異世界で気ままに余生を過ごす:ENDING『E』前編
めっちゃ筆が進まないので、とりあえずできた分だけでも……
『会場の皆様、誠にお待たせいたしましたわ!!』
拡声魔法特有のキィンとしたノイズが会場に鳴り響く。遂にこの描写とお別れだと思うと、少しの煩わしさすら愛おしく思う。
『遂に最終試合!!騎馬戦デスマッチの開幕ですわ!!』
騎馬戦デスマッチなんて、PTAが聞けば即刻開催停止を求めるであろう、そんな激ヤバ競技名。
ただ────ここは異世界で、競技者は富も力もある成人済みの人間が4人。
彼ら彼女らが一堂に会して向かい合う理由は1つ。そう、名誉を得るために戦うのだ。
「騎馬戦で当主決定。実に巫山戯た興行だ。」
レンはそう呟いて笑う。
「ですが、騎馬戦はチームワークを試すにうってつけですわ!!」
本当にそうか?レンは訝しんだ。
ただ、ウサは相当乗り気なようで、レンの肩に手を置き、試合の開始を今か今かと待ち侘びていた。
(レン様との初めての共同作業……!!ワクワクしますわ!!)
……そんなことだろうとは思ったが。
「アークレイ様。」
一方、こちらはピリリと張り詰めたような空気が漂っていた。
「分かっていますわ。価値を証明してみせます!」
この戦いに勝つ。その1点のために捧げた24日。
アークレイの覚悟は、こと真剣さにおいてはこの場にいる誰よりも上だった。
「それだけじゃありませんわ。」
ただ、天華は一言。
「────楽しみますわよ。」
「…………。」
真一文字に結ばれていたアークレイの口が綻ぶ。
「当然ですわ!」
さぁ、互いに準備は完了したこのタイミングで、再びアナウンスが鳴り響く。
『──それではルールを説明いたしますわ!!』
『お二人達にはそれぞれ騎手役と馬役に別れて頂き、騎手役は馬役の上に乗った状態で試合を開始いたします。』
『騎手役の方が馬役から離れて地面に着いた時、馬役の方が地面に倒れた時!それが敗北になりますわ!!それ以外にルールはございません!!!』
つまり────騎手が死んだとしても、地面に落ちなければ戦いは続行される。なんなら引き摺ってでも試合を続行できる。
なんて野蛮だろう。『将を射んとせば先ず馬を射よ』という諺があるが、これでは因果関係がまるで逆だ。
(なるほど、シンプルだな。怪我や殺し合いが容認されるなら、『ハチマキを取る』というルールはまどろっこしいのか?)
「練様、頼みますわよ!」
「あぁ、当然だ。」
こんな興行の考察なんて意味がない。意味を得るためには勝つしかない。
レンは考えを振り切る。そのレンを目にし、ウサの目にも闘志が宿る。
「天華様。負けたら許しませんわ。」
「無論、勝ちますわ。」
張り詰めたような空気は、そこにはもうなかった。
目の前には宿敵。それらを超える準備は充分。ならば、恐れることなど何もない。
(私は、天華様となら飛べる。)
敗北、舐めた苦汁、そして最低の下馬評────逆襲だ。
(今までの私という枷を、檻を!!超える!!!)
『では会場の皆様!!最後の試合の開始の合図を!!!』
3!2!1!と観客達がカウントしていき、両者は手馴れた手付きでペアの肩へと飛び乗る。
「……ほう。」
「あっちの組み合わせは予想通りですわね。」
「勝ちますわよ。番狂わせの時間ですわ!!」
そして、試合が始まり────
「行くぞ!!」「はいっ!!」
────最初に仕掛けたのはウサだった。突然の奇襲に驚くアークレイだったが、天華は冷静に現状を整理する。
(……なるほど。いきなりウサ様を投擲しての奇襲戦術ですか。たった1日ですが、やる事はやったらしいですわね。)
「じゃあ、騎手が相手に飛び乗るのはダメですの?」ルールを確認した矢先にウサが放った言葉がこれだった。
(馬か騎手を倒せば勝ち!!速攻で沈めますわ!!)
日本での騎馬戦を知るレンにとっては意外な一手、開幕から勝負を決めるルールギリギリの超速攻技だった。
(それは明天宮も同じハズだ!決めろ!ウサ!!)
砲弾の様に放たれたウサは体を縮め半回転、そのまま蹴りを決めようと────
「『Hop』。」
(日本語……!?いや、英語?!どっちでもいい!!今のは────)
アークレイがその言葉を聞いた瞬間、天華を宙へと放り投げ、自身はまるでその柔軟性を見せつけるかのように大きく開脚する。
「よ、避けられた……っ!!?」
自身は馬と騎手の丁度接合部を狙ったが故────落下のリスクを考え、高めの軌道を描いたが故に、ウサの攻撃は空を切る。
ただ、レンの思考の片隅に、違和が1つだけポツリと残り続ける。
(地球の言葉を、合言葉に……)
ただ、それはあくまで思考の片隅。
「作戦、失敗ですわね。」
「────それはどうでしょう。」
それによって、レンとウサの連携が乱されることはない。
「私達、ただの一発屋ではなくってよ!!」
「────『換装』。」
レンはウサの射出直後、既に『ドラゴレイズ・試作』の装着を完了するだけではなく、『換装』が終わった瞬間に、ドラゴレイズをそのまま投擲したのだ。
「また投擲────ッ!!?」
ただ、それはただの投擲ではない。
敗北の危機を攻勢に────まさに逆転の一手。それがこの投擲だった。
(────私達を通り過ぎた……!?)
それはアークレイと天華の丁度合間を縫って飛んだ。狙いが速攻ではないのか。天華は一瞬だけ困惑するが、その軌道の先を目の当たりにし────目を見開いた。
「ナイスピーッチ!!!」
その先には天華が待ち構えていた。
剣の勢いに乗り、一回転するその瞬間、
大剣の刃が4つに分かれて剥がれ落ち、長剣が姿を現す。
「『ドラゴレイズ・飛翔龍』。」
さらに、その剥がれ落ちた刀身を蹴り、ウサは一気に切り返し、その対面にはレンが超高速で迫る。
挟み撃ちだ。
「1対1の騎馬戦で挟み撃ち────」
レンとウサは、これから優位な状況下でアークレイと天華を攻め立てる訳だが────超速の中で、レンは見た。
「想定内ですわ。」
(その表情────あるのか!!策が!!)
レンには自信があった。地力の高さで、本人の実力で、簡単な策など簡単に上回り勝利できると。
だがそれは、策と呼べるほど複雑ではなかった。
「『Swing』!!」
アークレイが騎手の天華の足首を掴み、全力で振り回したのだ。
ガサツで、野性的で、実に物理的な解決法。しかし、単純故に、『策がある』と踏んでいたレン達に効果は覿面。
「ぐっ!?」「ぅあっ!?」
ただ、その一瞬で与えられるダメージなど────特にとんでもない勢いで振り回されているような状況で、与えられるダメージなどたかが知れている。
「『遠勁・核打』!!!」
ただし、『百花繚乱』を発動している天華に限ってはそうではない。その卓越した動体視力により、正確に最大威力の発勁を当てる事に成功していた。
「くっ……。」
レンは『飛翔龍』のスピードを全開にし、撃ち落とされたウサを回収しつつ歯噛みする。
(倒せるとは思っていなかったが……まさか無傷とは……!!)
「申し訳ありませんレン様……失敗しましたわ。」
「いいや、相手が1枚上手だった。それだけだ。」
他責も自責もしない。ただ、考察する。
(アークレイさんの地力が恐ろしいほど底上げされている。明神宮が馬役を任せるのも頷けるほどに!
ただ────一番の脅威は連携の精度。まるで一体の巨人を相手にしている気分だ……!)
冷や汗をかきつつも、レンは笑っていた。
(……一体どんな特訓を積んだのか!!)
久しく無かった強敵との戦い。それがレンの闘争心を掻き立てる。
「レン様、楽しんで……?」
「……少しだけな!」
いつも読んでくれてありがとうございます!!
二部作になるのか三部作になるのか……それは私次第です。




