上がったハードルを超えてくるのか!?
全員分のパンケーキが運ばれてくる。テーブルに並ぶと、壮観だ。色とりどりって感じ。
見ていて楽しい。
私のは、イチゴがゴロゴロ乗っているので、赤が目立つぞ。
オルガは、レタスやアボカドといった野菜の緑が、瑞々しい。
アリスは、チョコソースなので、全体的に黒々しているけど、中央のアイスクリームの白い色と対比を感じられて、よろしい。
エドワードは、結局、一番オーソドックスなプレーンのパンケーキ。メイプルシロップが、ツヤツヤしている。
「やはり、その店の味を知るには、一番シンプルなものを食べるのが一番だ」
聞いてもいないのに、その理由を得意げに話してくれた。まあ、そういう考え方もあるかもね。
ギュスターヴはというと、フルーツのスペシャルなやつ。確か、お値段がかなり高い。何種類あるのか分からないくらい、いろんなものが乗っかっている。
こいつ・・・・・こんなところで第3王子の財力を存分に使ってきていやがる。
ちょっと恨めしい。
みんなは、無言でフォークを手に取った。もうちょっと、『おいしそうだね』とか、『わあ、きれい』だとか、そういう小粋な会話を繰り広げながら、優雅なティータイムを楽しみたかったけど、そんな余裕はなさそうだ。
では、一口大に切って、パクリ。
・・・・・あれ?そんなに甘くない。見た感じ、かな~りギトギトの甘々なものを想像していたけど、クリームの部分が、意外と控えめなお味。
大人向けなのかな?
少し拍子抜けした気持ちになりながら、もう一口、ジャムっぽいソースとからめて食べてみる。
ん?これは!
一気に化けた。その味で、全体のおいしさにブーストがかかる。
うま~これ。
あんまり甘さが来ないな~と思ったら、ジャムでしっかりそこを補っている。
めちゃうまい。
イチゴとパンケーキを一緒に口に入れる。
合う!シロップ漬けになったイチゴ、見た目もきれいだし、酸味がいい!
と、一人で興奮してしまった。みんなは、どんなリアクションかな?こっそり観察してみよっと。
ギュスターヴ・・・うなずきながら、ニコニコと食べている。おいしそうに食べてはいるけど、反応としては普通。『いつも通りの味』みたいに、平然と食べている。
一方、アリスは・・・・・・・
口をおさえて、固まっている。言葉が出てない。おいしすぎて、その衝撃にすべての機能がストップしている。
続いて、エドワード・・・・・・・同じく硬直している。
オルガ・・・・・・・同じく。
そして、私。以下同文。
5人のうち4人が、感動で動けなくなっている。
「おいし~~~!!」
アリスが一番に声を出した。やはり、ここは主人公だ。リアクションでも先頭を切ってくれる。
「ま、まあまあね」
と、オルガは顔がにやけながら食べている。絶対おいしいと思っているけど、恥ずかしくて、まあまあって言っているパターンだな。
私は、黙々と口いっぱいにほおばっている。こういうのは、詰め込んでなんぼじゃい!口いっぱいにするのが、幸せなのだ。
「もっとゆっくり食べなさいよ」
あきれた顔をして、オルガにツッコまれた。
「ふひ、ひっはいひひへはへふほは、ほひひひほへふ!」
リスみたいになりながら、私は答えた。口からちょっと飛び出ちゃうけど、気にしない。
「わ、分かったから、飲み込んでからにしなさい」
オルガは、私の迫力に押されて、ちょっとたじろいでいた。
私は紅茶を一気に飲んで、口の中をさっぱりさせる。
うん、お茶とも相性がいい!
まともにしゃべれるようになった私は、改めて言う。
「おいしゅうございます」
よし、今度はちゃんと言えた。さっき行儀が悪かったので、おしとやかな言葉づかいにする。
よし、これで、プラマイゼロだな。
「ですよねっ!」
アリスが同意してくれる。
「そうだね」
ギュスターヴも同意してくれてるけど、なんかその笑顔は、気を使っている感じがうっすらする。普段食べているもののレベルが高すぎて、これくらいでは驚かないのかもしれない。さすが、王子である。
「ふ、ふん。まあ、悪くはないな」
プライドの高いエドワードも、そのおいしさは認めざるを得ないようで、言いながら、バクバク食べている。この人は、素直においしいと言えないんだなあと、もうなんかちょっと愛おしさを感じはじめてきた。
みんな、満足そうだ。これだけでも、誘ってよかった。
・・・・・・と、それはよかったけど、問題が一つ。
話す内容が、パンケーキに集中しすぎている。
『甘くておいしいです。特にこのシロップが~』とか
『この生地が、ふわふわとしていて、食べ心地は悪くないわ』だとか
『少し塩をきかせているな。甘さが引き立っている感じだ』とか
『フルーツがとても新鮮だね。いっぱい乗っているから、食べていて飽きないよ』みたいな
そういうことばっかり!
お互いのことを話して、理解を深めるつもりでと開いた『パンケーキを食べようの会』なのに、これだと、パンケーキに対する思いを語る会になってしまう。
これは想定していなかった。
会話が弾んでいるのは、そこはとてもいい。バッドエンドから、遠ざかっている感じするし、みんなも満足しているみたい。
でも、その内容はパンケーキのことばかり。みんながどんな人かより、みんながどんなパンケーキ観(?)を持っているかについて、すごい理解が深まっていく。
なんだこの変な状況は!?
ここで、今日の教訓。
おいしすぎるものを食べると、話の内容が偏る。これは今後、胸に刻んでいきたい。
・・・・・・まあ、これはこれで楽しいから、いっか。
ということで、私の思いも聞いてもらおっと。
気を取り直して、私は、目の前で繰り広げられているパンケーキ談義へと、ふたたび参戦するのであった!




