5.事件解決
「OK、じゃあここまでにしましょう」
ぐいっとレーネが両手を左右に引っ張ると、腕を縛っていた縄がボッと音をたてて瞬時に燃え落ちた。
「なっ!?」
「なんだ今のは!」
それを見て、男達がギョッとする。
炎は縄の燃え滓と共に消えまるで幻であったかのようだが、レーネの腕に縄がないことが幻ではなかったことを証明している。
「ジェニー様、失礼しますわね」
レーネは続いてジェニーの腕にも触れて、こちらはきちんと縄を解いた。そのまま腕を引いて共に立ち上がる。
「なんだお前!」
「さっきまで震えてたのと同じ女かよ!?」
二人が立ち上がったことにより、男達は更に動揺して口々に叫ぶ。
しかしレーネは彼らのように馬鹿丁寧に説明してやるほどお人好しではない。黙ったまま短い距離を駆け寄るとまず目の前の男に雷撃を当てて痺れさせた。
バチン! とハレーションが起きて、男が倒れる。まず一人。
そのまま半回転して、目を丸くしている別の男の首筋にガツンと手刀を入れた。
こちらは雷撃を流してしまうと刺激が強すぎるので、腕力のみでの攻撃だ。
「あ……!」
同じくそれで二人目の男が昏倒する。残りは三人。
「このっ、女ぁ!!」
奇襲が出来たのはそこまでで、我に返った男達が各々武器を掲げて襲い掛かってくる。
ととん、と軽い音を立ててバックステップを踏んだレーネはジェニーのいる元の位置に戻り彼女を引き寄せた。
「ジェニー様、少しだけじっとしててくださいませね」
にっこりとジェニー向かって微笑むと、次の瞬間レーネは腕を横に薙ぎ払った。
すると一閃したレーネの腕から先程と同じようにボボボッと炎が噴き出て、半円を描いて男達に向かって放たれる。
「ぎゃあっ!」
「燃える!!」
男達が怯んだのを見て、レーネはジェニーの腕を引いて扉に向かった。
「ジェニー様、参りましょう!」
扉を開いて外に出ると、なんとそこでガーフが馬でこちらに駆けつけてくるところにちょうど出くわした。
「ガーフ!」
「お嬢様! 聖女様!!」
必死の形相のガーフは、やっぱり必死な番犬に似ていてちょっと可愛い。そんな場合ではないのに、レーネは微笑んでしまった。
「早いわね、ちょうどいいわ。残り三人、片づけなさい!」
馬から飛び降りて駆け寄って来たガーフに、レーネは容赦なく命令する。
レーネの指差した先、遅れてヨロヨロと小屋から出てきた男達を見たガーフは、事態を把握すると剣を抜いて彼らに向かっていった。
実はこれはジェニーの前でいい格好をさせてやろう、というレーネなりのサービスだ。
そうでなければ、開けた場所にでた以上、ジェニーを巻き込む心配もいらないので容赦なく魔術で煮るなり焼くなり吹っ飛ばすなりと簡単だった。
「うおぉぉっ!!」
雄叫びを上げて男達をちぎっては投げ、ちぎっては投げしているガーフを横目に、レーネはジェニーに視線を向ける。
「ジェニー様、説明もせずに申し訳ありませんでした。お怪我などございませんか?」
「え、ええ……あの、レーネさん、あなた一体何者なんです……?」
金色の目を丸くして、全く自体を把握できていないらしいジェニーに向かって、レーネはとびきり美しく微笑んでみせた。
「申し遅れました、私のフルネームはレーネ・クレメンタインと申します」
「ク、クレメンタイン様というと、あの……最年少魔術師団長の!?」
「はい、若輩の身ではありますが拝命しております」
銀の髪に緑の瞳、侯爵家の縁戚で絶世の美女、レーネ・クレメンタイン。十六歳で魔術師団長になり以降絶対的な地位を築いている当代最強の魔術師。
人呼んで、「歩く人災」である。




