剛力指姫
【世界迷惑劇場】
むかしむかしあるところに。
子どものいない夫婦がいました。
なかなか子どもを授かることができないので、夫婦は魔法使いのところへ行きました。
魔法使いは、
『この不思議なバナーナを植えると何かが起こるらしいYO☆』
と、わりと軽めに言いました。
夫婦は急いで帰りバナナを畑に埋めると、みるみるうちにたくさんの植物が生えてきました。
土の中からひときわ大きな葉が伸びて、その元に房が。
あっという間に色付き、大きな黄色いバナナの一つが動きます。
それはヒトの腕よりも大きくて、夫婦はおっかなビックリ近づきました。
《ミシミシミシミシ、クパァ、ビシィッ!》
バナナの中から、小さな(?)女の子が出て来ていたのです。
自分から顔を出すとは、出たがりさん。
女の子は親指を立てて、いわゆる『サムズアップ』のポーズをしていました。
いい笑顔。
両親は最初に『おやゆび姫』と名付けました。
しかしおやゆび姫は少し考え、名前を変えて欲しいと願います。
頭のいい子だ。
両親は何でもいいよと笑います。
『剛力断罪指導美姫』
と、中二なのか暴走族なのか解らない感じの名前が出てきました。
仕方ないので、頭と真ん中と端を使って『剛力指姫』としました。
彼女は歌が得意で、クルミを素手で割りながら甘く優しく口ずさむと、自然に森の動物たちが集まります。
リスからは木の実、鹿からはブドウ、熊からはハチミツ…… 歌声のために、みんな貢ぎ物を持参していました。
両親もうっとりして、お小遣いを増やしていました。
『愛させてあげましょう~♪ 愛でさせてあげましょう~♪ プレゼントを忘れずに~♪ そうしたら笑いかけてあげられるのだから~♪』
強力な洗脳のようです。
しかし貢がれるおかげで、剛力指姫の家は豊かになっていきました。
ある夜、剛力指姫がクルミの木を削って作ったベッドで眠っていると、大きな醜いヒキガエルが部屋の中に入ってきました。
大ヒキガエルは歌で有名な姫を自分の息子の嫁にしようと思い、眠ったところを襲うつもりでした。
ですが剛力指姫はそんなことを許しません。
クルミのベッドごと連れ去ろうとする大ヒキガエルの舌を掴み、歌います。
『私をもっと豊かな生活に~♪ できないのなら~♪ この場であなたは~♪ 《自主規制》~♪』
「ひいいい、私は金持ちでゲスぅ」
『ならば~♪ それを証明しないかぎり~♪ 《自主規制》~♪ 《自主規制》~♪ 私は眠りながら暮らしたい~♪』
「うひぃ、息子に会ってから決めて欲しいでゲスぅ」
こうして、大ヒキガエルは沼に住んでいる息子のもとへと姫を連れて行くことができました。
そこは蓮の花に飾られた神殿。
大ヒキガエルは宗教団体の幹部でした。
驚く剛力指姫の前に、大きなオタマジャクシが。
ヌラヌラしてて、しかししゃべることすらできません。
その嫁になることを知って、姫は悲しく泣き歌います。
『あんまりだわ~♪ こんな 《自主規制》なんて~♪ いくらなんでも 《自主規制》~♪ いてこましても誰もが認めると思うのよ~♪』
オタマジャクシの嫁になることを不憫に思ったメダカたちが近くに居て、剛力指姫の洗脳歌を聴いてしまいました。
彼らは仲間を集め、鬼蓮の茎を噛み切り、姫を乗せて泳ぎ逃げ出すのでした。
『ありがとう川の友だち~♪ でもあなたたち美味しそう~♪ お腹が減ったら~♪ うふふふふ~♪』
姫に食べられてもいいと考えそうになりつつ、メダカは川辺に野ネズミの家を見つけました。
そこなら、剛力指姫に食べ物を分けてくれるかもしれません。
姫は麦パンをひとつくれるように頼みました。
さらわれ、オタマジャクシと結婚させられそうになったという話を聞いた野ネズミたちは、心の傷を癒してあげたくて姫を楽しませることに必死な毎日を過ごすようになりました。
もちろん野ネズミたちは洗脳されています。
その近所のモグラが姫の噂を聞き付け、歌を聴く前に一目ぼれをしてしまいました。
モグラの視力は弱いのに。
どこかのヒキガエルのように、嫁にしようと考えてしまいました。
そんなある日、姫はケガをして道に倒れているオオワシを助けてあげました。
『元気になったら獲物をちょうだい~♪ 死んでしまうなら剥製よ~♪ 羽を加工してもいいかしら~♪ シャララララ~♪』
姫のシモベとなった野ネズミたちの献身的な世話のおかげでオオワシは元気を取り戻し、やがてまた旅立つ時がきました。
オオワシは野ネズミたちと姫に感謝し、一緒に緑の森へ行こうと誘いました。
森の動物のお肉が大好きだった剛力指姫は喜びましたが、野ネズミたちとの生活が快適すぎて、そちらにはいけないと誘いを断りました。
代わりに、獲物を月に一回くらい運んで欲しいと約束を交わします。
オオワシが旅立ってすぐのこと。
剛力指姫は結婚を申し込まれていました。
あのモグラです。
モグラは大金持ちになっていました。
金銀財宝、三食昼寝付き、優良株。
姫は結婚することになりました。
しかしモグラと結婚したら大好きな日光浴も、小川で足を冷やしながらのスイカも、川原のバーベキューも、海辺のバーベキューも、キャンプ場のバーベキューも、お庭でのバーベキューも、満天の星を見上げることもできません。
オオワシに会うこともできないので、姫は悲しくて泣きました。
『あっちを立てればこっちが立たず~♪ どちらもいいところがあるのよ~♪ どちらも捨てがたいの~♪ 私をもっと甘やかして~♪』
するとそこへオオワシがやってきて、姫に告げました。
「食べ物は足りているかい? ウサギを獲ってきたんだけれど」
剛力指姫は、野ネズミたちにかしずかれていた生活も懐かしく思えていたので、どうか彼らの元へ行きたいと願います。
もちろんオオワシは洗脳済み。
その足に掴まり、一緒に外へと脱出しました。
しばらくして、剛力指姫は南の国へ行こうと言い出しました。
姫はモグラから金銀財宝を貢がれ、野ネズミたちに世話をされ、オオワシにも森の恵みを貢がれてすっかり成長しておりました。
あたたかく平和な南の国。
そんな話を聞いた姫は、そこでの自分を夢想します。
蝶よ花よと育てられた姫は、南の国に到着すると洗礼を受けました。
「なに、あの大きなおなか」
「花を頭の上に乗せてるけど、匂い消し?」
よく見ると、どの人もスリム。
ぽちゃぽちゃの剛力指姫と同じ体型の人はいませんでした。
姫はとても驚き、衝撃を受けました。
実はもう、成人病にかかっているというコトもこの国に来て初めて知りました。
「かなり太りすぎですね。この国は健康医療も充実していますから、一緒に健康な身体を目指して頑張りましょう」
『あぁ~♪ あなたがわたしの王子様~♪』
王子様呼ばわりされたのは年若い内科医でしたが、姫はそこから一途に頑張り、恋心を告白し、結婚までを駆け足にやり遂げました。
その報せを受けた剛力指姫の両親はとても喜びました。
姫は家族は一緒に暮らせる方が幸せだという内科医の言葉に従います。
それからみんなは南の国で、幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
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