包丁を持ったまま、じっとしている。どうしていいのか、迷っているみたい。
「ん?なにしてんの?」
イングリッドがのぞきこんできた。いかん、バレてしまう。
「オルガ様は、どう切れば、みなさんが食べやすいのかを考えているのです。さすがです、オルガ様」
すかさず、フォローだ。
「え、ええ、そうよ。もちろん。小さすぎても、あまり存在感がないし、大きすぎると食べにくいでしょう」
「ただ切るだけじゃなくて、食べやすさを考えてくれてるんだ。いいとこあるじゃん」
イングリッドのオルガへの好感度が上がったようだ。
「よ、よ~し」
オルガは深呼吸した。
「え、えいっ!」
気合のかけ声とともに、包丁でお肉を切った。
なんか・・・
めちゃ、かわいい!
普段、ツンケンしている人が、けなげに頑張っている姿・・・最高・・・。
「なんか力入ってない?」
あ・・・まずい。イングリッドがちょっと不審に思っている。
「オルガ様は奥ゆかしい方なので、緊張されているのですよ」
「ふ~ん」
まだ、怪しんでいるみたい。
よ~し
・・・かくなるうえは!
「緊張されては、あぶないですよ。ほら、こうやって切ればいいのです」
オルガが包丁を持っている手の上から、私の手を重ねて、切るのを補助してあげる。
「え!?」
オルガは、私の行動にびっくりしている。
「一緒に切りましょう」
よ~し、このまま突き進んじゃお!
手握れるの、うれしいし!
「そそそそそそ、そうねっっ!」
オルガは動揺しながら、手だけ動かしている。
照れてる照れてる。
「きゃっ~!なんかすごい仲良しって感じ!・・・素敵~~!!」
イングリッドは身を乗り出して、瞳を輝かせている。
「ほら、こうですよ」
「こ、こう?」
お肉の下ごしらえを進めていく。
仲良しなオーラをバシバシと出して、料理上手いかどうかとか、そういうのをうやむやにしちゃおっと!
そのまま最後まで、二人で一つの包丁を使ってカレーの準備を続けたのであった。
思わぬ危機を乗り越えて作ったカレーはとてもおいしかった。お肉の大きさもちょうどいいし、野菜は意味分からない形だけど、手作り感があって、これもまた、よし。
おいしければ、いいのだ!




