魔豹と牙狼
護衛であるセレスティアと騎士長レグルス、黒騎士クロムエルは目と気配でそれを追ったが捕らえられなかった。
森の深域の零の家の周辺には、いつも魔豹族か牙狼族が何体か警備している。
「うん、僕がいつもお世話になっている皆さんだよ。こっちは僕の仲間の魔豹族です。」
零が言った。
「そうですか。魔豹族の族長リラ様の留守をあずかるガタンだ。」
ガタンが言った。
族長代理ガダンが何かの気配を感じて目だけで左を見たが、すぐに元に戻した。
騎士達が気配を察して剣に手をやった。
族長代理ガダンが見た方向から牙狼族が飛び込んで来た。
「零様!フェス様!お越しでしたか!」
牙狼族の副族長ザッハを先頭に20体程の獣人と牙狼がやって来た。
「あ、驚かせてすみません。僕の仲間の牙狼族の皆です。」
零が言った。
零は森の深域に行くか行かないかの話になった時、牙狼族副族長のザッハに念話で森の深域に行く事を伝えていた。
「零国王!この様な!突然すぎるではありませんか!」
あまりの事に黒騎士長デュンデが皇帝を庇って前に出て叫んだ。
近衛騎士長レグルスは零の突然の行為に慣れているので、何も言わずスッとアルベール国王の前に出た。
「デュンデさん、すみません。皇帝も国王も心配そうだったので、一緒に来てもらえばいいかと思って。枢機卿にもご覧頂けるし。」
零が苦笑いした。
ゼノフィス皇帝もアルベール国王も呆れた様に少し笑った。
枢機卿ジートスと本部長ダイラルクは実在した魔獣との遭遇に目を丸くして言葉を失っている。
「ほう、強そうな人族がいますな。」
族長代理ガタンが嬉しそうに護衛騎士達を見た。
護衛騎士達は緊張を高めた。
「おっ!また強そうな人族がいますな。我と勝負しろ!」
「いや、俺と戦え!」
牙狼族の獣人達が口々に言った。
「なんか、皆フェス殿に似てるなぁ。」
騎士クノーラが剣を握ったまま言った。
「ん?そうか?」
フェスがあっけらかんと言った。
「皆、僕がお世話になっている人達だから、戦ったらダメだよ。僕の婚約者のシルビア王女とイザベラ王女だよ。」
零が魔豹と牙狼達に言った。
「これは!零様の噂の婚約者ですか。素晴らしい!」
族長代理ガダンが嬉しそうに言った。
「おー!零様の花嫁ですか!これはお美しい!」
「零様の花嫁だー」
「主様の妻だー」
牙狼達は口々に大喜びした。
王女2人は真っ赤な顔になった。
「これが森の深域。森の神話の最強魔獣、牙狼族と魔豹族…」
筆頭秘書官ベリラスが動揺しながら呟いた。
「零様、素敵な所ですわ!」
イザベラ王女が言った。
「ここが零様の家なのですか!」
シルビア王女が言った。
2人とも目を輝かせている。
この時、零のログハウスの横の大木からドライアドのフリナスが現れた。
「あ、皆さん、ドライアドのフリナスさんです。」
零が紹介した。
「人族の王の皆様、私は精霊様の使い、魔物の森のドライアドのフリナスです。ようこそ森の深域にお越しくださいました。」
戸惑いながらアルベール国王、ゼノフィス皇帝、枢機卿ジートスも挨拶した。
「フリナス殿、エルフ国の方にもお会いしたいのだが。もちろん今すぐではなく。」
アルベール国王がチラッと零を見て言った。
「アルベール国王、せっかくのお申し出ですが、恐らくエルフ国の王は人族とお会いにならないかと思います。でも零国王のお申し出ならば承諾すると思います。」
ドライアドのフリナスが少し笑って零を見ながら言った。
アルベール国王とゼノフィス皇帝が零を見た。
「え、僕ですか?なぜです?」
零が聞いた。
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