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「おい、待て!」
大崎は声を張り上げ、呼び止めた。空也は人々を押し退け、出口へ突き進む。
「不味いな。剣崎剣究生。私は避難誘導をしなければならない。済まないが、有木空也受剣生を連れ戻して来てくれまいか」
大崎は、空也の背中を厳しい面持ちで見送りながら、剣崎にそう伝えた。剣崎は眉一つ動かさず、空也の背中を一瞥した後、さも不本意そうに、はいと返事を零した。
「あの外部生余計な世話を……覚悟してください」
静かな怒りを瞳に湛えながら呟くと、第壱靈源を発動した。チャクラの回転で、靈氣が全身を流れる。放射された赤い氣光が陽炎のように、揺らめいた。一際大きく揺らめいた次の瞬間、剣崎の姿が掻き消える。残像が目に焼き付くような速さだ。
チャクラによる靈力発生は、安定的かつ靈力ロスも少ない。更に幽体を肉体に浸透させることで、靈氣粘性流体による筋肉強化や硬化能力など様々な氣功能力をも有する。それが赤の剣能、身体強化能力だ。
(頼むぞ。彼では界異に勝てない。勝てない訳があるのだ)
剣崎の背中を見送る大崎に出し抜けに声がかかった。
「どうされました」
「!」
全く気配を感じなかったことに大崎は戦慄する。ばっと距離を取り、攘異刀に手を掛けた。戦闘体勢を取る大崎に悠然と話しかけるのは、先程の神選組八咫烏衆の男だった。
「八咫烏衆──上原殿か」
「ええ、そうです。大崎様」
「何故ここにいるのですか?」
「私は……そうですねえ、強いて言うならスカウトでしょうか」
上原は飄々とした口調で、そう返した。
「スカウト?」
大崎は眉を顰め疑問を表明する。
確かに密偵方である八咫烏衆は、新人のスカウトの役目もある。だが、八咫烏衆は、神選組の隊士の監視だけが役割ではない。その監視の目は界異が人に憑依した禍異物いわゆる異狄にも及ぶ。異狄を名目に、彼らは市井の人々を逮捕する権利を有する、即ち秘密警察の役割も持つのだ。更に暗殺部隊<八岐大蛇>を指揮下に置くという噂もある……大崎が警戒するのも無理はあるまい。
「いや、それには及ばない。彼らのことは私が」
「いいえ、任されてください」
反駁しようとした大崎に上原が笑顔を貼り付ける。やんわりと嗜めるような口調に、大崎は目を見張った。
「だが──」
大崎はなおも言い募ろうとするが、
「ご心配なく、私も神選組の一員です」
上原は一刀に斬り捨てる。柔らかな物腰とは裏腹に、取り付く島もない。何を企んでいる? と大崎は喉元まで迫り上がった疑問を飲み込んだ。
「……そうか、ならお任せしよう。有木空也受剣生を頼みますぞ」
「ええ、承りましたとも。では失礼します」
内心をおくびもださず、上原は相好を崩すと、大崎に背を向け、歩き始めたのだった。




