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6✿夢見る乙女はさぞしらず。




 小さい頃、不思議なことがあった。

毎朝外に出て掃除をしようと玄関を開ければ一輪の花が置いていた。

最初は誰かの悪戯だろうと放っておいたのだけど、毎日置かれては不思議に思うのも無理なくて。誰が置いてくのか気になって一晩中待っていたぐらいだ。そのおかげで犯人が誰なのか分かったのだけど、今思うと自分の行動に笑ってしまう。

 犯人は幼かった。少しやんちゃなのか頬に引っかかれた傷があったけど、身体は小さくて嬉しそうに花を置いていく。そんな姿を見てしまって私は思わず頬を赤らめてしまった。

必死に花を私にばれないように置いてく姿や必死に数少ない花を探す姿に私は少なからず惹いてしまった。だから試しに声を掛けてみたんだ。



 それが彼との出会い

 



「そこでなにをしているの?」

「ぇぅわぁああああ!?」

「いつも私の家に花置いてくの貴方でしょ?」

「…っ…!」




豆鉄砲を食らった顔をする少年に小さく笑えば今度は慌てて否定してくる。でも…後ろで隠している花はバレバレなんだけどね。




「今日もくれるの?」

「ぇあっ…わ、悪いかよ…」

「ううん、嬉しいよ。でもなんで置いていくのかなぁ…って」




毎日置いてくぐらいなら本人に渡せばいいだけのこと…もしかして私に気があるのかしら。可愛いなあ…。

 男の子は顔を真っ赤に染めながらぼそぼそと話しかけてて聞き取れないがきっとそうだ。彼は私に…




「ねぇ、また会えるかな?」

「ぅえっ!?あ…ぁ…分かった」

「約束だよ」




そういって彼と約束して何度も話したんだっけな。いつの間にか遊んじゃう仲までいっちゃって…



「なぁ。お腹へった」

「あっそ。唾でも飲んでなさいな」

「ひでぇ!!!」




軽口までいう仲までいけたんだ。あんなに小さかった姿も大きく成長して、男らしくなった気がする。傷は未だに残ってるしやんちゃっ気もそうだけど。

でもこうやって軽口を叩き合う仲もいいもんで中々抜け出せないのが本音。




「…最近イイコトあったのか?」

「なんで?」

「変な顔してる」

「…分かっちゃう?」

「華麗にスルーしたな」




 そう。最近は嬉しくてたまらない。楽しくていつもわくわくしちゃう。

嫌な修行なのに癒しがいて可愛くて…飴と鞭みたいなものかな?嫌なのが終わった後のご褒美みたいな…そんな感じで。

その子は喋れないから文字を書いて会話をしてるんだけど面白いのよね。困った顔も恥ずかしがる顔も。ずっと閉じ込められているのに髪綺麗だし、肌は白いし…まさしく『女の子』で。少しだけ羨ましいと思ってしまう。




「可愛いなぁ…」

「そんなに好きなのよ…ソイツのこと」

「まぁね。気になる?」

「ま、まぁな…んでもよぉ、気にならねぇか?」

「なにが?」

「だってソイツずっと閉じ込められてるんだろ?…ってことはさ、なんかあるんだろ。」

「んーまぁ。統領に聞いてみたはあるんだけど…神様に選ばれた()だから…とかなんとか言ってあんまり教えてくれないのよね」




 一体彼女はいつまで閉じ込められているのだろう。本人に聴きたいのは山々だけど簡単に話せるような内容でもない。もしあの子を永遠に閉じ込めるってなると可哀想だし…。それに統領の言葉も気になるんだよね。

『神様に選ばれた娘』って少し違和感があるのよね。まぁ祀りは村によって違うからどうとも言えないけど。

 村によって創り上げられた風習。その中でも祀りは盛大なもので、村人たちは感謝の気持ちを込めて神に穀物や装飾品などを捧げていた。それは代表的な祀りで私の村もそれとほとんど変わらない。だからこそ、彼女の村の祀りに興味があった。

『神様に選ばれた娘』を閉じ込めてどんな儀式を行うのか。彼女をどうするのか――分かるかもしれない。




〝沙子〟



もし祀りを行われたら君はどうするの――?




その通りに受け止めるの?なにもかも捨てて…捧げるの?

『神に選ばれた娘』として神に自分の身を捧げて居なくなるのかな。いつもみたいにお話が出来なくなるのかな…。


 積もっていく負の感情に私は頭を抱えた。

それ以上考えたくなくて、見たくなくて、彼女が消えるのを恐れていた。

 彼女ともっとお話がしたい。嫌だ、嫌だ、勝手にいなくなっちゃうのは嫌だ。また笑いあいたいのに…




もういなくなったりして。




「ッ!!」

「おい、沙子?」

「…ううん。なんでもないの。…ちょっと用事を思い出したから帰るね」

「おいっ!!!」




 混乱してふらふらな足取りで彼女のもとへ向かおうとすると彼に引き留められた。

少し暖かい体温と鼓動に顔を上げれば、私は彼に抱きしめられたいた。あまりの行動に目を見開けばまた抱きしめる力が強くなっていて。されるがままになっていた。




「行くな」

「……」




小さく聞こえるのは彼の静止の声。抱きしめる手が優しく私を包み込んでいるのに思考はあの子のことだけで。彼の言葉は砂のようにぽろぽろと零れ落ちていく。

きっと彼は心配しているのだろう。こんな私を…でも、私よりあの子の方を心配しなきゃいけないんだ。檻の中で夜を過ごすのは辛いのに、私は彼に甘えるなんて駄目だ。




「ごめん、私行かなきゃ…」

「…わりぃ」




 彼の腕の中から出ていくと私は一目散に彼女のもとへと走っていく。

着物であまり早く走れないけど、できるだけ早く彼女に会いたくて。この不安を拭いたくて…ごめん。ごめんね。






  君を傷つけてしまった。











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