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イノシシ狩りと少女の決意

ここまで読んでくださってありがとうございます!


少し落ち着いた旅の一日になります。

二人のやり取りなども含めて、気軽に読んでいただければ嬉しいです。

 翌朝、目を覚ますと、すでに火が起きていた。

 ティーナが、先に動いていたらしい。


「あ、お目覚めですか! おはようございます」

 笑顔で挨拶をしてくる彼女に「おはよう!」と返し、僕は起き上がって朝食の準備に取り掛かった。


 僕はラピ⚪︎タパンを取り出した。

 このパン、食べても勝手に補充される。

 ティーナに出会うまでは、これが僕の命綱だった。

 湯を沸かして白湯を飲み、冷えた身体を温めながらパンで腹を満たす。

 ティーナは目を丸くしながら、一心不乱に、はむはむと夢中でかじりついていた。

 ……目が本気だ。


「さて、今日はどうしようか?」

 食後に尋ねると、ティーナは答えた。

「村まではあと二日はかかると思います。ですので、食料を調達しつつ移動して、夜営の場所を探すのが良いかと」


 そう話す彼女を改めて見ると、服がところどころ破れていることに気がついた。

必死にグリーズベアーから逃げ回っていたのだから当然だ。

貫頭衣のような簡素な麻布の服を、腰紐で縛っているだけの出で立ちである。


 バッグの中に裁縫セットがあったので、僕は破れた箇所を繕うために服を貸すよう伝えた。 


「脱げばよろしいのですね」


  ……え?


 ティーナは止める間も与えず、腰紐をほどいて服を脱ぎ始めた。


「いゃ、ちょっ!」


 僕は慌てて毛布を被せたが、彼女はキョトンとしている。

十四歳とは思えない発育の良いプロポーションが視界に飛び込んできて、高校二年生の僕は大いに動揺した。


 服を受け取り、破れを縫い合わせる。

 縫いながら彼女を見ると、あちこちが煤けて汚れていた。


「この世界には、入浴の習慣はあるのかな?」


「お見苦しい姿をお見せして申し訳ありません。入浴の習慣はありますが、今の竜人族は川での水浴びが普通です」


 縫い上がった服を渡し、日が昇って暖かくなったら途中で水浴びをしようと提案する。

すると彼女は嬉しそうに「では、私がお背中を流しますね!」と申し出てきたが、理性が吹き飛ぶので丁重にお断りした。


 川を下りながら進む途中、茂みからイノシシが飛び出してきた。

僕がオーガソードを構えるより早く、ティーナは一言確認を取るとイノシシへ向かって走り出し、その背に跳び乗った。


 左腕で首を抱え込むと、右手を刃物のように首筋へ突き立てる。


 瞬殺だった。


 無手でガチの喧嘩をしたら絶対に敵わないと悟った。


 手慣れた様子でイノシシを解体するティーナ。

 しかし、二百キロを超える獲物を持ち運ぶのは不可能だ。ここで四次元ポーチの出番となる。


「ティーナ、話があるんだ」


 僕は彼女を呼び、アイテムバッグを持っていることを打ち明けた。


「アイテムバッグをお持ちなのですね! 凄いですわ。村にも一個しか無いんですよ」


「血の匂いで魔物が寄ってきても困るから、肉は僕が収納しておくよ」


「はい! よろしくお願いします!」


 ティーナの眩しい笑顔を見て、僕は少しだけ安堵した。


 道中、竜人族の能力について尋ねると、身体能力の向上と強靭な爪、そして成人すれば個人差はあるものの「竜化」が可能になるという。

 さらに魔法も使えるらしい。


「ちなみにご主人様は地球人なので、この世界で魔法は使えません」


 ナビからの無慈悲な宣告により、僕のささやかな夢は潰えた。

 チート能力への期待は捨て、一般の地球人としてこの世界と向き合うことを決意する。


 日が暮れて手頃な夜営地を見つけ、夕食の準備に取り掛かる。今夜のメニューはイノシシ鍋だ。


「リューイ様の作られたものは、本当に美味しいです!」


 ティーナはまたしても一心不乱に食べてくれた。

 嬉しいが、僕が褒められるのは料理と裁縫だけの気がして少し複雑だ。


 お腹も満たされ、夜が更けていく。


「この調子なら、明日の午後には村に着きそうですね。まずは村長にお会いしていただいて……そうだ、リューイ様、住む場所は私の家でいかがですか? 身の回りのお世話も致します!」


 美少女と一つ屋根の下。

 嬉しくないはずがないが…。


 ……いや、違う。

 どう考えても、目当ては料理だ。

 それでも、プライドより欲が勝った僕は、


 「ティーナさえ良ければお願いね!」


 ……即答だった。



[閑話]ティーナ視点


その日、私は森の奥でキノコを摘んでいました

カゴは、もうすぐいっぱいになるはずでした


私たちの村は貧しく、食べ物は自己責任です。

少しでも多く採れれば、狩りに出られない子供や老人にも分けられると思い、カゴがいっぱいになるまで森の恵みを集めていました。


村へ帰ろうとした矢先、突然、茂みが揺れました。

次の瞬間、グーウルフが飛び出してきたのです

踵を返して逃げ出しましたが、気づけば、数が増えていました。


一匹、また一匹と。

いつの間にか群れは八匹に増え、森の奥深くへと追い込まれてしまったのです。


 急に視界が開けたと思ったら、そこには最悪の魔物、グリーズベアー…。


逃げ場は、もうありませんでした。


グーウルフの群れを突っ切って必死に逃げましたが、グリーズベアーは私を標的に定めて追ってきます。


 体力も限界を迎え、もう終わりだと思いました…。


 その時、川の向こうに、誰かが立っていました。

 銀色の髪が、光を反射して揺れていたのを覚えています…。


 彼は少し寂しそうな目をした後、私とグリーズベアーの間に立ちはだかってくれました。村の大人たちでも倒せない魔物を相手に、彼は見たこともない伝説級の剣を振るい、グリーズベアーに立ち向かったのです。


 何が起きたのか、分かりませんでした。

 気づいた時には、グリーズベアーは倒れていました。


 彼、リューイ様は、異世界から来た迷い人でした。私がお世話になった言語学者の迷い人のおじいちゃんは、この世界の言葉を覚えるのに相当な苦労をしていましたが、リューイ様は流暢に言葉を話されました。

 迷い人の手引書をお見せした時、彼はひどく悲しそうな顔をされました。

 その時の顔を、私は忘れられません。

 その深い悲しみを少しでも和らげてあげたいと、私は心から思いました。


 その後、リューイ様は見たこともない方法で野ウサギを調理してくれました。

 お肉は焼くだけだと思っていた私にとって、それは信じられないほど美味しい料理でした。


 夜になり、私が寝ずの番をすると申し出ましたが、彼は「僕も一緒に寝るから大丈夫だよ」と優しく諭してくれました。

 ひどく疲れていた私は、彼が醸し出す安心感に包まれ、朝まで深い眠りに落ちてしまったのです。


 翌日も、助けられてばかりでした。

 ボロボロになった服を繕ってくれ、仕留めたイノシシを希少なアイテムバッグに収納してくれ、夕食にはまた素晴らしいお料理を作ってくれました。


 彼は、竜人族の迫害の歴史も静かに聞いてくれました。

 リューイ様に尻尾を褒められた時、私は胸がひどく高鳴りました。

 竜人族にとって、尻尾を褒めるのは…、特別な意味を持ちます。

 しかし、異世界から来た彼がそんな風習を知るはずもなく、ただの優しさなのだと理解しています。


 明日には村に着きます。

 命を救ってくれ、こんなにも優しく接してくれるリューイ様に、あの方にこの身を捧げようと決めました。

 成人前の小娘ですが、精一杯お世話をしようと思い、私の家に滞在していただくようご提案しました。

 快く受け入れてもらえて、本当に嬉しかったです。


(……お料理が、また食べられるかもと思ったことは、……内緒です)


読んでいただき、ありがとうございます!


こういう日常の積み重ねも書いていて楽しい部分なので、少しでも雰囲気を感じてもらえていたら嬉しいです。


続きも書いていきますので、よければまた読みに来てください!

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