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二つのルートと受け継がれし双剣

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


竜の村を出て、いよいよ旅が本格的に始まります。

今回は少し落ち着いた流れの中で、二人の新しい一歩が描かれます。


ゆっくりと変わっていく関係や成長も、楽しんでいただけたら嬉しいです。

 僕らは村を出て、川沿いを上流へと進んだ。竜の里へと至るには、大きく分けて二つのルートが存在する。


 一つ目は、迷いの森を抜け、魔人族、亜人族、人族、そして迷い人たちの街を経由して大きく「逆Uの字」を描く迂回ルートだ。

なぜそんな遠回りが必要なのかといえば、魔人族の領土と竜の里の間には「ライオネ山脈」という険しい山脈がそびえ立っており、その山頂を起点に大地が真っ二つに割れ、深い渓谷が横たわっているからだ。

 ナビさん曰く、人の女神を失った竜の神が、その深き悲嘆と慟哭のあまり大地を割って生み出したのが、この深い渓谷らしい。

はるか昔、魔人族が竜人族に攻め込む際も、わざわざ亜人族や人族の領地を迂回して進軍したというのだから、その険しさが窺い知れる。


 そしてもう一つが、ライオネ山脈を最短距離で縦に突っ切るルート。

言語学者のおじいさんが手記に記していた道だ。

しかし、屈強な竜人族ですら途中で断念したというほどの過酷な魔境である。


 話し合いの結果、僕らは後者の「最短ルート」を選択した。ティーナを人目に晒したくないという理由もあったが、何よりあのおじいさんに踏破できた道なのだ。


あのおじいさんにできた道だ。

……なのに、俺が怖じ気づくのか?

冗談じゃない。


 ――あとは、おじいさんの「味噌への情熱」と、僕の「お米モドキへの情熱」のどちらが勝るかという勝負である。正直、今の時点では負けている気がしてならない。


 山脈へ踏み込む手前で、最初の野営をおこなった。周囲の警戒はナビさんに丸投げする。


『最近、出番が少ないです』

不満げな声が頭に響く。

『ようやく出番かと思えば、地味な見張り役……いっそ魔物でも呼びましょうか?』

「やめてくれ」


 頭の中でナビさんが物騒な愚痴をこぼしている。確かに竜の村では、村長やティーナ、村の人たちがいたおかげで話し相手に困らず、ナビさんの存在をすっかり放置していた。大いに反省である。



 火を熾し、簡単な夕食を済ませる。昨夜の賑やかな成人の儀とは違い、今は二人きりの静かな時間が流れていた。

 ふと気になって尋ねてみる。


「そういえば、村を出る時に村長から何か受け取っていたね?」


 するとティーナは、腰に提げていた二振りの剣をそっと見せてくれた。


「村長からいただきました。おじいちゃんが残してくれたものだそうです」


 僕の知る限り、ティーナの戦闘スタイルは素手(というか爪)のみだ。

彼女から渡された一振りを鞘から抜いてみると、それは見事な「サーベル」だった。二振りとも一対になっており、刃には鋭い切れ味が宿っている。


刃は、異様なほど美しかった。


ただの武器じゃない。

それは、見ただけで分かる。


『レジェンド級の武具です』

ナビさんの声が、少しだけ誇らしげに響いた。


『鋭い斬れ味に加え、ご主人様のオーガソードと同じ自己修復機能を備えています。魔法伝導率も極めて高いですが、これは後から付与された機能のようですね』


 すかさずナビさんが解説してくれた。竜人族にそんな高度な技術はない。きっと、遺されるティーナを案じたおじいさんが、彼女のために自ら付与したものなのだろう。


僕はそう思いたかった。


 剣の特性を一通りティーナに説明し、僕は優しく語りかけた。


「この剣は、きっとティーナを守ってくれる。だっておじいさんの想いが、この剣の中に宿っているのだから。大切にしないとね」


ティーナは、何も言わなかった。

ただ……

ぎゅっと、サーベルを胸に抱きしめる。

その肩が、小さく震えていた。



「まずは使い方を知らないとね。僕も少しは心得があるから、明日から教えてあげるよ」


 実は、僕には多少の武術の心得がある。僕の祖父はかつて道場を開いていたのだが、時代の流れで道場を畳んだ後、暇を持て余した祖父は孫とのコミュニケーション手段として「刀の振り方を教える」ことを選んだのだ。


 三歳の頃から、祖父には武術を叩き込まれた。しかも、三歳児相手に最初から真剣を使わせるというスパルタぶりだ。

後で理由を聞いたら「その方が覚えが早いからな!」と大笑いしていた。三歳児にポン刀を持たせるなと言いたい。

 だが、幼い頃から基本を叩き込まれていたおかげで、グリーズベアー戦でも自然と身体が動いたのだ。今となっては祖父に感謝しかない。



 翌朝、さっそく剣の稽古が始まった。

 ティーナの出で立ちは、魔物の革の裏地に麻をあしらった、ファーフード付きの白いハーフコート(グリーズベアーの革製なので極めて丈夫だ)。

その下には同素材の革のスリムパンツと、絹製のシャツを身に纏っている。もちろん、すべて僕のお手製である。腰には二対のサーベルと鞘を下げるためのベルトもあつらえた。なかなかに凛々しい姿だ。


 まずは剣に慣れるため、サーベル一本での手合わせから始める。

祖父の教えに従い、互いに真剣で打ち合うのだ。

もちろん技量が全く違うため怪我などさせないが、真剣特有の恐怖は確実に伝わる。


僕は、剣を構えて、向かい合う。

時間だけが過ぎていく…

一陣の風が吹いた。

僕は、おもむろに踏み込む。

そして、銀の刃が、空気を裂く。

ティーナは、それを紙一重で受け流した。


「今日はここまで」


 僕が声をかけると、ティーナは肩で激しく息をしていた。

竜人族の身体能力をもってすれば、同レベルの魔物が相手でも素手なら一日中戦えるはずだ。

しかし、「いつ斬られるかわからない」という真剣の恐怖と極度の緊張感は、想像以上に体力を奪う。

これは格上の敵と戦うための重要な訓練でもある。

 それでも、初めての打ち合いで十数分も持ちこたえたティーナの精神力は、素直に凄いと思う。


「……強くなるよ、ティーナは」


そう呟いてから、僕は笑った。


「さあ、朝食にしよう」


最後までお読みいただき、ありがとうございました!


ついに舞台は村の外へ。

ここからはこれまで以上に過酷な旅が待っています。


少しずつ強くなっていくティーナと、

それを支えるリューイの姿を、引き続き見守っていただけたら嬉しいです!

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