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サンタクロースの魔法がとけた日

クリスマスってことでサンタクロースのお話


童話?と聞かれるとちょっとあれですが童話です、はい

 昔はサンタというものを信じていなかった。いつからと聞かれれば物心ついたときからだ。まるっきり信じていた時期というのが記憶にない。つまるところ園児の頃から「サンタはいないのではないか」と疑っていたということになる。

 生憎と我が家はマンションで、密閉性の高い住宅に加えて高さも人が進入するには辛い。もちろん煙突などない。自分の部屋への進入経路は二つで、1メートルほどしかない隣の部屋との間にある吹き抜けから窓を開けるか、リビングもしくは親の寝室から自分の部屋まで家の中を歩いてくる必要がある。サンタがいれば親にバレるというわけだ。

 もちろん、世界中の子どもにプレゼントを配るなんてのも大変な話であると子供ながらに理解していたというのもある。組織ならできるか……?と真面目に検証しても結局親である可能性が一番高いことには変わりなく。


 昔は、というが、じゃあ今に至るまではどうなのかといえばとっくにサンタが親であることを確信していた。

 とはいえ、サンタが親であっても裏切られたとか夢を壊されたと感じることはまるでなかった。むしろ正体不明の人物がプレゼントをくれるよりも親が扮装しているのだと聞く方が安心もできるというものである。そんな親を一目見たいと遅くまで起きていた年もあったが、なかなか親は強敵でリビングに置いてあったよとか、そういう方法が使われることもしばしば。次の年から諦めて寝ることにした。ケーキもごちそうも食べられるし、子供心にクリスマスが楽しかったことはなんら変わりはなかった。


「サンタは何歳まで来てくれるんやろか?」

「うーん。さすがに中学卒業したらこないんちゃう?」


 などと白々しい会話を親としながら。


「あまり高いものにしても勝手に下げられるかもしれへんで」

「まあゲーム一本以内ぐらいの金額におさめとくわ」


 とあくまでサンタを通してクリスマスプレゼントの相談をする。

 そんな自分には弟がいた。弟は特に何も考えずに言われるがままに手紙を書いて寝るだけのクリスマスイブである。

 そんな弟が小学校高学年の時になってようやくというか、なんというか実に残念な質問をした。


「なあ、サンタって親って本当?」


 問い詰める、というにはやや弱く、確認というにも何か変な、そんな質問を台所にいた母親に向かって行った。


「そういう話があってん」


 これを聞いた時に弟は馬鹿だなあと思ったものだ。

 せっかく親が無条件にクリスマス、プレゼントを欲しいものをくれるというのだから黙ってサンタを信じてるということにして毎年もらうほうがお得に決まっているのに。わざわざクリスマスプレゼントをやめさせにいくような発言をするのは何故か。今まで何も言わずに弟にあわせてもらってきた自分はなんだったのか、と。

 そして母親を見る。これにどう答えるのか気になった。認めるのか、それとも誤魔化すのか。

 うちの母親は実にあっさり認めた。


「うん、そうやで?」

「へー、そうなんや」


 弟からすれば本当に聞いてみただけでショックを受けた風でもなんでもなかった。つまりどちらでもどうでもよかったのだろう。なんというか、純粋に信じていてショックを受けられたらそれはそれで困るがこういう反応も可愛げがないな、と自分のことを棚に上げて思う。もともと弟に可愛げなどないから別にいいが。

 母上は話を近くで聞いていたこちらを見てニヤニヤと笑いながらこう言った。


「ちなみにお兄ちゃんはもっとずっと前に気づいてたで。わかってて信じてるフリしててんなー? 何年も」


 バレてた。うわーバレてた。何これ気まずい。なんでバレてたんだろう。弟の手前、問い詰められなかっただけマシとしよう。弟にネタバレした今となっては気づかぬフリをするのも意味がないということか。


「母上……ちなみにいつから気がついてたんで?」

「んー、あんたさー、小学校四年、だったかな? 家で『今日学校で友達がサンタがいるかどうかって話してたわー、あはははは』って笑ってたやん。信じてるにしても疑うにしても聞くやん、普通。笑って誤魔化すってことはわかってたってことやん」


 何やらかしてるんだ、小さい頃の自分。小学校四年に言っても仕方ないけどもう少し気をつけろよと。

 まあつまり母の方が上手だったというわけだ。

 

「と、いうわけでクリスマスはもうサンタからじゃなくって親からだけになりまーす」

「あーあ。お前が聞いちゃうから」

「でもあんたもどっちにしろ中学卒業したらなくなる予定やったやん」


 弟と自分は3歳違いで、小学校5年の弟に対して自分は中2なわけで。あともらえるのは2回だったのがなくなっただけか、と。


 まあサンタを信じていないとか知ってるとか偉そうなことを言ったけれど、今「サンタはいるのか?」という質問がくれば多分こう答えるだろう、「存在してる」と。その時、サンタについて自分の中で定義を述べるならば「クリスマスに子どもたちにプレゼントを配る赤い服の老紳士」ではなく、「クリスマスに親が正体不明を装って子どもたちにプレゼントを渡す習慣イベントもしくは概念」とそうなるのではないかと勝手に思っている。


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