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やり直しの人生では我が子を抱きしめたい! ~後悔していた過去を変えていったら片想いしていた人たちと両想いになりそうな気配だけど夫の事が気がかりです~  作者: 猫都299
二章 続編 未完成な運命は仮初の星で出逢う

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93/98

93 目的地


「エスティ、あの……」


 腕輪の石の中に戻っていたニーナが、何か言い掛ける。


「……ごめんね」


 ニーナが伝えたいのは。さっき、アルゼさんたちに捕らわれた時の件だと思う。『助けられなくて、ごめんね』という意味だと受け取る。微笑んで言っておく。

 

「突然の事だったし。ニーナが謝る必要はないよ」


「えっと、あの……、その事じゃなくてね……」


 何だろう。彼の歯切れが悪い。


「ニーナ?」


 尋ねようとした時。咳払いが聞こえる。向かいに座るアルゼさんのものだ。説明を受ける。


「話をしている途中に悪い。そろそろ、今日の目的地へ到着する。その前に少し、岩山と砂地の続く地帯を歩く事になる。それから……今夜は野営をするので、そのつもりでいてくれ」


 程なくして、小さな町の寂れた駅に着いた。屋根のない古めかしいホームへ降りる。アルゼさんを含めた、リウラの盾の制服を着ている二十名程が列をなして歩く。


 キョロキョロと、視線を巡らして見付ける。ケールディアは列の後方にいる。一先ず安心して、前を向く。


 街中を、やや進んだ頃。家々の連なりが途切れる場所に出る。岩と砂の大地が、目前に広がる。

 空に、何かが飛んでいる。その物体が、こちらへ近付いて来る。


 あっ!


「ユーラだ!」


 思わず口にする。


 巨大な空飛ぶ鮫に乗る、幼馴染の表情が……曇っている気がする。

 彼も、こっちを見ている。


 地上まで泳いで来た鮫が、姿を消す。ユーラが着地する。


「戻りました」


 ユーラが、私の側にいるアルゼさんに報告している。二人は数メートル離れた場所まで移動し、何やらヒソヒソと話をしている。ユーラの顔が、更に曇ったように思う。

 

 話が終わったのかもしれない。ユーラが小走りに、こっちへ来る。


「エスティ。大丈夫だった?」


「ユーラ、久しぶり! うん。来てくれて、嬉しかった!」


 再会できた喜びに、頬が緩む。しかし……。ユーラの笑みに、元気のない様子を気取る。


「ユーラ?」


 心配になって尋ねる。僅かに俯いていた彼が、顔を上げる。


「もう行かないと」


 告げられて驚く。


「えっ?」


「別の場所へ……行かないといけなくなった」


「……そっか」


 どうしよう。会えたけど。

 

 彼に、ワズに近付けるよう頼む計画が潰える。

 リウラの盾の皆さんが周囲に、わんさかいる……この状況で。言える訳がない。


「エスティ」


 ユーラが身を屈めてくる。抱きしめられて、ハッとする。


 頬の横で、囁かれる。


「ワズには行くなよ」


「え……」


 呆然と瞠った目に、相手を映す。


 何で私がワズに行こうとしていると、知っているのだろう。

 やはり、思惑がバレている?


「ユ……」


 聞こうとした時。


「そろそろ、話は終わっただろうか」


 アルゼさんに声を掛けられる。ユーラの肩が、一瞬だけ揺れる。

 

 ユーラは眉間に皺を寄せて、目を閉じる。

 次に開かれた際には、苦みの如き雰囲気が薄れ……代わりに、慈しむような眼差しがある。


「じゃあな」


 ユーラは言い置くと踵を返し、砂地の方へ歩いて行く。

 鮫を出現させ背に乗った彼は、振り返らなかった。鮫が大気を泳ぎ始める。

 やがて遠く、見えなくなる。


 再び、列が動き出す。ユーラの去った方向へ、目を向けながら歩いていたので……前方を、よく見ていなかった。誰かにぶつかる。


「わっ! ごめんなさ……」


 ぶつかった相手へ、謝ろうとした。

 

 だが。相手を見て、言葉を失う。

 アルゼさんに、凄く険しい形相で睨まれている。


 やはり……彼に嫌われているようだ。さっきも「怒りの感情を隠しているのでは?」と疑うくらい、瞳の奥底が怖かったのを思い出す。


「エスティに触るな」


 突如。私を背に庇う如く、割り込む人物がいてドキッとする。ケールディアだ。

 

 こちらからは、彼の表情は分からない。だけど多分、アルゼさんを睨んでいるのだろう。

 何故、そう考えるのかと言うと。アルゼさんが氷を連想させる、冷たい目付きでケールディアを見ているから。


 ケールディアが私へ、ボソッと告げてくる。


「気を許すな。上手く隠しているようだが……こいつから、得体の知れない気配を感じる」


 アルゼさんが一瞬、真顔になる。しかし。すぐにニコッと、笑顔が作られる。


「よろめく彼女を支える為とは言え。腕に触れてしまい、申し訳ない」


 謝罪され、逆に申し訳なく思う。


「あっ、いえ……。私の方こそ急にぶつかって、すみませんでした。支えてくださって、ありがとうございます」


「いや、こちらこそ」


「ところで。俺たちを、どこへ連れて行くつもりだ?」


 ケールディアがアルゼさんへ、きつい口調で質問している。


「あそこに、岩山が見えるだろう?」


 アルゼさんが、前方に幾つかある山の一つを指差して言う。

 

「明日の朝一番に、迎えが来る。昼には到着している筈だ。ワズに」


「ワズっ?」


 びっくりして聞き返してしまう。アルゼさんが、微笑みながら教えてくれる。


「ああ。ワズを護る役目を与えられていてね。偶然にも……君たちと目的地が同じなんだ」


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