異世界で気ままに余生を過ごせるのか?
翌日にでも続きは上がりますので少々お待ちください!!
拡声魔法特有のキィンとしたノイズが会場に鳴り響く。
『再び引き分けでございますわ────ッッッ!!!!!!!!!!』
それと同時に周囲から怒号が上がる。
「ざけんなー!!!」「気合い入れろや!!!」「金返せー!!!」……そんな怒号が鳴り響く中、ウサはよろよろと立ち上がった。
「引き分け……?」
『両者共に場外!!よって引き分けですわ────ッッッッッ!!!!!!』
見れば、足元の闘技場はブラックホールによって粉々に砕かれており、両者共にそこで転がっていた。
「…………よかった。観客の皆様に怪我はないのね。」
そして、ウサは意識を失い仰向けになっているアークレイを抱き上げ、観客たちを一瞥した。
その堂々たる双眸の煌めきが、何も言わずとも罵声をピタリと止ませた。
────まさに、蛇に睨まれた蛙。愚かな観客は理解した。今立っている者は、試合を捨てて勝負に勝った真の勝者であると。
その姿に、スキスの頬に涙が伝う。
「お姉様……!」
しかし、流石は当主代理。その姿を誰に見せることなく、次の瞬間には平静を取り戻していた。
「……覚醒しましたわね。"第六筋"が。」
目を閉じ、穏やかな笑みを浮かべる。思い出すのは、敬愛する姉が理不尽を全て蹴散らして行くその様────
(────理屈や論理を破壊し、現実を歪める。四肢と胴に続いて"脳"で発達する筋肉。故に"第六筋"。)
(……私には、発現しなかった。)そう心の中で続け、
「……やっぱり、お姉様の娘ですね。ウサちゃん。」
そう呟く声は、群衆のどよめきに掻き消された。
「……一体どういうおつもりですか?」
天華がウサにそう問い掛ける。敵意を顕にし、今にも噛みつきそうな勢いでだ。
「彼女の健闘を称えたまでですわ。」
そう傷だらけながらも気高い立ち姿で、ウサはそれを受けて立つ。
「深い意味なんてありませんわ。ただ……そう。レン様なら……」
そう言いかけ、ウサは首を横に振る。
「いいえ、私がそうしたかったのです。」
「アークレイ様の努力は、想いは、あんな瓦礫の中に埋もれていていいものではない。そう思ったらいても立っても居られなくなったのです。」
真摯、真っ直ぐなその瞳を、天華はあまり直視できなかった。
「……そう。」
差し出されたアークレイの身体を受け取り、そう一言呟くのみ。
アークレイが無事受け止められて安心したのか、
「どうか、彼女を労ってください。それをできるのは貴女だけ……」
ウサはそうボヤくように口にし────ガクリと、さっきまでのこと全てが嘘であるかのように、まるで糸の切れた操り人形の如く倒れる。
「あまり虐めてくれるな。だいぶ頑張ってたんだ。」
そんな彼女を背後から抱き留めるのは、カネコレンだった。
天華が口を開くのはレンの前だからだろうか、それとも、ウサが意識を失っていたからだろうか。
「見れば分かりますわ。」
そう言いながら天華は踵を返し、立ち去って行く。
しかし、その途中で立ち止まり、
「その子が起きたら、感謝を伝えておいてください。私はアークレイ様の看護で忙しいでしょうから。」
「伝えておくさ。意外と可愛いところもあるとな。」
背中越しにも伝わる。苦虫を噛み潰したような顔だ。
「意地の悪いお方。」
「なら自分で伝えろ。」
そう軽口を叩きつつも、レンの額には冷や汗が浮かんでいた。
それは、彼女を受け止めた際の違和感によるものだ。
(……全身の筋肉が……いや、骨も砕けているのか……?)
まるで水袋。ぐてんと力なくもたれ掛かるその感触に、人間らしさは感じられない。
(治療はあまり得意ではないが。)
そう歯噛みしつつ、自身の上着を地面に敷き、その上にウサを丁寧に寝かせる。
「『高位治癒魔法』。」
(────先ずは体力の確保。次に体内を傷付けないように中心部から順に回復魔法を…………)
そう思考を回転させていたレンに、声が掛けられる。
「……レン様……?」
(治癒魔法が気付けになったか。)
話す様子に苦しみは感じられない。取り敢えず肺や頭部周りに大きな問題はない。その仕草から容態を読み取り、レンはホッと息を吐く。
だが、安心はできない。
「動くなよ。ウサ、君の身体は今────」
そう前述の通り、ウサの肉体は運動ができる状態ではない。筋肉やらを無理に動かし、悪化や苦痛を抑えようと、レンは静止の言葉を優先したのだが。
「少し、寝ていたのですね。アークレイ様は無事だったのでしょうか。」
しかし、彼女は起き上がった。少し伸びをして、「ふあぁっ」と欠伸をして。まるでなんの怪我もないかのように。
「…………は……?」
いつも読んでくれてありがとうございます!!
暇が生まれたかと思えばスランプに……早く脱したいものですが。




