険悪ムードを解消しよう
私の立場が分かったとこで、今の状況を整理してみる。
ま、何が起きてるのかは、なんとなく分かるけどね。
たぶんオルガが、アリスに悪口を言ったんだろう。
「私のことを、汚らわしい平民と、そうお言いになりましたよね!」
けっこうひどいことを言ってた。
さすが悪役令嬢、早々にかましてくれる。こちらの期待を裏切らない。
オルガは、アリスに会うたびに、毒を吐いたり嫌がらせをしているキャラだから、平常運転といえる。
でも、このままにしておいては、バッドエンドへと直行だ。
ゲームの中で直接描写はなかったけど、オルガが没落するってことは、メイドである私にとっても大問題なわけで・・・。
そう、だからオルガの辿る運命はオルガだけの話ではなくて、私の将来にも直結しているのだ!
私は路頭に迷いたくない。
オルガも私も、幸せになってやる。
そして、オルガの笑顔を、この目に焼きつけるのだ!!
というわけで私は頭をフル回転させて、この状況を打開する方法を考える。何とかアリスに、こちらには敵意はないことを示さないといけない。
何かアイデアがないかと思って、さりげなくアリスを見てみると、髪の毛に糸くずがついているのに気がついた。
これだ!
私は手を伸ばして、そのゴミを取った。
「え~と・・・そ、そうです!こんなものを髪につけて汚らわしい。かわいい顔が台無しよ!と、オルガ様は仰りたかったのです」
・・・・・・・・
しばらくの沈黙ののち、
「・・・・・・は?」
アリスとオルガ、二人から同時に間の抜けた声が出た。
きょとんとしているアリス。ついでに、オルガの方もきょとんとしている。
二人とも、私が口をはさむなんて思ってなかったみたいだ。
「か、かわいい?私が!?」
みるみるアリスの顔が赤くなる。
思い出した。アリスは平民出身で周りから見下されて育ってきたので、褒められるのに慣れていない。であるから、この様なド直球の褒め言葉には弱かったのだ。
もしや案外チョロいのか、こやつ。
「きゅきゅきゅ、急にそんなこと言って、許してもらおうだなんて、そうはいきませんよ!」
動揺してるの、分かりやすいな~。分かりやすくて、かわいい。
オルガはもちろん好きだけど、わたしは、アリスも大好きなのだ。
もっとからかって、照れてるアリスが見たい。
なんとか上手くやっていけば、いい感じでオルガとアリスの二人は友達になって、やがては仲良く一緒に登校する姿を見られたりして・・・。
すごい見たい、その光景。そんで、その一枚絵をスクショしたい。
「ふん。こんな言葉くらいで動揺するなんて、とんだ単細胞ね」
オルガは変わらずトゲトゲしている。でも、微妙に照れてるように見えなくもない。
私がフォローしたのに、すぐ毒を吐くとは、ブレないというか懲りないというか。
このままにしておくと、また険悪になりそうなので再び私は割り込む。
「ん~と、ええ、そうです。今度は、もっといっぱい褒めてメロメロにしてやるわと、オルガ様は言いたいのです」
「もっと?え!?それで、メ・・・・・メロメロに!?」
アリスは軽くパニックになっている。おろおろしはじめた。
あ~かわいい。すごくいい。
「メロメロッ!?」
もっとびっくりしている人がいた。
オルガである。
目をまん丸にしている。
あ、この顔もかわいい。
私の予想外の行動に、頭が追いつかないようだ。
こっちはこっちで、すばらしい。ツンケンしている人の動揺している姿って、なんていうか、めちゃ滾るね。
普段とのギャップにグッとくる。
「あ、あなたたちの、わわ、悪ふざけに付き合ってられません!」
アリスはそう言うと、あたふたと鞄を胸に抱えて逃げ出してしまった。
途中で、盛大に転んで「きゃっ!」と声を上げた。
すぐに立ち上がって、こちらを恨めしそうな顔で見ると、すごい速さで走り去った。
「お、覚えておいてください!」
ベタな捨て台詞まで残してくれた。
私は丁寧にお辞儀して見送る。
今の退場の仕方を見たら、アリスの方が悪役令嬢っぽい気がするのは、私だけだろうか。
いや~しかし、いいもの見られた・・・実に満足。非常に充実した時間だった。
とにかく、どうにかアリスのオルガへの好感度は下がらなくてすんだみたいなので、よし。
グッジョブ、私。口から出まかせだったけど、案外いけるもんだ。
さてと、オルガはどんな様子かな?
なんだか、ぽかんとした顔で突っ立ってる。
どうやらまだ、整理がついていないらしい。
こんな顔、ゲームで見たことない・・・目に焼きつけておかねば!
オルガを凝視して、その顔をしっかり記憶しておく。
私からの熱い視線を感じて、オルガはハッと我に返った。
「な、なんです!エリーゼ!さっきから私の言葉に勝手に付け足して!」
「いえいえ、分かっておりますオルガ様。照れてるんですよね」
「違います!」
「大丈夫でございます。私にお任せあれ」
「ぜ、全然、大丈夫ではありません!」
ギャーギャー言ってる。顔を真っ赤にしてムキになってる。それがまた・・・いい!
こんな顔を見られるなんて、私、もっと頑張る!
そんな決意を固めていると、
「また弱い者いじめか・・・まったくヘドが出る」
後ろから男性の声が聞こえた。
私とオルガが振り返ると、そこにいたのは・・・・・・
オルガの婚約者であるエドワード・ハイネセンだったのだ。




