私が、ゲームの中に!?
・・・・・・ここ、どこ?
目の前に、女の子が一人立っている。どっかの学校の制服みたいなものを着てる。かわいいし、それによく似合ってる。見覚えはあるけど、こんな人知り合いにいたかな?
「酷いです!オルガ様!」
「なにが?当然のことでしょう」
女の子は目に涙を浮かべて、こっちをにらんでる。なにやらわたしの隣にいる女の子と揉めている様子。
そんでもってオルガとは誰だろう?この状況から判断するに、私の横にいる子の名前だろうな。
オルガ?どっかで聞いたことある名前だ。記憶をたどって思い出してみる。
そうすると思い当たる名前が一つあった。最近プレイした乙女ゲーム『月下に咲く花』に登場するキャラクターのオルガ・アルジェリーだ。
背が高くてすらりとしていて、長くてきれいな黒髪、冷たい鋭い眼差し。別名「氷の女王」なんて呼ばれているカッコいいキャラだ。
ちなみに、私のお気に入りである。
好きだったんだよな・・・やっぱカッコいい女の子っていうのは、ときめく。あの鋭い目が特にいい。
でも、このオリガ・・・実は主人公の味方ではなく、敵対するキャラなのである。
いい友人になったりとか、あわよくば個別ルートなんかも用意されていることを期待していたのに・・・その夢は、最後まで叶わず。ずっと敵のまま、物語は幕を閉じた。
オルガは上流貴族の令嬢で、平民である主人公のアリス・マーゴットをいつも、いじめていた。
どのシナリオでも、その悪事を批判されて、婚約者から婚約を破棄された挙句に、みんなにも見放され没落していく展開になる。確かルートによっては、反乱を首謀した罪で処刑されてしまう結末もあったはずだ。
ゲームだけやっていると、単に感じの悪い女の子ってだけなんだけど・・・。
しかし、外伝小説まで読んだ私は知っている。
オルガは愛されたいと願いながら、周りから愛されなかったせいで、自分の思いの伝え方とか愛し方を間違えただけの、不器用を拗らせまくったキャラなのである。
アリスや同級生達、婚約者であるエドワードや両親とも本当は仲良くなりたかったのだ。
私はゲームをクリアした後、オリガが救われるエンディングがなかったことに落ち込んで、何も手につかなかった記憶がある。ハッピーエンド・・・見たかったなあ。
ネットで、オルガが幸せそうにしているファンイラストや同人誌をひたすら漁って見まくったり、グッズを買い集めたりすることで、なんとか気持ちを慰めていたっけ。
本当は、本編の中で笑って幸せになっているオルガを見たかったんだよ。二次創作を見ようがグッズを買おうが、心は埋まらないままだった。
私は、横で澄ました顔をしている女の子を、もう一度マジマジと見てみる。
似ている・・・
・・・・・て言うか、オルガそのものである。
え?本物なのでは?これ。
動いている・・・・・・喋ってる!?
すごっ・・・ええ?
私はしばらく見つめてしまった。
待て待て、待てよ。
と言うことは・・・こっちを睨んでいる子は、まさか・・・。
何度もプレイしたから、頭に焼き付いている。
主人公のアリス・マーゴットだ。
きれいで艶々とした金髪、吸い込まれそうなほど澄んでいる宝石みたいな深い青色の瞳。
うん、かわいい!
着ている制服は、ゲームに出てくる「聖バレンティア学院」のものだ.。
ここは『月下に咲く花』の世界で間違いない!
テンションがぶち上がる。
アリスとオルガが目の前にいる!
・・・よ~く見ておこ。
心にしっかりと刻み込んでおこう。
喜んでいたのもつかの間、そこで一つの疑問が浮かんできた。
そもそもここにいる私って・・・・・・誰?
オルガの横にいるから、何か関係者なんだろうけど、ちっとも覚えてない。服装を確認してみると、彼女たちと同じ制服は着ている。てことは、同じ学生だな。そこは確定と思っていい。
でも、それだけじゃ情報が少なすぎる。
近くに鏡はないから、顔も分からん。
え~と、どうすりゃいいんだ?
腕を組んで考える。
私がうーんと考えはじめたものだから、気になったんだろう。オルガが話しかけてきた。
「なにを考え込んでいるの。エリーゼ」
大ヒントきた!エリーゼ・・・エリーゼ・・・?
っていたっけ?ものすごい速さで私は記憶をたどり、ゲームの公式サイトにある主要キャラの紹介ページを頭の中で思い出す。
そんな名前の人いなかっ・・・・・
・・・いや、いた!
かすかに覚えている。
立ち絵どころか顔グラもなく、ホームページのサブキャラの、そのまた一番下の欄、その他大勢としてまとめて紹介されていたあの人。
それは苗字すら判明していない・・・て言うか、たぶん苗字なんて存在しない、超がつくほどの脇役。
オルガの家のメイドのエリーゼ。
どうやら、それが私の正体らしい。
公式サイトでも説明文は、たったの1行。
ーオルガに仕えるメイド。彼女と一緒に学園に通っているー
以上、終わり、こんだけ。妄想を膨らますにしても、あまりにも公式からの素材が少なすぎるキャラクターである。
私はよりによって、カッコいいキャラとか、かわいいキャラとかがいっぱい出てくるゲームの中で、最も地味なキャラになってしまったのだ。




