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(!?)
一瞬、空也の眼の前で光景が大きく歪んだ。試剣場の木壁が一斉に揺れる。かと思えば、窓硝子が割れ、硝子片が飛び散った。
「がはっ!」
気がつけば、空也は床に叩きつけられていた。
「千刃谷地区にて震度伍強の空震発生。界相転移空間に伴う界異の臨界及び重力波警報発令中。各自、一般人を誘導しながら、速やかに退避してください。繰り返します──」
沸き起こる悲鳴とサイレンに紛れて、機械的な音声が、非常時用の合成音で繰り返し流れる。周辺住民に避難勧告を促す放送だ。
空間震度の階級は「震度零」「震度壱」「震度弐」「震度参」「震度肆」「震度伍弱」「震度伍強」「震度陸弱」「震度陸強」「震度漆」の十階級に分かれ、それぞれ二段階ごとにに、「甲」「乙」「丙」「丁」「戊」の界異臨界を伴うとされる。乙種の界異は第壱類は風属性個体、第弐類は火属性個体、第参類は水属性個体、第肆類の土属性個体第伍類の陰属性個体、第陸類の陽属性個体の六つに分かれ、乙種刀伐免許を取得したものだけが討伐出来るのだ。
乙種の襲来の危険に、至るところで動揺とどよめきが巻き起こる。皆、一様に浮足立っていた。
「くっ!」
剣崎は足をよろめかせながら、空震に何とか堪えたようだ。直ぐに体勢を立て直す。三半規管を揺らされたせいか、空也も起き上がろうとしてふらついている。
「静まれ!各自、第一種警戒体制につき、攘異刀の喚装を許可する。速やかに退避せよ!」
審判役の刀伐教士──大崎が大喝した。刀伐免許試剣官を務める七段の教士は、有事の際に現場指揮を執れる権限を持つ。
「試剣は一時中断だ。お前達も避難しろ」
一瞬、周りが静まり返り、直ぐ様、喚装し始めるのを横目に、大崎は剣崎と空也に告げた。
「避難ですか。分かりました」
粛々と剣崎は従う。空也は未だ覚束ない足取りでようやく立ち上がった。
「中断……避難……」
そのまま茫洋とした瞳で呟く。
「有木空也受剣生、大丈夫か?」
大崎は気遣わしげに空也の顔を覗き込んだ。
「!」
不意に空也は目の焦点を合わせると、大きく見開いた。どうやら脳震盪を起こしたのか、一時的に見当識障害に陥っていたらしい。
「界異の臨界だって……」
空也はその意味を噛み砕くと、不意に瞋恚の炎を瞳に燃え滾らせた。拳は固く握りしめられいる。
「俺は……」
「どうした?」
大崎が、眉を潜める。その隙に、空也は一目散に駆け出した。




