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やり直しの人生では我が子を抱きしめたい! ~後悔していた過去を変えていったら片想いしていた人たちと両想いになりそうな気配だけど夫の事が気がかりです~  作者: 猫都299
二章 続編 未完成な運命は仮初の星で出逢う

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94 正体


 背筋が凍る。私たちの目的がワズにあると、彼は知っている。

 ユーラの言葉が脳裏に響く。『ワズには行くなよ』と。




 空が赤みを帯びる頃、到着した広めの場所で休憩する。制服の青年たちが手際よく天幕を張っていく。すぐに夜が訪れ、焚き火を囲んで宴が始まる。


 食事を受け取る。スープとパン。お酒も勧められたけれど、遠慮した。

 大きめの石に座って食べようと、周囲を見回す。やや離れた位置に大きな岩がある。宴を楽しむ人々の輪から外れた、その場所には。ケールディアがいた。岩に座って横を向き、スープを飲んでいる。

 近付いて、隣に座る。


「……ケールディア。今まで、ありがとう。一緒に来てくれて。ずっと、心強かったよ。これから、どうなるか分からないけど……私、一人でも大丈夫。アルゼさんに、ケールディアはワズとは無関係だって説明してみる!」


 これ以上、彼を巻き込んではいけない気がする。私がワズへ行って、しようとしているのは……正しくない事だから。


 少し緊張する程に、真剣に見つめる。

 鼻で笑われた。彼は昏く笑んで口にする。


「お人好し」


 手首を掴まれる。岩陰に引き込まれ、見下ろされる。


「俺と逃げよう」


 提案に息を呑む。戸惑うけど、決意して返事をする。


「分かった」


 ケールディアが瞼を大きく開く。

 私は、続け様に尋ねる。


「何か、理由があるんだよね?」


 どうしたんだろう。相手の表情が僅かに曇る。「心底、呆れた」と言いたそうな目で、溜め息をつかれる。


「エスティ。馬鹿なの? 折角……婚約者を捜して、ここまで来たのに。そいつを捨てて、俺と逃げる? 馬鹿、確定だね」


 ……? 婚約者って。ユーラの事じゃないよね?


 ケールディアは、私がワズに近付きたい為にユーラに会いに行こうとしていたと知っている。ユーラは再会後すぐに、この地を離れた。けれど、アルゼさんがワズに連れて行ってくれる手筈の今。ユーラを捜す目的は達せられたと思う。


 もしかして…………龍君の事を言っている? 私、龍君の話を……ケールディアにしたっけ?


 ケールディアがクスッと笑う。左頬を撫でられる。


「前も言ったけど。大事な決断をするのは、タイミングが重要だと思うんだ。選択を間違えるなよ。俺は、選択を誤った。何度もチャンスはあったのに。俺は、君を……」

 

「いつも、私を優先してくれたよね? 今だって、大切な幼馴染じゃなくて……私と一緒にいる。今度こそ、あなたの番だよ。結婚はできないけど。力になりたい。手伝いたい」


 フフッと笑って伝える。


 一瞬、相手の瞳が潤んだように見えた。言葉に詰まった気配の後、彼は俯いて息を吐き出す。


「もう遅いよ。あんたは星泉を渡る舟の上で、俺のプロポーズを蹴った。一生、後悔すればいい」


 ケールディアが言い終わらない内に悟る。私たちの周囲に複数の人影がある。いつの間にか、囲まれている? リウラの盾の人たちに。


 彼らを代表する如く、アルゼさんが進み出て来る。


 彼は言う。


「知ってるか? 『人間』は、邪悪な存在でもあるらしい。大人しく……ルールを守ると思っていたか?」


 何の話だろう。彼はケールディアと向かい合う位置で足を止める。


「こちらも手に入れたいモノがあるんでね。悪いけど、あんたには譲らねぇよ。ケールディア。ワズに遣わされている『マスター』の一人でもあったな。アバターの名は確か…………岩木雪絵」


 …………っえ?


 イワキユキエ? 今、岩木雪絵って言った?


 ケールディアは強気に笑って、恨み言を口にする。


「フッ……まさか、バラされるとはね。容赦ねーのな」


 彼は認めた。

 心臓がドクンドクンと、大きく脈を打つ。


 雪絵ちゃん? 本当に? 何で黙っていたの? 無闇に明かさないのは常識だけどさ……! 私と一緒に行動していたのも何で? しかも、彼女が『マスター』だったの?

 ええと。雪絵ちゃんだと知っていたって事は、アルゼさんもワズでの知り合いかもしれない? それとも、ワズの運営的な関係者? はたまた……仕事をする上で必要だから、事前に情報を得ていた――?


 必死に考えている間にも、状況は進んでいく。アルゼさんが部下に指示する。


「彼を丁重に、お送りしろ」


 屈強な数人に囲まれて、ケールディアが溜め息をつく。

 促されて歩き出す彼を見つめる。清々しい笑みを向けられる。


「じゃーな。エスティ」


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