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勇者として異世界転移したけど裏切られたので錬金術師やってます!  作者: HKmE
『惑星』

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最後の戦いの前夜:REVERSE『S』

お待たせしました!!ボリュームはその分あるはず!!

「では、改めて天華様の目的をお話し致します。」


再びセバスは空間に白い板のようなものを出現させ、そこに文字を書き込み始める。


「天華様はこれより、『亜空間ドア(インター・フェーズ)』の加速状態の使用期間を9時間46分39秒520まで回復し、その後はアークレイ様との連携訓練に移る予定でございます。」


アークレイは、先に天華が『14時間』と話していた事を思い出していた。


「……なるほど、この空間は時間の前借りと貯蓄ができるのね。先ずは天華様が貯蓄中の合間に私の基礎力を上昇を図る……といったところかしら。」


「その通りでございます。では、天華様からトレーニングメニューを頂きましたので、そちらをこなして頂きます。」


サラリとセバスが口にしたその言葉に、アークレイは自身の耳を疑った。


「……今、私は24倍速で、天華様は24分の1ですわよね?天華様がトレーニングメニューを……?」


「はい。しかしご心配なく。天華様の『百花繚乱ワン・ハンドレッド』により、アークレイ様の行動は常にモニタリングされています。」


アークレイは、先の戦闘でレンの猛攻をその身一つで退けていた事を思い出す。


「やはり……恐ろしい固有能力(ユニーク)ですわね。」


敵にすれば厄介だが、味方にしてこんなに頼もしい存在はいないだろう。


「ささ、24倍とはいえ時間は有限。トレーニングメニューをお伝えします。」


「望むところですわ。」


「では……『魔重剣グラングラニル』のデットリフトを30回。」


セバスが地面に手を翳すと、そこに取っ手が現れ、それを引くと同時に一振の長剣が出現する。

少し禍々しい見た目をしていたが、刃は付いていなかった。剣というよりは打撃武器として扱われているのだろうか。


「ふん、持ち上げるだけを30回?甘く見られたものですわね。先ずは様子見という訳でしょうか。」


アークレイは前傾し、その剣の両端をガッチリと握りしめる。


「では、行きますわよ!!」


胸を張り、一気に全身に力を込める。背中を丸めると腰に大きな負担が掛かってしまうためだ。

持ち上げるそのスタイルは見事。しかし剣は持ち上がらない。

アークレイは首を傾げながら、再び「ふぬぬっ……」と力を込めるが、それでも剣は持ち上がらない。


「ふぅ……おかしいですわね。この剣重すぎですわよ。重さはどのくらいですの?」


「20トンほどでございます。」


「……ははは。は?」


20トン。平均体重およそ60キロの人間からすれば途方もない重量。天華は、単純計算で300人分以上のその重さを、お嬢様の細腕で30回も持ち上げさせるつもりだったのだ。


「持ち上がる訳ないでしょうが???!!!私のこの腕をご覧なさい?!??これがアイアンゴーレムを持ち上げられるとお思いで?!!????」


「素の力では不可能でしょうな。」


一方その頃、ウォンジョ・ウサはマキシマムゴールデンギガントゴーレムMAX(1万7千トン)をぶん投げて迷宮の壁をぶち破っていた。

そんな余談はさておき、


「しかし、アークレイ様が扱えるのは筋力のみではないハズ。」


セバスの言葉は天華の意思。アークレイは少し考えた後、再び剣に手を掛ける。


「……なるほど、そういうことですわね。」


そして、先と同じく全身に力を込める。ただ、変えたのは────


「身体を『魔力強化』しろとォォォォッッッ!!!!」


『トレーニング』という枷に囚われた自分だ。自分にワザワザ枷を付けるほど、この剣は軽くはない。目一杯の魔力を全身に迸らせると、ほんの少しだけ剣が持ち上がる。


(ぜ、全力でこれですの!?)


形振りなど構ってられない。優雅なまま諦めるくらいなら。


「────らああぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」


泥臭く根性で、足りない自力は気力で押し上げる。

短いその時間が、まるで無限にも感じられる。しかし、アークレイはその険しい道を────


「おめでとうございます。では、あと29回です。」


────走り切った。

ガダンッ!!地面に剣がめり込むと同時、アークレイは尻餅を着いて倒れ込み、叫んだ。


「できるかぁっっっ!!!!!!!」


「ふむ、では天華様からのアドバイスを。」


「……ふぅ……?はぁ。」


(アドバイスひとつで変わるものでしょうか。)そう眉間に皺を寄せるアークレイだったが、すぐに息を整えセバスへと向き直る。


「アークレイ様は身体強化を大雑把に行い過ぎでございます。自身の筋肉、骨や健などを意識し、身体強化の方向性や取捨選択を行えばより効率が増します。」


言っている事は何となしに理解できる。しかし、それはこの世界の人間には広く知られていない概念。


「……?見えないものをどうやって取捨選択しろと……?」


生物を魔法で治療できる世界において、医術は発達するだろうか?それは当然否。アークレイの反応が全てを物語っているといって良いだろう。

故に、この世界の医術書などは、ゼロに等しいほど限りなく僅かしか存在しておらず、人体の内側の仕組みはほとんど世に知られていないのだ。


「はい。ですので感覚同期超リアル人体模型を用意しております。」


「感覚同期超リアル人体模型!!???!!」


「実際に触れると自身の同じ部位に感覚が同期され、触りながら筋肉の位置や形を把握することができます。」


とはいえ、天華には異世界の人体の知識は存在しないため、現代医学で明らかになっている範囲に天華の『眼』による補正を加えたものである。

しかしそれは、この異世界においては最高峰の人体模型だった。


「何ですのそれ……ですが、有難く使わせて頂きます。」


そのままアークレイは人体模型をぺたぺたと触り、試行錯誤しながら身体強化の効率化を図り始めた。


(……やはりいいですわねアークレイ様。使えるものはなんでも使う。尽くせる手は全て尽くす。それが貴女の魅力。)


一通り筋肉の部位ごとの強化を試行し切ったアークレイは、再び『魔重剣グラングラニル』へと挑む。


「……行けますわね。これは!!」


先と比べれば魔力の流れは穏やかだ。

しかしその質が、その緻密さが違う。『水を流したホースの先を塞げば水が勢いよく飛び出す。』そんな物理現象よろしく、アークレイの身体強化の出力は以前の数十倍にも達していた。


「……なるほど、先とは一線を画す効率ですわね。田畑に水を巻くために洪水でも起こしていた気分ですわ。」


ぐわんッ。片手で『魔重剣グラングラニル』を持ち上げ、手首のスナップでくるりと回転させ、地面に突き刺す。


「これ、これ以上やる必要ありますの?」


「お見事。では、次のトレーニングメニューを発表致します。」


セバスの対応の早さに少し驚いていたアークレイだったが、(……これも信頼の裏返しですわね。)

そう呟き普段の態度を取り戻す。


「さぁ、効率よくお願いいたしますわ!!」


「『魔重大剣グランドグラニール』を用いたデットリフト30回でございます。」


先と同じように、再び地面から剣が出現し、セバスが手で指し示す。


「……見た目からして体積が3倍くらいありますけど。」


「重量はそれ以上でございますよ。」


「や、やってやりますわよォ!!!」


────6日後。


「────さんじゅっ……。」


目標を達成して気が抜けたのか、アークレイは剣を地面に落とし、地べたにへたり込んだ。


「見事でございます。予定よりも3日早い仕上がりでございます。」


「……マジでクソですわ。なんなんですの?」


寝食以外のほぼ全てをひたすら重量挙げと身体強化の精度向上に注ぎ込んだのだ。少しくらい口汚くなってしまうのも仕方がないだろう。


「次のトレーニングメニューでございますね?」


「そっちはまだ聞いてませんわ!?!!」


「『真・魔重大剣グラドグラングラニール』を用いた────」


「あぁもう!!デットリフトでしょう??!!!やってやりますわよ!!!」


「いえ、素振り100回でございます。」


「ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」


そして、更に8日が経過した頃。


「おや、もう時間ですのね。」


天華は軽く伸びをして眼を閉じる。


「んんっ、流石に35分間ぶっ通しで『眼』を使うのは疲れますわ。」


時間の進みの齟齬により、天華の0.1秒の瞬きはアークレイの動きを57秒見逃す事を意味する。

故に天華は、自身の眼の周囲の筋肉や神経系を重点的に身体強化しつつ、回復魔法を継続的にかけ続ける荒業で35分間アークレイの観察を続けていたのだ。


「アークレイ様も少し休憩してはいかがです?」


「えぇ、丁度()()()()()()ところです。」


ブォンブォンと、黒い物体を振るっていたアークレイが、それを地面に突き刺し、天華に向き直る。


(まさか、『真・魔重大剣グラドグラングラニール』で剣舞ができるほど仕上がるとは。)


再び『眼』を使い、アークレイをじっくりと観察する。


(良いですわ。筋力は充分以上、急な成長を促されたにも関わらず、体幹もブレていない。完璧な仕上がりですわ。)


「何か言いたげですわね。」


言いたいことならいくつもある。それらを口にして月並みにしてしまうよりも、


「いいえ。言うことナシですわ。」


シンプルな一言だけ。その一言でアークレイは満足し、笑みを零す。


(やはり、天才ですわね。特質すべきはその飲み込みの早さ。それに、固有能力が発現しなかっただけで、アークレイ様の血筋は優秀。筋肉量の増加も、その密度も素晴らしい。)


「当然。この私が本気で悔しがって全力で特訓したのですから。

……貴女が、こんな環境を与えてくれたのですから当然ですわ。」


「光栄ですわね。少し照れくさいですわ。」


「「…………。」」


互いに照れくさそうに目を逸らす。ただ、不快ではなかった。その煩わしくも心地良いむず痒さに、全て委ねてしまっても構わないほど。

しかし、2人にはそうしている時間などない。


「じ、時間の無駄ですわ!さぁ、連携訓練をするのでしょう?!善は急げですわ!!」


「えぇ、アークレイ様がその気ならすぐにでも始めますわよ。」


「いいでしょう!一朝一夕では出せない連携を!!ウサ様達に見せつけてやりますわ!!」

いつも読んでくれてありがとうございます!

下のやつは今回割愛したものです。


1

だが、アークレイに少し疑問が残る。


「しかし、眼は追いついてもトレーニングメニューの出力はどうしますの?」


「ワタクシが行う故、問題ございません。ワタクシは従魔であるため、天華様の思考を読み取る能力が標準搭載されていますし、『亜空間ドア(インター・フェーズ)』の時間制限はワタクシに適用されません。」


「なるほど、私が思いつく欠点は全て改善されているようですね。流石天華様といったところでしょうか。」


長くはないけどくどいかなって……。



2

「いいえ。言うことナシですわ。」


「ただ1つあるとすれば、この空間はセバスそのもの。痛覚もありましてよ。」


「そ、そうなんですの?それは申し訳ないことを……」


「天華様のお戯れにございます。私に痛覚はございませんので問題ございません。」


「もうっ!天華様?!」


入れるところがありませんでした。テンポが損なわれる!!

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